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渋谷で坪月商30万円超を連発する『やむなし』。集客の秘訣は“何となくいい店”の追及

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桜丘店は日没後の歩行者数が少ないさくら坂沿いに立地

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立地に合わせてターゲットと内外装デザインをチェンジ

内外装デザインは『やむなし』3店で店ごとに異なる。さくら坂沿いの雑居ビル地階に入居する桜丘店は、ファサードに目立つ看板を設置しないなど、視認性の悪い立地を逆手にとって隠れ家的な店づくりを志向。近隣に大学や専門学校があることから、アーケードテーブルゲームをテーブル代わりに設置するなどサブカルを意識した装飾を施している。

日没後にオーチャードロードは暗がりに包まれるが、松濤店はエントランス付近を明るくして視認性を高めている

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一方、松濤店が位置するのは2023年1月に閉館した「Bunkamura」の脇から伸びるオーチャードロード沿い。近隣にはオフィス街が広がっており、通りは可処分所得が高い住民が多い住宅エリアにつながっているため、松濤店は桜丘店よりもやや年齢層が高い30~50代をメインターゲットにしている。

その店舗造作でユニークなのが、フロアの位置によって照度を変えていることだ。カウンター席、テーブル席、ソファ席など『anywayやむなし』と同じようにさまざまなタイプの客席を用意しているが、エントランス付近を明るくしており、フロアの奥に進むにつれて照度をダウン。間口6.4メートル、奥行き18.5メートルという鰻の寝床のような物件だが、その形状を活用し、照度を変えることでさまざまなシーンに利用できるようにしているのである。

フードの定番メニューは500~800円台を中心価格帯とし、「名物」「看」「鮮」「肴」「焼」「菜」「逸品」「揚」「〆」の9カテゴリー計62品を揃える

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品数を増やして「次にこれを食べたい」と思わせる

『anywayやむなし』のフードメニューは定番62品、月替り32品の94品をラインアップしている。出野氏が前述したように名物メニューの「トロトロ牛もつ煮込み」(715円)の他、「土佐カツオのわらタタキ」(1,408円)、「豊後地鶏のわらタタキ」(1,408円)など3品を揃えるわらタタキが看板メニュー。鮮魚料理をメインにした「鮮」、つまみメニューを揃えた「菜」など、定番メニューは居酒屋や和食店の売れ筋を下地とした商品を揃えている。

写真手前から時計回りに、「土佐カツオのわらタタキ」(1,408円)、「トロトロ牛もつ煮込み」(715円)、「やむなしポテサラ」(660円)

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出野氏はメニュー構成の狙いを次のように説明する。

「定番メニューはオープン以来ほとんど変わっていません。既存店の『幕末酒場 やんなはれ』の看板メニューだったわらタタキ、温泉玉子を丸ごと盛り付けた『やむなしポテサラ』(660円)、分厚いハムがSNSで大バズりした『お肉屋さんのハムカツ』(880円)など主客級の商品揃い。そのうえでメニュー数を増やすことで、1回の来店では食べきれず、『次にこれも食べたい』と思っていただくことを狙いました」

月替りメニューの中心価格帯は600~900円。月ごとに3〜4割の商品が入れ替わる

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一方、月替りメニューは「おすすめ」約20品、「お酒のあて」約10品で構成。

「月替りメニューは定番7割、遊び3割を意識して組んでいます。11月のおすすめメニューであれば、トレンド食材であるラム肉を用いた『ラム肉の鉄板ガリバタ炒め』(1,298円)やスタッフの実家のレシピを再現した『森家のザクザク蓮根メンチカツ』(880円)などが遊びメニュー。馴染みのある料理は幅広いお客さまに受け入れられる反面、飽きられやすい。こうした料理をミックスすることでメニューの鮮度を保つことができるんです」

11月のおすすめメニューの1品である「ラム肉の鉄板ガリバタ炒め」(1,298円)は出野氏が考案

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。