月商450万円の北千住『ジャギ飯店×蒸気怪人煙管』。店舗統合で経費の大幅削減を実現!
隠れ家酒場に最適な繁華街外れの空中店舗
『ジャギ飯店×蒸気怪人煙管』は、雑居ビル3階の空中店舗。視認性が悪いうえ、周辺には小さい酒場が乱立する、北千住駅西口駅前の「飲み屋横丁」の外れ。細い路地に大きな看板を設置するのは厳しく、店を探し出すのが難しい。加えて、入居するビルは築50年以上でディープな雰囲気。予備知識がなければ、薄暗く狭い階段を上がろうとは思わないはず。しかし元木氏は、この悪立地の物件を内見したときに、「ビビッときた」と言う。
「旧『ジャギ飯店』は東口エリアでそれなりの実績を残したので、次は繁華街の西口エリアで勝負したい気持ちがありました。とはいえ、飲み屋横丁の端に位置するので、人通りはそこまで多くありません。しかし、逆に繁華街の中心部から離れている方が、うちの隠れ家的な雰囲気に合っています。また、お客さんの7割が目的利用の予約客。確かに来店時に電話で『場所はどこですか?』とよく聞かれますけど、迷ってたどり着いたほうが、記憶に残って話のネタにもなり、むしろ良いのかなと思っています」
空中階を選んだのは、土地柄で割と多く出没する酔っ払い対策も兼ねている。利用客の7~8割は、20~30代前半の女性。フリーで入ってきた泥酔客に、落ち着いた雰囲気を壊されたら困る。そこで、分かりづらい立地の空中店舗が効力を発揮。それでも紛れ込んで来る酔っ払いもいるが、店員が入店をお断りする。
脱力系投稿で耳目を集めるSNS戦略
そんな視認性の低い店舗にとって不可欠なのが、SNS集客だ。2号店『蒸気怪人煙管』のオープン前に立ち上げたInstagramのアカウントのフォロワーは、3~4か月で1,000人弱へと急増した。元木氏自身が行うリール動画中心の投稿で、意識しているのは「クセのある感じ」。
「普通の飲食店だったら、どこどこ産の食材とか、調理法とか料理の説明をちゃんと入れて、おいしさをアピールすると思います。うちは料理にあまり触れず、しかも『おいしいかどうかは分からないですよ』という言い回しの路線で行っていますね」
たとえば、新メニュー「丸太の生ハムキュウリ」を紹介した投稿では、『丸太みたいなキュウリがデカ過ぎて食べにくいったらありゃしない。誰だよこんなの作ったの!!おれだよ!!』(原文ママ)と、自虐的なツッコミを入れる。
また、ある日の投稿には、『今日は頑張ってるアピールの掃除動画です!料理の投稿は他の飲食店さんに任せて私は掃除動画です!』と、店内を磨く元木氏の姿が。
「一時期、料理写真を上げなかったときには、『飲食店なのに料理をアップしないのですね』と、フォロワーさんからツッコミが入ったことも(苦笑)。他店がやらないような投稿で、面白そうな店だと思ってくれる層の顧客を取り込みたいですね」
内装も、SNS仕様といえる。「台湾好きの韓国人が、台湾の田舎の廃墟に住んだ」という謎の設定で、元は住居のスケルトン物件をリノベーション。特殊内装が得意な地元施工業者に依頼し、天井に取り付けたダミーの配管、わざと一部を割ってボロくしたタイル壁などで、廃墟感を出した。怪しい光を灯すネオン管、レトロ調の中国語看板も非日常感を演出。だから、どこを撮ってもフォトジェニックに写る。
極めつけは、店名の由来、漫画『北斗の拳』(ジャギは悪役キャラ)の舞台となった「世紀末」をモチーフをとしたモルタル壁。パンチや頭突きをかまし、壁に亀裂が入って崩れそうな臨場感あふれる写真が撮れる。これは、某世界的テーマパークの剣が刺さった壁もつくった敏腕左官を、施工会社から運良く紹介してもらったから実現できた。「金額を言えないぐらい内装費をかけたので、2号店を残して、お金を回収したいという思いもありました」と、元木氏は苦笑いを浮かべる。
さらに、店内のテーブルも“映え”を意識。ガラス天板のディスプレイできるタイプで、麻雀牌をしつらえる。
「料理写真を撮るときに、テーブルが背景として写るじゃないですか。それをお客さんがインスタのストーリーに上げたとき、その先にいる友達が麻雀牌に食いつき、写真のツッコミどころが多くなると思うんです。で、『これ、どこの店?』と気になった友達がいたら次の来店につながる。地道なSNS施策の効果なのか、テレビのトレンド情報番組の『Z世代に人気の居酒屋特集』で紹介されて、プチバズりしました」
