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吉祥寺で連日満席の『呑楽Neko』。3人の同級生がたどり着いた“当たり前の居酒屋”とは?

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写真左から『呑楽Neko』の店長・富田康文氏、シェフ・磯谷美雅子氏、オーナー・野内由太郎氏(写真提供:『呑楽Neko』)

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2023年にオープンした吉祥寺『呑楽Neko(のらねこ)』は、幼なじみの3人で開業した居酒屋だ。異業種から飲食業界に飛び込んだ野内由太郎氏と富田康文氏、そして、料理人としてキャリアを積みながらも独立は考えていなかったという磯谷美雅子氏。それぞれが“愛される店、いい店”をつくるために模索し、オープンから2年。多様な飲食店がひしめく激戦区・吉祥寺において、連日満席の繁盛店に成長している。

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「いつか飲食店をやりたいね」ふわっと思い描いていた夢を実現

吉祥寺駅南口、弁天通りに構える『呑楽Neko』。オーナーの野内氏は、2017年より吉祥寺で「古着屋Boogie」を運営。吉祥寺の街を愛し、飲み歩くことも好きな野内氏は「自分が飲みに行ける店がほしい」と考えていた。

「以前から、(野内氏と)『いつか飲食店をやりたいね、楽しそうだよね』と話していたんです。ただその頃は、飲食業界のことも、吉祥寺が飲食店激戦区だということもわかっていなくて。すごく“ふわっと”していましたね」と富田氏は語る。

そんな富田氏は地元・新潟県の一般企業に勤務していたが、野内氏に「仕事を手伝ってほしい」と誘われたのを機に上京。古着店で働く傍ら、夢を叶えるべく、イタリア料理店でアルバイトをして経験を積んだ。

野内氏が集めたアンティーク雑貨や家具が並ぶ店内(写真提供:『呑楽Neko』)

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一方、軽井沢のホテルで9年間にわたり料理人として働いていた磯谷氏。2人から話を聞いた当初は「絶対にやめた方がいいよ。そんなに甘くないから」と抵抗していたというが、退職を機に立ち上げに加わることに。「私はあんまり冒険や挑戦するタイプではないのですが……。特にやりたいことがあって退職したわけではなかったのと、退職して気持ちが開放的になっていたこともあって、『まぁ、なんとでもなるか』と思えたんだと思います(笑)」と振り返る。

居酒屋でもレストランでも、ビストロでもない、新しいタイプの酒場をつくりたかった

異なるバックグラウンドを持つ3人であり、飲食店を経営するのは初めてのこと。何を決定するにも、一つひとつ話し合いをしながら駒を進めてきた。

コンセプトは“野良猫のように、自由気ままにおいしい料理と酒が楽しめる店”。野内氏から富田氏、磯谷氏には「ありきたりじゃない店にしたい」とオーダーがあり、かなり頭を悩ませたのだとか。

開業資金のほとんどは融資で調達。野内氏が6年間にわたって古着店を営んできた実績から、審査は難なくパスすることができた。その代わり、物件探しには相当苦労を強いられ、吉祥寺~高円寺を中心に探したが、現物件にたどり着くまでに2年近くかかったという。新旧さまざまな店舗が入り乱れる吉祥寺の中でも、界隈は地元で古くから愛される店が多く、ここも以前は30年近く続いた居酒屋があった場所だ。

「小上がりに囲炉裏がある、渋い雰囲気のお店でした。居抜きで借りたんですが、内装工事はほとんど自分たちの手でやったんですよ。床はハンマーで壊して、天井や壁も自分たちでリフォームして……2か月くらいかかったかな」と富田氏が言うと、「床を壊す作業がいちばん大変でしたね」と磯谷氏も言葉を添える。

一面が窓になっており、道行く人からも中の様子が見える。窓の形状がきっちりとした四角形ではなく、丸みを帯びている点も気に入っている(写真提供:『呑楽Neko』)

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“隠れ家風”といえば聞こえはいいが、やや目立ちにくい立地もあり、開業当初は集客に苦戦し、月商150万円程度。偶然、店を訪れた20代インフルエンサーのSNSへの投稿をきっかけに、一気に認知度が上がったという。これを受けてインフルエンサーマーケティングを活用したこともあったというが、「インフルエンサーのフォロワー属性と店のコンセプトが合わなければ、売上にはつながりにくいことを学びました」と富田氏。

「SNSをきっかけに注目をされると一気に若い客層が増えます。それ自体は嬉しいことなんですが、お酒1杯、料理1品で終わってしまうと飲食店としてはやはり厳しくて……。悩ましいところですね」と磯谷氏も言うように、まだまだ模索しているが、開業から2年経った現在は月商300万円、客単価5,000円を安定して売り上げ、平日から予約でいっぱいになる日も少なくない。

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河西みのり

ライター: 河西みのり

フリーランスで活動するライター&インタビュアー。現在はソーシャルメディアや業界紙など多岐に渡り執筆。飲食店取材からレシピ本の編集、お取り寄せカタログのコピーまで“食”にまつわる分野を得意とする。