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ワンオペで坪月商46万円を達成! 外苑前『gnudi』“料理とサービスを両立させる技”とは?

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『gnudi』のオーナー、藤生拓実氏

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2022年7月、外苑前にオープンしたイタリアン『gnudi(ニューディー)』。オーナーの藤生拓実氏が約30品の料理と200種類のワインをワンオペで提供しながら、月商320万円を叩き出し、専門誌をはじめさまざまなメディアで注目を集めている。ワンオペ繁盛店のノウハウや開業に至る経緯を伺った。

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ワンオペで一工夫ある料理を30品提供

バインダーにとじられたメニュー表には、冷前菜8品、温前菜8品、パスタ8品、メイン2品、ドルチェ3品と、イタリアンをベースにした料理がずらりと並ぶ。これらをすべて藤生拓実氏が調理し、サービスも含めてワンオペで切り盛りしている。前菜は400円〜、メイン以外のほとんどの料理は1,000円台までという手頃さも魅力だ。

「当初は20品程度でしたが、一人でどこまでやれるか挑戦しながら30品程度のラインナップまで増やしてきました。自分がもし、当店のようにワインを飲みながら食事も楽しめる店に行くなら、少なくともこれくらいの選択肢は欲しいと思うんです。前菜からメインまで、コースのように楽しんだり、ワインを飲みながら料理をつまんだりと、さまざまな楽しみ方をしていただきたいです」

メニュー表は客席に常備。なるべく最初にまとめて注文してもらうように勧めている

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開業当初からの定番と、旬の食材を使った季節のメニューが半々の割合。特に定番は、切って盛るだけの2工程以内で済む料理が中心だ。また、揚げ物やパスタなど、一定時間放っておいても調理が進む料理を組み込むことで、効率的に複数の作業を同時進行させている。

とはいえ、どの料理も一工夫加えて完成度の高い味わいに仕上げるのが、藤生流だ。例えば「シチリア パレルモ風 カポナータ」(900円)は、風味が繊細な日本の野菜にリ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺肉)の旨味も組み合わせることで、本場で体感したカポナータの味わいを表現。一方、「まるごとヤリイカの白ワイン煮込みとマッシュポテト」(1,800円)は、白ワインにマルサラ酒(シチリアの伝統酒)も加えて奥行きのある味わいに。仕上げにオーブンで蒸し焼きにし、カリカリとした食感と香ばしさをアクセントにしている。

開業前に訪れたイタリアで、最も印象的だったカポナータを再現した「シチリア パレルモ風 カポナータ」

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調理を最優先に、お客とのコミュニケーションも工夫

ワンオペで切り盛りするにあたって、サービス面での工夫も重要だ。『gnudi』では、最初の料理と飲み物はどんなに忙しくてもすぐに出すようにしている。

「この店は仕事が早い、と最初に印象づけることができれば、その後の料理が多少遅れても“忙しそうだから仕方がない”と思っていただけるのではないかと。オープンキッチンの小さな店で、客席から調理の様子がよく見える造りになっている、というのもメリットですね。今は手が離せない、という雰囲気がお客様に伝わりやすいですから」

調理を最優先に考えているが、調理中に声がかかった場合は「2分で行きます」といった一言を必ず返すという。また、ワインの説明は時間を要するため、1杯目を注文するお客の様子から判断し、ビギナーの場合は細かい説明はせず、料理に合うワインを藤生氏がセレクト、愛好家なら複数のワインを丁寧に説明して選んでもらう、というように提供の仕方を変えている。

なお、ワインは自然派を200種類ラインアップ。グラスは1,000〜1,200円が中心で12〜14種類程度を用意している。ワンオペでサービスが行き届かない分、安めの価格設定にしているという。

「ワインの説明がすぐにできない時、ボトルを見ながら待ってもらえるように」と、裏には生産者や産地、ブドウ品種などを書いたマスキングテープを貼っている

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店長を務めた前店を引き継いで独立

藤生氏は吉祥寺や立川のさまざまなジャンルの飲食店で働き、外苑前のトラットリア『2colori(ドゥエ・コローリ)』でイタリアンを本格的に学んだ。2020年に同店が自由が丘へ移転リニューアルするにあたり、同じビルの1階にあった姉妹店のワインバー『+ebi-ro(エビイロ)』の店長となり、ワンオペで運営。もともと料理の大半は『2colori』で調理したものを出していて、厨房機器が最小限であったため、試行錯誤を続けてきた。その後、独立を志してオーナーに相談したところ、『+ebi-ro』の譲渡を提案されたという。

「周囲に相談したところ、資金をかけてゼロから店を始めるよりも軌道にのりやすい、という意見が多く、引き継ぐことにしました。自分で開業する店はスタッフを雇おうと考えていましたが、結果的にワンオペになりましたね」

広さは6.9坪。厨房からテーブル席までが近く、どの席からも調理中の様子が見える

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店名は、イタリア語で裸の意。ラヴィオリの具を生地で包まずに茹でた料理、いわばパスタ生地を脱いだ裸のラヴィオリを「gnudi」と呼ぶイタリアならではのセンスに感銘を受けたことと、「裸一貫で新たな店を始める」という想いが由来になっている。

前店からのイメージを刷新するため、赤や茶色をベースにしていた内装をグリーンに変更。ベンチシートを設置し、カウンターは座席を2席に減らして空いたスペースは立ち飲みできるようにした。メニューも半数は前店からのものを引き継ぎつつ、「gnudiの唐揚げ」(4個800円)、「炙りしめさばと白味噌のムース」(1,500円)など、オリジナリティを発揮したメニューを加えている。

「まるごとヤリイカの白ワイン煮込みとマッシュポテト」は、素揚げしたケールの香ばしさもポイント

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スタッフを増やし、店のクオリティを上げたい

前店から通う常連もいるが、大半は『gnudi』になってからの新規客。3年目となった現在も新しいファンは増え続けており、月商は300〜320万円、坪月商は46万円と経営状況も上々だ。今後の展望を聞くと、「スタッフを一人雇いたい」と藤生氏は語った。

「当初から考えていたことなのですが、いろいろな媒体で“ワンオペの店”として取り上げられるうちに、きっかけを逃してしまって(笑)。一人で店を切り盛りする上で体調を第一に考えているので、定休日は週2日にし、営業日も忙しい時は席が空いていても入店をお断りすることがあります。そろそろスタッフを入れて料理もサービスもクオリティを上げたいですね」

目標は、坪月商50万円以上。開業3周年を機に、さらなるステップアップを目指している。

入口の両脇にそれぞれ2席と3席のテラスがあり、天候が良ければ道路側にも座席を並べる

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『gnudi(ニューディー)』
住所/東京都渋谷区神宮前3-41-2 岡本ビル1F
電話番号/03-6438-9392
営業時間/17:00〜24:00(土曜15:00〜23:00)
定休日/日曜・月曜
席数/15
https://www.instagram.com/gnudi_gaienmae

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難波美枝

ライター: 難波美枝

ライター・エディター。プロ向けのフランス料理専門誌の編集部におよそ10年在籍した後、フリーランスに。料理雑誌やワイン専門誌、Webなどで星つきレストランからビストロ、バルまで、幅広く取材。