パンが主役のビストロ、日本橋兜町『Bistro yen』。ブームを超えた右肩上がりの成功戦略
オープンの賑わいが過ぎたあとにやるべきこと
⾷の複合ショップ「BANK」がオープンした時には、兜町という場所柄や、銀⾏として使われていた場所をリノベーションしたスタイリッシュな空間が多くの人の関心を呼んだ。さらには2020年に人気のパティスリー『ease』を立ち上げた大山さんのプロデュースということもあり、かなりの話題に。当初は行列ができるほど来店客が絶えなかったという。
しかしオープンから3~4か月が過ぎた頃、メディアでの露出も減少し出し、来店数が落ち着き始めた。とはいえ客足が途絶えることはなかったが、「オープンの時から話題性があって、とてもたくさんのお客さまが来ていたので、みんななんだか心配になってしまって」と話す井原さんたちスタッフは、このタイミングでオープン時には忙しさで手をつけられなかったインスタグラムの投稿や来店客へのケアを心がけ、リピーターや良い口コミの獲得に努めた。
コースメニューの設置と定休日の見直しで売上アップ
「お客さまが何を求めて来店し、何に満足してリピーターになってくださるのか」を大山さんはじめ井原さん、スタッフ全員で話し合い、アイデアを出し合った。そこで施策として初めて導入したのが、コースメニューだった。オープン当初はランチもディナーも料理はアラカルトのみで営業していたが、来店客はしっかり食事をする人もいれば、軽めの人もいるため、客単価はなかなか上がらなかった。この課題を解消すべく、2023年夏から、まずランチに4,400円と6,000円の2コースを設置した。これは大山さんの提案だった。
コースメニューのアミューズとして提供されるミニクロワッサンは『Bistro yen』のシグニチャーディッシュ。中には日本橋が発祥の地といわれるべったら漬けとクリームチーズが(画像提供:Bistro yen)
また同時に、週2日取っていた定休日を1日に変更。もちろんスタッフの負担だけが増えることのないように、人材確保もしっかりと行った。その結果、コースメニュー設置後の2023年から2024年にかけての売上は約1.4倍にアップ。続けて2024年秋に、お客からの問い合わせやリクエストの多かったディナータイムにも7,700円のコースを設置。兜町という場所柄、接待などのビジネス利用があり、コースメニューの需要があったのだ。それまでは女性客が大半だったが、平日の夜には徐々に男性ビジネスマンの利用も増えていったという。
「インスタを投稿したり、良い口コミを獲得したからといって、明日から急にお客さんが増えるなんてことは絶対ないですよね。でも3か月後にはきっと結果が出てくると信じて、それなら今これをやろうって、実行してきました」と井原さんは話す。
大山さんのアイデアやスタッフの努力の結果、今では名実ともに予約困難な人気実力店に成長している。今年2025年に入り、売上は月商1,000万円を超え、毎月の売上は前年同月を上回る。
