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坪月商49万円のカジュアル焼鳥。門前仲町『ヒナイスタンド』に学ぶセカンドブランド開発の成功術

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『ヒナイスタンド』のオープンにあたり、客席は座敷をテーブルに変更。また、白い壁紙を黒い壁紙に貼り替えたが、皆越氏は「もともと趣のある焼鳥店だったため、改装は最低限にとどめました」と言う。

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カジュアルダウン化における一番の課題がコスト抑制

『ヒナイスタンド』は『ひない』をカジュアルダウン化したセカンドブランドとして開発された。

いずれも比内地鶏の串焼きが売りだが、『ひない』は客単価6,400円で30~50代の男性会社員がメイン客層。一方、『ヒナイスタンド』では客単価を5,000円に引き下げ、『ひない』の客層に加えて20代後半~30代の女性にまで客層の裾野を拡げることを狙ったが、そこで一番の課題になったのがコストの抑制だった。

メインアイテムの比内地鶏焼鳥は300~380円のプライスレンジで14品を用意。その他に一品料理や締めの料理など約35品を揃える

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『ひない』は焼鳥約20品をラインアップしており、中心価格帯は490~590円。比内地鶏という付加価値の高い食材を用いているため、焼鳥としては高めの単価設定だが、「客層を広げるためにはこれを300円台まで引き下げる必要がありました」と皆越氏は言う。

たとえば、「胸皮」(580円)は『ひない』の売れ筋メニューだが、『ヒナイスタンド』ではそれを「むね皮」として380円という値付けで提供している。『ひない』では1串に胸肉3個を刺しているが、『ヒナイスタンド』では1串2個にサイズダウンして原価を抑制。「皮」や「ぼんじり」も1串サイズをそれぞれ10グラムずつ減らし、「皮」は490円から330円、「ぼんじり」は530円から330円にプライスダウンした。

手前から、売れ筋トップ2の「むね皮」(380円)と「ねぎま」(380円)

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ただし、単純にサイズダウンしたのではない。意識したのがターゲット層である「女性が食べやすいサイズ」(皆越氏)。そのため、「せせり」(350円)や「ハツ」(330円)のようにもともと1本サイズが小さめの串はサイズダウンせずに単純値下げしており、結果として焼鳥のカテゴリ原価率は50%を超えてしまっているという。

「卵黄の法則」で粗利益の高いメニューに注文を誘導

フード原価率を抑えるために投入したのが名物の一品料理だ。

『ヒナイスタンド』の2大名物として投入されたのが「いぶりがっこタルタルのポテトサラダ」(680円)と「比内地鶏の半熟卵キーマ バケット付」(1,180円)。この2品は単品原価率を28%以下に抑えているが、その商品特性の共通点が半熟卵を盛りつけていることである。

「いぶりがっこタルタルのポテトサラダ」(680円)は『ヒナイスタンド 門前仲町店』で初導入されたが、今では「ひない」の名物メニューにもなっている

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「私は『卵黄の法則』と呼んでいますが、卵黄がとろりと流れ出た料理は女性の目を引き、卵黄のコクが料理に加わりますから満足度も上がります。いろいろな商品を試しましたが、商品価値を高める上で『卵黄を魅せる』という王道の手法がやはり強いことを実感しています」(皆越氏)

同じく卵黄を盛りつけた「北海道ポテトのニョッキ~ゴルゴンゾーラのカルボナーラ風」(1,180円)、卵液に鶏スープを合わせた「コラーゲンたっぷりだし巻き玉子」(680円)なども女性客の目を意識した商品。また、店内調理する豆腐を用いた「辛さが選べる地獄豆腐」(680円)や「地鶏出汁の湯豆腐」(780円)など、原価抑制と商品の個性化を両立させたメニューを新たに投入している。

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。