坪月商49万円のカジュアル焼鳥。門前仲町『ヒナイスタンド』に学ぶセカンドブランド開発の成功術
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名物のレモンサワー5種に注文を誘引して、トータル原価率を30%に抑制
一方、アルコールも中心価格帯を『ひない』の680~770円から『ヒナイスタンド』では550~700円に引き下げているが、原価を抑えるためのメニュー施策として挙げられるのがレモンサワーの名物化だ。
『ひない』の定番メニューである「ひないのレモンサワー」(650円)を軸にレモンサワー5品を用意。焼鳥に使用している塩を用いた「ソルティレモンサワー」(650円)、トマトジュースやカルピスで色の変化をつけた「赤のレモンサワー」(650円)や「白のレモンサワー」(650円)など、オリジナル性の高いドリンクをそろえている。
また、トレンド化しつつあるお茶割りは6種を550円の一律価格で提供。割材を5種からチョイスできる「お味が選べるヒナスタハイボール」(650円)など、原価を抑えられるサワー類に注文を誘引するメニューを組み立てている。
アルコール売上比率は32%を確保。オープン当初、トータル原価率は40%近くまで上がっていたが、メニューミックスの試行錯誤を重ね、現在は30%に着地しているという。
店を想起してもらうためのオリジナルロゴ入りのバウムクーヘン
サービス面でも『ひない』のノウハウが随所に活かされている。
「『お客さまファースト』が当社のサービスにおける大方針。お客さまによってニーズは異なりますから、画一的なサービスにならないようにマニュアルは用意していません。スタッフには『考える接客』を心がけるように指導していますが、そうした意識を根付かせるために大事なのが権限を与えることです。例えば入店をお待たせしてしまったらファーストドリンクをサービスするなど、お客さまのためになるのであれば、アルバイトスタッフの独断で実行していいと伝えています」(皆越氏)
また、『ヒナイスタンド』ではお客の退店時にバウムクーヘンと入浴剤のセットを土産物として手渡すが、これは『ひない』の取り組みを下地としたサービスだ。
『ひない』では店内で炊き上げたおこわを小分けにし、お土産として渡しているが、それだと調理や梱包の手間がかかり過ぎる。それに代わる『ヒナイスタンド』らしい土産物として開発したのが比内地鶏の卵を用いたバウムクーヘンで、店のロゴ入りパッケージに包んだバウムクーヘンを外部業者に仕様書発注している。
「以前は比内地鶏の産地である秋田のいぶりがっこを土産物にしていたこともありますが、それだと『冷蔵庫にしまってそのまま』ということもありえます。このお土産のいいところは翌日のおやつなどとしても食べられること。召し上がっていただく際にパッケージを見て『ヒナイスタンド』を想起してもらえ、店の存在をより強く印象づけることにも役立つんです」(皆越氏)
生産者との信頼関係こそが一番の強み。FC展開も見据える
門前仲町店のメイン客層は20代後半~40代の男女。「いぶりがっこタルタルのポテトサラダ」などがSNSによる情報拡散につながっており、来店客に占める女性比率が65%に達するなど、狙い通りの集客を実現している。
門前仲町店の売上が好調に伸びていることを受けて、2024年10月には亀戸に『ヒナイスタンド』の2号店をオープン。さらに皆越氏は「フランチャイズ(FC)展開にも乗り出したい」と意欲を見せる。
焼鳥は串打ちを済ませた鶏肉が冷凍で納品されており、仕込みの手間が抑えられていることからFC展開に向くと判断したが、これも比内地鶏の生産者と強い信頼関係で結ばれているからできることだという。
皆越氏はFC展開にかける思いを次のように語った。
「比内地鶏の生産量は限られるため、『ヒナイスタンド』のように様々な部位を安定供給できるようにするのは一朝一夕にはできません。『ひない』をオープンしてからおよそ25年。生産者の方と時間をかけて信頼関係を築いてきたからこそ、串焼きのポーションチェンジに対応していただけたわけですが、FC展開でも比内地鶏の魅力をともに伝えてくれるパートナーと手を組み、一緒に事業を発展させていきたいですね」
『ヒナイスタンド 門前仲町店』
住所/東京都江東区富岡1-24-5 新海ビル1F
電話番号/03-6807-0299
営業時間/17:00〜23:30(土曜・祝日15:00〜23:30、日曜15:00〜22:30)
定休日/なし
坪数・席数/13坪・27席
https://www.instagram.com/hinaistand/
