地方からの情熱が東京で響き合う!fun functionの「ご当地酒場」で人が育つ仕組みとは?
産地研修旅行から個性を引き出す育成方針
「食材のストーリーをお客さまに伝えることができるのが、うちの強み」と北海道八雲町統括店長の霜鳥拓也さんは接客の秘訣を語る。
「うちは“人らしさ”を大事にしたいんです。例えば、モバイルオーダーのようなデジタルなものはfun functionらしくありません。接客で直接『今日のおすすめはこれ!』と伝えたいし、食材のストーリーを話したいですから」
そうした食材や生産者への愛情を育む教育に欠かせないのが、産地研修旅行である。
「2日間のツアーで牧場や農家をめぐり、食材の背景を学びます。例えば元山牧場さんの乳牛を見て、その牛乳で作ったアイスを食べたり、ネギやアスパラを生産している佐々木農園さんでお話を聞いたり。その経験があるからこそ『元山さんのアイス、めっちゃ美味しいですよ!』と心からの気持ちで接客できるんですよ」
いわば産地研修旅行は、代表である合掌社長の八雲町での感動を追体験できる仕組みだ。食材への想いが強まるほどに、より美味しい料理を作ろう、より分かりやすく魅力を伝えようと意識も高まるもの。アンテナショップ型居酒屋という業態そのものが、スタッフの成長にも結びつく訳である。
「うちの場合、ガチガチに固めたマニュアルは必要ありません。もちろん調味料の分量や盛り付けは決まっていますが、接客に関しては自由度が大切。生産者さんの話をどうやってお客さまに伝えるかは、スタッフの個性に任せます。同じ出し巻き卵を提供するにしても、若手スタッフの感覚とベテランの意見ではニュアンスが全然違いますから。それを統一せず、個々のキャラを活かす感じですね」
スタッフの教育に正解はない。十人十色の性格に合わせて成長を促すには、マニュアルではなく「育てる側の意識」が大切だと霜鳥さんは続ける。
「既存店がお客さまで溢れたら、近場に新店を出すのがうちの出店のパターンです。しかし、新店を任せることができるスタッフが育っていなければ、たとえ良い物件があっても見送ることにしています。単に店舗数を増やしたところで、頼れる仲間がいなければその店は結局うまくいかない。新たな出店計画がある場合はそこから逆算して、スタッフの育成をより強化していかなければいけません。調理技術はもちろん、接客や経営もどのように皆でレベルアップするか。そうした考え方を育てる側が意識することで、新人の成長を応援する環境を整えています」
「働きやすさ」の追求により会社全体も成長
以前からスタッフの拡充を続けてきたが、コロナ禍を契機に人材の大切さを再認識。現在では、社員の拡充により余裕のある人員配置が徹底され「月10日の休みだけでなく、国の定める5日の有給も100%消化できますし、申請すればそれ以外の日に休むこともできますよ」と、より働きやすい環境が整ったという。こうした取り組みも実を結び、現在の定着率は非常に高い。「僕が日本橋別館と浜松町店の統括店長になってから、この3年間で退職者は3人だけ。病気や家庭の事情が主で、労働環境による離職はほぼゼロ」という。
ご当地の食材をより広く浸透させるためには、店舗拡大が不可欠であり、そのためには仲間の成長が欠かせない。思いを共にする仲間が増えれば、より働きやすい環境も整う。細かく整備された仕組みではなく、“人らしさ”を意識した相互作用が、会社全体を成長させている訳だ。
