大井町の立ち飲み店『スタンド ロティ』。人間味のある店づくりで地元民の“交流の場”に
【注目記事】開業3か月で坪月商40万! 奥渋谷『CHOWCHOW』姉妹店『ヘンダーソン』の「丁寧な手仕事」
「自分の生活の中にこういう店があったらいいな」を実現した立ち飲み店
ドリンクも料理もリーズナブルなことから、客層の幅は広く、女性一人での来店も多い。お客との距離も近いため、困りごとを相談したり、時には知らないことをお客に教えてもらうこともあると洪さんはいう。
「女性が一人でフラッと飲みに来てくれる雰囲気を作りたかったし、普通なら話す機会のなさそうな離れた年代の方同士が話しているのを見ると嬉しくなりますね。お客さまの年齢層も幅が広くて、大学生から年金で飲みに来てくださる80歳くらいの方までいて。その方はお客さまの間で『年金さん』というニックネームで呼ばれています(笑)。『もうそろそろ支給日じゃない?』なんてよく会話しているんですよ」と笑う洪さんの表情からは、楽しそうな店内の様子が伝わってくる。
「立ち飲みのいいところは、人との距離が近くて“人間味”のあるところ。さらに自分の好きな使い方ができることだと思います。いろいろなお客さまがいて、雨宿りに1杯だけ飲んでいく人や飲み足りないからと2軒目に寄ってくれる人、家族と喧嘩したから来たという人もいたり。自分の生活の中にこういう店があったらいいな、と思ってもらえる存在でありたいですね」
日々の努力の積み重ねとコミュニケーションが、従業員の定着率向上につながる
実は洪さんは今年6月に第一子の男の子を出産したばかりだ。この日もまだ約1か月半の赤ちゃんと一緒にインタビューに応じてくれた。産休が明けた8月から、赤ちゃんを預かってもらえるスケジュールでお店に出ているが、すでに赤ちゃんは常連客にとてもかわいがられているそうだ。
「飲食店の仕事をしながら子供を産んで、復帰するという前例が周りになかったので、どうやったら実現できるのかを考えて、いろいろ悩みました。オーナーだからできるのではなく、社員がそれを実現できるということが大事だと思っています。私はお店に立つことが好きでこの仕事を始めたので、自分が前例となって、両方できる方法を模索していくしかない。正直、お店の経営を重視して、子供を産みたいという気持ちに蓋をしていた時期もありました。でも、赤ちゃんも産んで育てて、お店も育てていくことに決めました」と洪さんは続けた。
また、洪さんはスタッフに「子供を産みたいか」「(男女問わず)育休を取りたいか」「海外旅行に行きたいか」「将来どういう働き方をしたいか」といった“ライフプラン”について話をする機会を積極的に設けている。長期休暇が取りにくいといわれる飲食業界で、自分のやりたいことや長期的なライフプランを諦めてしまうことも、逆にそのために飲食業界から離れてしまうことも、とても残念だという。
「飲食業界に従事しているからといって、お店に立つことも自分のライフプランを実現することも、両方諦めてほしくないんです。諦めずにできる方法を考えたら、きっと何かある」そう思い、試行錯誤しながら、従業員が長く働ける環境づくりに努力を重ねている。その結果としてつい先日には、出産を終えて育児休暇中だった社員がお店に復帰することが決まったばかりだ。
「お客さまに『このお店に来るようになってから人生が楽しくなった』と言ってもらったことがとても嬉しかった」と話す洪さん。「まだまだ発展途上」だという彼女の“人間味ある”店づくりにこれからも注目していきたい。
『stand LOTI (スタンド ロティ)』
住所/東京都品川区東大井5-5-8 2F・3F
電話番号/ 080-9828-7123
営業時間/17:00~00:00
定休日/不定休
坪数・席数/2F約7坪、カウンター立ち飲み+3F10席
https://www.instagram.com/loti_oimachi/
