吉祥寺『爛漫東京』地域リスペクトで月商700万円! 愛される店づくりの全貌【連載:居酒屋の輪】
2歳から釣り、4歳で包丁! 海とカルチャーを愛する店主のルーツ
そんな小宮さんの故郷は静岡県の西伊豆。家業は漁師と農家の兼業、さらには温泉ペンション『たーこいずぶるー』も経営する。
「海まで徒歩20秒の環境で育ち、2歳から釣りを始めました。自分で釣った魚をさばきたくて料理に目覚め、4歳の誕生日には祖母に出刃包丁をプレゼントしてもらって。6歳からは海に潜ってサザエやタコを獲ってましたね」
18歳で上京し、立川の焼鳥居酒屋『我楽多家』に就職。家業の手伝いで培った料理や接客のスキルを発揮し、19歳で『原始焼 まる秀』の料理長に抜擢されるなど、若くして才能を開花させた。
2016年、22歳の若さで独立開業。創業店であるカウンター11席の吉祥寺『美酒佳肴 NAMISUKE』は月商270万円に達成したが「ほぼワンオペのお店だったため、このまま一生続けることは難しいと思ったんですよ」と振り返る。
2022年に店を売却。8か月の充電期間で日本各地の生産者を訪ね歩き、大道具の仕事にも挑戦。こうした経験が店づくりのスキルを、より独自性の高いものへと磨き上げた。
多彩なカルチャーが交わる居酒屋づくりが真骨頂
一方で16歳からDJとして活動しているほか、フィッシング、スキューバダイビング、サーフィン、スケートボードなど幅広いカルチャーに親しんできたのも小宮さんの強み。
「子供のころ、友達とドッジボールして夕日を眺めつつ家路についた経験も、僕にとってはストリートカルチャー。伊豆の漁場や民宿で働く生き様もそう。個々のセンスが交錯することがストリートカルチャーの本質だと思うんです」
そうした小宮さんの哲学は店の客層にも表れている。スケートボードを抱えた20代、音楽好きの30代、社会で活躍する40代以上の会社員、0歳の子どもを連れたファミリーまで、非常に幅広い層が『爛漫東京』に集う。
「月間来客数は約2,200人。職種も性格もバラバラだけど、絶対にどこか共通点があって。それをつなぎ合わせることを意識しています。狙い通りに盛り上がった瞬間が最高ですよ」
異業種の一人客同士がカウンターで意気投合し、ビジネスに発展するといった場面も小宮さんの腕の見せ所。「記事ではハプニングバーって紹介してよ」と冗談めかして笑う小宮さんの人柄が、世代を超えた交流の場を盛り上げる。
幼少期から磨いた目利きと技術で、鮮度抜群の料理を
食材の品質も『爛漫東京』の大きな魅力だ。「贔屓にしている豊洲の鮮魚店に後輩をスパイとして送り込みました(笑)。これが良い魚を安く仕入れる秘訣です」と、再び冗談交じりに語る小宮さん。
豊洲直送の鮮魚だけでなく、漁師と農家を兼業している実家からの食材、田植えを手伝っているという宮城県の農家からお米、南伊豆の奥地で仙人のように暮らす猟師からシビエも届く。
「釣り仲間が50キロぐらいのマグロを抱えて来ることもあります。その場で解体して、サプライズでお客さんに振る舞ったり。親父が送ってくれる野菜も高品質です。もちろんお金を取られるんすけどね(笑)。生産者は顔見知りばかりだから、食材を大切に美味しくしようっていう気持ちは、やっぱり大きいですよ」
