10月より「扶養の壁」が年収150万円に拡大へ。学生アルバイトが、飲食店の人手不足を救うか?
2025年10月から、19歳以上23歳未満で扶養されている人を対象に、いわゆる「年収の壁」が緩和される。これにより、収入上限を気にして「働き控え」をしていた学生アルバイトなどが、これまでよりも多く働けるようになるだろう。今回は、この制度変更の概要と、飲食店経営者にとってのメリットなどを解説する。
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これまでの「103万円の壁」「130万円の壁」と何が変わるのか
これまで、扶養の範囲内で働く学生などにとって「103万円の壁」と「130万円の壁」が大きな基準となっていた。年収が103万円を超えると本人に所得税が発生し、親などの扶養者が受けられる扶養控除が受けられなくなるため、親の税負担が増える一因となっていた。また、130万円を超えると社会保険の扶養から外れてしまい、アルバイト自身が社会保険料を納める必要があった。
それが2025年10月以降、19歳以上23歳未満の被扶養者に関する要件が、以下のように変わる。この措置は年齢要件に当てはまれば、学生かどうかは問われない 。
■税金の壁(所得税)
これまで扶養控除の対象外となっていた「年収123万円超」のケースに対応するため、「特定親族特別控除」が新たに創設された。これにより、親は子の年収が150万円になるまで、これまでと同額の控除(63万円)を受け続けられる。
■社会保険の壁
社会保険の扶養内でいられる年収の上限が、130万円から150万円に引き上げられる。
この変更により、19歳以上23歳未満の学生アルバイトであれば、これまでよりも働く時間を増やしやすくなり、飲食店にとっては人手不足の緩和につながる可能性がある。
飲食店経営者にとってのメリット
扶養控除や社会保険に関する上限が150万円に緩和されることで、飲食店にはどのようなメリットがあるのだろうか。
1. 人手不足の緩和
これまで扶養の範囲内で働く学生などは、年収上限を気にしてシフトを調整する必要があった。「もう1日だけ」「あと2時間だけ」といった急な依頼が難しいケースも少なくなかっただろう。しかし、年収の上限が150万円に緩和されることで、一人ひとりがより多くの時間働けるようになり、人手不足の緩和につながるかもしれない。
2. 採用・教育コストの削減
既存スタッフがこれまでよりも長く働けるようになれば、新たな人材の採用を抑えられる可能性がある。採用にはコストや手間がかかるうえ、採用後も教育に時間がかかる。しかし、既存のスタッフに長く働いてもらえれば、こうした採用・教育コストを抑えることにもつながるだろう。
飲食店が今から準備すべきこと
こうしたメリットを活かすには、飲食店側も事前の準備が欠かせない。まず、制度変更を知らないアルバイトスタッフもいると思われるため、店側から積極的に情報を提供したい。そのうえで、シフト希望についても改めて確認し、新しい体制を組む準備を進めておこう。また、求人情報に「年収150万円まで扶養内で勤務可能」といった文言を盛り込めれば、他店との差別化も図れるだろう。
「年収の壁」の緩和は、働く学生などにとっては収入を増やすチャンスであり、飲食店にとっても人手不足を改善する好機といえそうだ。この機を逃さないよう、早めに準備を進めておきたい。
※参考資料
・日本年金機構ホームページ「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります」
・国税庁「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」(PDF資料)
・国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」(PDF資料)
