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年収1,000万円プレーヤーを輩出する『活惚れ』。飲食業界の常識を覆す人材戦略

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株式会社TMD代表の松永大輝氏

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2018年に渋谷で創業して以来、瞬く間に人気店の仲間入りを果たした『活惚れ(かっぽれ)』グループ。居酒屋という業態ながら客単価は約9,000円、会員制の店舗では25,000円を超えることも珍しくない。その高い付加価値を支えているのが、料理やサービスの質はもちろん、そこで働く「人」にほかならない。

「飲食業界は給料が安く、労働時間が長い」という旧来のイメージを払拭し、スタッフが高いモチベーションを維持しながら成長できる環境をいかにして構築しているのか。株式会社TMD代表の松永大輝氏に、その人材採用術と育成論について聞いた。

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50坪の高級居酒屋『赤坂 港かっぽれ』は大きなオープンカウンターが特徴で、料理人も接客を行う(写真提供:株式会社TMD)

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利益を人材に投資し、初任給38万円~。高待遇を実現するビジネスモデル

渋谷『活惚れ』を皮切りに、代官山『オ山ノ活惚レ(おやまのかっぽれ)』、代官山と元麻布に2軒の会員制居酒屋を展開し、2024年12月には5店舗目となる『赤坂 港かっぽれ』もオープンしたTMD。そんな同社の成長を語る上で欠かせないのが、思い切った人材への投資だ。初任給は未経験者でも38万円から、経験者であれば50万円からのスタートも可能だという。さらに、ボーナスは年3回、夏には9連休、冬には7連休といった長期休暇も整備されている。

「かつての和食の世界では、丁稚奉公のような修業が当たり前でした。私自身も若いころは月給10万円台、休みは月4日という環境で働いていました。しかし、もうそんな時代ではありません。時代に合わせて我々の世代が業界を変えていかなければ、優秀な人材は集まらず、業界全体が衰退してしまうという危機感がありました」と松永氏は吐露する。

この高水準な待遇を可能にしているのが、確固たるビジネスモデルの存在だ。

「大箱の店舗は、リスクがあるという見方もありますが、当然ながらうまくいけば利益の幅も大きくなります。そこで得た利益を、スタッフの給与や労働環境の改善に充てる。そうすることでスタッフの満足度が上がり、サービスの質が向上し、さらなる売上につながる。この好循環を生み出すことが重要だと考えています」

単に高いだけでなく、価格以上の価値を提供することにも徹底してこだわる。「客単価3~5万円の寿司店が提供するサービスを、我々は2万円で提供するからこそ価値が生まれる」と松永氏は語る。

料理の味は当然のこと、器や盛り付け、トイレの清潔さ、おしぼりの交換や食後のお茶出しといった細やかな気配りまで、サービスの細部にまで神経を行き届かせている。この高い付加価値こそが、高単価と高収益を両立させ、人材への投資を支える源泉となっているのだ。

名物のお造り盛り合わせ。『赤坂 港かっぽれ』は「好きなものを好きなだけ」というコンセプトで、少量多皿のオーダーが多い

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年間400万円の求人広告は投資。通年で募集を続け、優秀な人材を取りこぼさない

優秀な人材を確保するため、採用活動にも惜しみなく投資する。採用チャネルは「求人飲食店ドットコム」一極集中で、年間約400万円を投じて通年で求人掲載を続けているという。

「以前はオープニングのタイミングなど、スポットで求人を出していましたが、店舗を拡大していく中で、人材採用は常に続けるべき『必要経費』だと考えるようになりました。いつ良い人材が現れても取りこぼさないよう、常に網を張っておくことが大切です。いくつかの媒体を試しましたが、我々が求める層に出会えるのは『求人飲食店ドットコム』でした」

この採用戦略は、特に『赤坂 港かっぽれ』のオープン時に大きな効果を発揮した。1日に13~15人のスタッフが必要となる大箱店舗の立ち上げに際し、この採用手法で5~6人の有望な人材を獲得できたことが、その後の成功の大きな要因となった。

採用で重視するのは、経験よりも「人間性」だ。面接での受け答えや立ち居振る舞いから、共に働きたいと思えるかどうかを丁寧に見極める。

「少しでも違和感を覚えたら、採用は見送るようにしています。人手不足だからといって妥協して採用しても、結局はミスマッチにつながることが多かった。お互いにとって不幸な結果を生まないためにも、相性は大切にしています」

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Web LEON』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。