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坪月商40万円を誇る串焼きビストロ『中野トング』。駅から徒歩10分でも高い集客力を誇る理由

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『中野トング』代表・竹嶋太郎氏

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2023年11月のオープンから3年目を迎えた串焼きビストロ『中野トング』。中野駅から徒歩10分という立地ながら平均月商600万円、坪月商40万円以上を維持する人気店だ。なぜこの不利な立地で安定した集客と売上を実現できるのか。代表の竹嶋太郎氏に話を聞いた。

開店当初は20代女性が9割。現在は30〜40代の大人世代に支持される店へ

竹嶋氏は、数々の繁盛店を輩出してきた株式会社ベイシックスの出身で、駅から遠い店舗も成功させた実績を持つ。立地条件の悪さは初めから気にしていなかったというが、それでもオープンから2〜3か月間は客足が伸びず、苦労したという。

「初めのうちは、“SNS映え”を意識したメニューで注目を集めていました」と竹嶋氏。ナイフを入れるとチーズがあふれ出す「ピスタチオブラータのカプレーゼ」や、フレッシュなフルーツをふんだんに使った「フルーツスパークリング」など、動画や写真に収めたくなるような盛り付け、演出に力を入れた。

その効果もあり、20代の女性を中心に、遠方から訪れる客も多かったという。残念ながらそのほとんどはリピーターにはつながらなかったが、「それでよかったんです。まずはとにかく認知度を上げることが最優先でした」と当時を振り返る。

やがてSNSをきっかけに来店客が増えるにつれて、平日でも活気のある様子を目にした近隣の人々に、「気になる存在」として認知されるようになった。順調にリピーターも増え、現在は30〜40代の女性を中心に、幅広い層に支持されているという。

キッチンを囲むように設えたカウンターのほか、テーブル席も用意(画像提供:中野トング)

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竹嶋氏が開店当初から目指しているのは、「誰かに伝えたくなる店」だ。

「初めて行ったお店が気に入ったら、『いいお店を知っているんだけど』と身近な人に教えたくなることってありますよね。それがあまり知られていない場所、穴場のお店だったりすると尚更です。だからあえて、駅から離れたこの場所を選びました」

実際に、知人と一緒に初めて訪れたお客さんは、多くの人でにぎわう様子を見て「こんな場所で、こんなに人が入っているなんて!」と驚くことが多いそう。そうして惹きつけたあとは、「あとは間違いのない料理やサービスを提供するだけ。でも、自分たちがやっているのはごく“当たり前”のことなんです」と語る。

料理のおいしさや盛り付けの楽しさはもちろん、来店時の挨拶にはじまり、滞在中のコミュニケーションやさりげない気配り……。一見些細なことに思えるこれらの対応が、居心地のよさと信頼感を生む大きな要素になっている。

「例えば、何回か来てくださっている方がご友人といらっしゃったときに、『いつもありがとうございます!』と声をかけられたら、お客さまはちょっと気分が上がると思うんです。僕たちがスタッフによく話すのは、“店のファン”を作ろうということ。特定のスタッフに依存せず、いつ行ってもおいしく、誰が対応しても楽しい店でありたいと思っています」

豚バラ肉でいろいろな野菜を巻いた「野菜巻き串」は全12種(画像提供:中野トング)

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現在の客単価は4,000〜5,000円、平均月商は600万円強。予期せず700万円以上を売り上げた月もあったが、正直、そのときはスタッフが疲弊して余裕を失ってしまったという。「お会計をして『ありがとうございました』と送り出すタイミングまで、お客さまを認識できないほどでした。これでは意味がないなと思ったんです」と竹嶋氏は当時を振り返る。

自身もベイシックス時代に月商1,000万円を超える店舗で働いた経験がある。だからこそ、この3年間で「自分たちはこの売上でも十分に幸せにやっていける」と感じるようになったと話す。

「決して妥協しているわけではありません。僕たちが“当たり前”だと思うことをしっかりやり続けること。お客さまに喜んでいただいて、帰るときに『また来たいな』と思っていただけるようにすること。その積み重ねが店を育てていくことだと思っています」

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河西みのり

ライター: 河西みのり

フリーランスで活動するライター&インタビュアー。現在はソーシャルメディアや業界紙など多岐に渡り執筆。飲食店取材からレシピ本の編集、お取り寄せカタログのコピーまで“食”にまつわる分野を得意とする。