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令和7年版「過労死白書」に見る外食産業の働き方実態。変形労働時間制導入など対策も解説

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2025年10月28日、過労死等防止対策推進法に基づく年次報告書「令和7年版 過労死等防止対策白書」(以下、白書)が公表された。過労死や長時間労働などの実態が指摘される業種として、外食産業も調査研究が進められている。同白書では改めて課題が浮き彫りになった形といえるだろう。今回は、外食産業の労働実態と、変形労働時間制などの対策について見ていく。

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長時間労働の傾向が強いのは、店長やSVなど責任ある職種

白書において、外食産業の労働実態が示された。外食産業は、自動車運転従事者、教職員、IT産業、医療、建設業などとともに、過労死や長時間労働の指摘がある業種とされている。

例えば、「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」という割合は、自動車運転従事者と外食産業が特に高い水準にある。長時間労働削減の取り組みを強化するなど、その特徴を踏まえた対策が必要といえそうだ。

中でも、1週間当たりの平均労働時間が「60時間以上」となっている割合が特に高いのは、「店長」(29.0%)や「エリアマネージャー・スーパーバイザー等」(24.0%)という結果だ。責任のある職種において、長時間労働の傾向が見られる。また業態別では、「パブレストラン/居酒屋・バー」(18.7%)と「ディナーレストラン/専門飲食店」(18.2%)など、夜の時間帯を中心に営業している業態で長時間労働の割合が高まっている(参考1※PDF)

外食産業でのパワハラ・セクハラ・カスハラの実態

長時間労働だけでなく、外食産業でのパワハラ(パワーハラスメント)・セクハラ(セクシュアルハラスメント)などの職場内ハラスメントやカスハラ(カスタマーハラスメント)の実態も浮かび上がっている。

白書によれば、外食産業の職種別では、「エリアマネージャー・スーパーバイザー等」が身体的攻撃・精神的な攻撃や人間関係からの切り離しなど、パワハラ・セクハラのあらゆる項目において最も割合が高い。次いで「店舗従業員(調理)」もセクハラ以外で高い傾向にあるようだ。

また、外食産業の特性としては、お客からのクレームや迷惑行為などのカスハラが多い点が挙げられる。カスハラの種類としては、「継続的な執拗な言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等)」(53.8%)、「威圧的な言動(大声で攻める、反社会的なものとのつながりをほのめかす)」(48.4%)が特に多く見られた。これらのカスハラを経験したことがあると回答した人は、外食産業全体では18.8%であるのに対し、最も多い「エリアマネージャー・スーパーバイザー等」では30.0%となっている。

こういった傾向も影響してか、職種別うつ傾向・不安の調査でも、「重度のうつ・不安障害の疑い」及び「うつ・不安障害の疑い」を合わせた割合は、「エリアマネージャー・スーパーバイザー等」が39.0%となっているのが現状だ(参考1※PDF)

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変形労働時間制の導入などで長時間労働の対策を

このような外食産業の課題に対しては、変形労働時間制を導入するなどの対策が考えられる。変形労働時間制とは、繁忙期と閑散期の労働時間を調整し、全体的な労働時間の短縮を図る制度のこと。1週間単位、1か月単位、1年単位での変形労働時間制があるが、いずれも1週間当たりの労働時間を平均40時間以内になるよう調整する働き方だ。

繁忙期は労働時間を長くし、閑散期は短くすることで、従業員の労働時間を調整できる。例えば、曜日によって忙しさが異なる店舗では1週間単位、月末が忙しくなる店舗では1か月単位といった運用が考えられるだろう。なお、変形労働時間制を導入するにあたっては、労使協定を締結したうえで労働基準監督署に届け出なければならない。

外食産業は人手不足が深刻になっており、従業員に負荷がかかりがちな状況といえそうだ。従業員にできるだけ長く健康的に働いてもらうためには、変形労働時間制などを導入して、働きやすい環境を整える必要があるだろう。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com