坪月商60万円! 北千住『一歩一歩』が示す、脱・居酒屋ドミナントと「特別な場所」の作り方
「青果店×飲食」のシナジー。小売で知った“10円の重み”
現在、一歩一歩の強みとなっているのが、2020年から始めた青果事業だ。この事業の始まりは、ビジネス的な戦略というよりも、大谷氏の義理人情によるものだった。
「きっかけはコロナ禍でした。懇意にしていた取引先の魚屋さんが経営難に陥ってしまったんです。お金だけ渡すのは失礼だし、何かできないかと考え、彼らが売り先に困っていた魚を買い取り、うちの居酒屋の店頭で販売し始めたのが始まりでした」
その後、同様に行き場を失った地元の野菜も販売するようになった。さらに、大谷氏の実家が八百屋であった縁もあり、本格的に『まるいち青果』としての展開が始まった。この成り行きで始まった小売事業が、今や飲食事業と強力なシナジーを生んでいる。
最大のメリットは、野菜や果物の仕入れコストが下がることだ。『焼鳥2-61』のコースに含まれる「2-61サラダ」や「お野菜浅漬け」には、青果店ならではの新鮮で質の高い野菜がふんだんに使われている。
「小売をやることで、10円、20円の利益の重みを肌で感じるようになりました。これが社全体のコスト意識を変え、結果として飲食店の原価管理にも良い影響を与えています」
坪月商60万円の寿司業態『にぎりの一歩』、坪月商45万円の『炉ばたカド』など好調
一歩一歩のドミナント戦略は、さらに深化を続けている。直近で成功を収めているのが、あえて立地の悪い場所にオープンした『炉ばたカド』だ。駅から離れた路地裏という不利な条件ながら、月商1,000万円を超える繁盛店へと成長した。その成功の要因は、カウンター席を多く配した独特の空間構成と、炉端焼きと原始焼きの両方を提供するという圧倒的なサービス力にある。これらが強力なフックとなり、多くのリピーターを生み出しているのだ。
グループ全体の収益性も極めて高い。例えば、寿司業態の『にぎりの一歩』は、18坪30席で月商1,000万円に達し、坪月商は約60万円というグループ最高値を記録している。『炉ばたカド』も坪月商約45万円、創業店である『炉ばた焼き 一歩一歩 本店』も18坪30席で月商700万〜800万円の売上を記録している。
「これからは、外観を作り込んだ目立つ店ではなく、アパートや一軒家をリノベーションしたような『隠れ家』的な店を増やしたい。SNS全盛の今、場所が分かりにくくても、探して行くこと自体が価値になる。内装や料理に徹底的にこだわり、色気のある大人の店を作りたいですね」
一歩一歩はもはや、単なる居酒屋企業ではない。飲食と小売、昼と夜、ハレとケ。街のあらゆる食の場面に入り込み、北千住という街そのものの価値を底上げしようとしている。
「誰かがやらなければ、街の飲食店は今以上にならない。だから自分たちが先にやるんです」
取材の最後に大谷氏が語った言葉には、一経営者という枠を超えた、街づくりのリーダーとしての覚悟が滲んでいた。新店『焼鳥2-61』は、そんな同社の「街のインフラ化」に向けた、新たな、そして確かな一歩なのだ。
『焼鳥2-61(にのろくじゅういち)』
住所/東京都足立区千住2-61 平野ビル1階
電話番号/03-6806-2205
営業時間/17:00~23:00(フードL.O.22:00、ドリンクL.O.22:30)
定休日/不定休 ※年末年始休業あり
坪・席数/16坪・37席(うちテラス席4名テーブル1)
https://www.instagram.com/yakitori2_61/










