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坪月商100万円超。渋谷『立食 型破離』が実践する“高待遇×脱属人化×正社員オンリー”の組織づくり

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「料理はレシピ化・非属人化できても、接客や現場の熱量だけは、一緒に働いて背中を見せないと伝わらない」と正木氏

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なぜ人が辞めたのか? “脱属人化”が招いた想定外の落とし穴

この意欲的に取り組んできた「脱属人化」は、決して順風満帆だったわけではない。思わぬ「離職の連鎖」を招くことになったのだ。これまでの店舗では、正木氏自身が現場に立ち、背中で語るようにチームを牽引してきた。スタッフの定着率も高く、トラブルとは無縁だった。

ところが、『型破離』では「属人化させない」ことを目標に掲げ、正木氏は早々に現場を離れ、店長への権限委譲を進めた。料理の味も、営業数値も問題ない。すべてが計算通りに進んでいるはずだった。しかし、現場の空気は冷えていった。

「スタッフたちが、繁盛店で働く楽しみを感じにくくなってしまったようです。料理を中心にさまざまなオペレーションがシステム化され、受動的な動きばかりに。お客さまの心を『刺す』ような気持ちの乗った接客が失われてしまいました」

結果として、創業から3年半で発生した離職者のほとんどが、この時期の『型破離』に集中した。

代表自らが厨房で指揮を執る。「効率」と「熱量」のハイブリッド経営へ

この事態を重く見た正木氏は、2026年より自ら店舗責任者として『型破離』の厨房に立つことを決意する。経営者自らが鍋を振り、お客に声をかけ、立ち飲みの楽しさを体現する。「効率化」と「人間味」。この二つのバランスを取り戻すための、原点回帰の戦いが始まった。

システムを否定するのではない。システムはあくまで「武器」であり、それを使う「人」の心が輝いていなくては意味がないことに気づいたのだ。 正木氏が再び現場に立つことで、店にはかつての活気が戻ってきた。数値化されたレシピによる「安定した味」と、人間味あふれる「熱い接客」。この二つが融合したとき、『型破離』は単なるシステム化された店舗ではなく、働く人にとっても、お客にとっても、より魅力的な場所へと進化した。

5.5坪の店内は、最大25名ほどの客で賑わう。「立ち飲みは、お客さまとの距離感が命。その楽しさをスタッフに肌で感じさせたい」と正木氏は語る

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。