坪月商100万円超。渋谷『立食 型破離』が実践する“高待遇×脱属人化×正社員オンリー”の組織づくり
求人応募が47名殺到。ミスマッチを防ぐ「お客さま体験」というフィルター
組織の立て直しと並行して、正木氏は新たな人材獲得にも動き出した。2025年11月、同社は初めて求人媒体として「求人飲食店ドットコム」を導入する。これまでSNSや知人の紹介のみで採用を行ってきた同社にとって、これは大きな転換だった。掲載を開始すると、反応は劇的だった 。
「掲載から2か月ほどで、正社員への応募だけで47名もありました。ここまでの反応があるとは正直驚きましたね」
しかし、単に応募数を集めるだけでは意味がない。過去の離職の反省から、正木氏は採用フローに独自の「フィルター」を設けた。それは、「面接前に必ず、お客さまとして店を利用してもらうこと」だ 。
「応募が来たら、まず『うちの店に来たことはありますか?』と聞きます。『ない』という方には、『立ち飲みという特殊な業態ですので、まずは一度お客さまとして実際にお店を体験してみてください』と伝えて、面接はその後に設定します」
立ち飲みという業態は、体力勝負の側面もあれば、お客との距離感の近さに戸惑う人もいる。文章や写真だけでは伝わらない「現場の空気」を肌で感じてもらうことで、入社後のミスマッチを未然に防ぐ狙いだ。さらに、面接では「とりあえず人を確保したいから」と良いことばかりを言うのはやめた。
その上で1か月の試用期間を設け、お互いにマッチするかどうかを見極める期間とする。特筆すべきは、この試用期間中も給与の変動はない点だ 。
「試用期間だからといって給与を下げると、働く側のモチベーションが上がりません。最初からプロとして期待しているからこそ、待遇には差をつけない。それが僕の考えです」
「きれいごと」を排除し、ありのままの姿を伝えた結果、中華料理の経験者を中心に質の高い人材が集まり、「求人飲食店ドットコム」への掲載からわずか2か月間で2名の採用に成功。2026年2月入社の内定者も控えているという。
「仕組み」で人を縛らず、「仕組み」で人を育てる
現在、正木氏の元には大手デベロッパーからの出店オファーが舞い込んでいる。来年に向けて新店舗の計画も進行中だが、正木氏のスタンスはあくまで慎重であり、かつ大胆だ。
「アンテナショップのような店をつくる気はありません。自分たちの動線でしっかり売上が作れるか。そこはシビアに判断しています」
今後の展開においても、「脱属人化」は欠かせないキーワードとなる。しかし、一度つまずいたからこそ見えてきた、真の「脱属人化」の形がある。それは、システムで人を縛ることではない。
「飲食業界で働く誰もが、最初から一流の料理人を目指しているわけではありません。まずは仕組みの中で『自分が作った料理がおいしいと言われる』喜びを知ってもらう。そこから料理を好きになり、自発的に学びたくなる。そんな成長のサイクルをつくりたいですね」
『型破離』のように確立された仕組みで成功体験を積める業態と、職人技を追求できる『起率礼』のような業態。その両方の選択肢を会社として用意し、スタッフの志向性に合わせて配置する「人ありき」の組織づくりを進めているという。
システムと情熱。効率と人間味。相反するように見える要素を、高い次元で融合させる正木氏の挑戦。渋谷の片隅で始まったその「型破り」な実験は、労働集約型の限界に苦しむ飲食業界にとって、一つの希望の光となるかもしれない。
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『立食 型破離(かたやぶり)』
住所/東京都渋谷区道玄坂1-15-7 アネックスサクマ201
電話番号/03-4400-8973
営業時間/16:00〜23:00
定休日/不定休
坪数/5.5坪









