飲食店ドットコムのサービス

恵比寿『粋』、月商1,300万円の理由。35歳オーナーが導き出した「単価6,000円」の空白地帯

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

『粋 恵比寿店』を運営する株式会社タイムエースの代表取締役・楊 元奕氏

画像を見る

都心や神奈川を拠点に17店舗を展開し、2025年に年商10億円を計上した株式会社タイムエース。昨年だけで7店舗を立ち上げるという怒涛の出店攻勢を仕掛ける同社を率いるのは、35歳の若き中国人オーナー、楊 元奕(ヤン エンイ)氏だ。

多店舗展開の成功を牽引する基盤ブランドが、現在5店舗を展開するネオ和風居酒屋『粋』である。2023年4月にオープンした初号店『粋 恵比寿店』は、空中階(2階)というハンデをものともせず、月2,200人を集客。月商1,300万円、坪月商43万円(30坪)という驚異的な数字を叩き出す繁盛店へと成長した。

激戦区・恵比寿で、彼らはどのようにして確固たる地位を築いたのか。楊氏と、同社飲食部統括の小池健太郎氏に、業態開発の裏側と店舗展開の施策を聞いた。

>>飲食店“専門”の求人サイトだから即戦力が見つかる。社員とアルバイトまとめて19,800円で掲載可!

競合リサーチで見つけた「客単価6,000円」の隙と、地道なランチ営業

『粋 恵比寿店』は、「和牛と酒肴のネオ居酒屋」をコンセプトに掲げる。京都の本格懐石料理店で腕を磨いた小池氏の技術をベースに、伝統的な日本料理の要素を取り入れたワンランク上の居酒屋だ。

コンセプトに「和牛」を据えたのには明確な理由がある。自社で運営してきたイタリアン『肉バルアモーレ』で強みとしていた和牛のノウハウを、ミドルアッパー向けの和風居酒屋に横展開したのだ。流行を取り入れつつ考案した名物「黒毛和牛炙りいくらこぼれ 三貫」をはじめ、肉寿司やユッケなどをフック商材に仕立て上げた。

見た目・味も文句なしの「黒毛和牛炙りいくらこぼれ 三貫」(1,980円)(写真提供:株式会社タイムエース)

画像を見る

出店にあたり、恵比寿のマーケットを徹底的にリサーチした楊氏は「似たような和食業態の客単価は8,000~1万円が主流でした。私たちが狙う『6,000円』というミドルな価格帯はぽっかり空いていたんです」と語る。接待向けでもなく、安居酒屋でもない、大人が普段使いできる“ちょうどいい空白地帯”を突いたことで、激戦区への初出店でも勝算はあったという。

とはいえ、食への感度が高い恵比寿で即座に認知を獲得するのは容易ではない。そこで彼らが打った手は、利益度外視の低価格ランチ営業を1年半続けるという泥臭い戦術だった。

まずは昼の営業で地域のビジネスパーソンに味と空間を知ってもらい、徐々に夜の集客・口コミへとつなげたのだ。並行してグルメサイトを活用したWEB広告戦略も緻密に行い、現在の「予約客が8~9割」という盤石な集客基盤を築き上げた。

恵比寿駅西口から徒歩3分のビル2階で営業。予約客が8~9割を占める

画像を見る

懐石の技×ネオ酒場の遊び心。高単価商材を身近にするメニュー戦略

集客力も大事だが、店の“中身”が肝要だ。楊氏は「ヒットの要因は一つではなく、総合力です」ときっぱり。同社はメニュー・空間・接客においてその街のマーケットを的確に捉え、顧客に“ちょうどいい塩梅”を訴求することを得意とする。

『粋 恵比寿店』のフードメニューはコースを含め約70種。価格帯は600円~2,000円前後が中心と幅広く、ターゲット層30~50代の顧客に選択肢を与えるイメージで構成。同店のウリ、和牛メニューは高単価・高原価率商品の部類に入るが、それでも550円の「黒毛和牛サーロイン肉寿司1貫(2貫~)」から提供するなど、見せ方で付加価値を上げることで、お客の心理的ハードルを下げている。これが可能なのは、複数業態で和牛を扱う同社の大量仕入れによる恩恵だ。

和牛の創作系も含めたベースの和食は、小池氏が持ち込んだ懐石料理のエッセンスも光る。「特選 A5黒毛和牛サーロイン朴葉焼き」や「生麩と茄子の揚げだし」(880円)がその代表格だ。そのほか、「季節のおばんざい」(3種980円~)などの品のある小料理も見逃せない。

写真中央がステーキに朴葉を組み合わせた「特選 A5黒毛和牛サーロイン朴葉焼き」(4,250円)(写真提供:株式会社タイムエース)

画像を見る

かと思えば、ネオ酒場らしいポップで映える創作料理も、全体の2~3割の品数がそろう。例えば「いくらのせカニクリームコロッケ」(770円)、「W・TKG(こだわり卵と北海道産いくら丼)」(1,200円)などは、トレンドも押さえながら開発した。

つまみ系の一部は、社内独立した系列店のカジュアル大衆酒場『大人気(おとなげ)』(渋谷)が監修。同店でも人気の「あさり出汁おでん」、「自家製ポテトサラダ」(550円)など10種類ほどを置き、アップセルに寄与する。ただし、『粋』の客単価に合わせ、両店同じメニューでも増量するといった微調整を施すなど、細部への目配りを欠かさない。

大根にとろろ昆布をのせる「あさり出汁おでん7点盛り」(1,650円)(写真提供:株式会社タイムエース)

画像を見る

ほかにも、和牛と双璧を成す売れ筋の刺身、「豊洲直送鮮魚 三種(2人前~)」(825円)や、福岡の郷土料理「ごまかんぱち」(1,320円)などの鮮魚系も用意。酒飲みから食通まで各々のニーズに応えられるよう、全方位的に商品が網羅された印象を受ける。

Pocket
follow us in feedly
飲食店ドットコム通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
飲食店ドットコム ジャーナルの新着記事をお知らせします(毎週3回配信)
小林智明

ライター: 小林智明

埼玉県出身。情報誌の編集プロダクションを経て、2006年にライターとして独立。食、旅、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり取材・執筆活動を展開中。グルメ取材はラーメン店を中心に計500軒を突破。好きなお酒は辛口純米酒。