坪月商53万円の中野『炭火焼酒場ワラテル』。地域×業態を見極める“必勝のデータ分析”とは?
株式会社LTVは、居酒屋業態を軸に創業5年で12店舗(FC8店舗)を展開し、グループ年商7億円を誇る飲食企業。得意とするのは「勝てるエリアで勝てる業態をつくる」出店戦略だ。月商1,000万円の初号店『炭火焼鳥ゆう 武蔵境本店』をはじめ、経堂『博多おでんと黒毛和牛の店 くろこ』、門前仲町『煮込み処和田屋』、西荻窪『和牛とお出汁』など、都内の住宅エリアを主戦場とし、競合と被らない絶妙なポジショニングにより勝ち筋を描いてきた。
ただし、2025年12月オープンの最新店『炭火焼酒場ワラテル』の出店エリアは、中野。激戦区でのデビューも初月を月商800万円で飾り、現在は900万円・坪月商53万円(17坪)に売上を伸ばす。準都心においても「物件選定は一貫している」と語る同社代表・酒巻雄平氏(36)に、「勝てる地域×勝てる業態」の見極め方を聞いた。
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AI商圏分析と「ランチェスター戦略」を掛け合わせた物件選定
酒巻氏が物件選定の際に重要視しているのが、商圏調査。ビッグデータをリサーチ会社から入手し、目星を付けた不動産と照らし合わせてマーケティングを行う。最寄り駅の乗降者数、人口に対する居酒屋数、地域住民の平均所得といった必要なデータを抽出し、エリアの特性をあぶり出す。それを自社のナレッジ(知見・情報)と掛け合わせて分析し、対象地域でのポジショニングを探る。
その際に用いるロジックは、弱者が強者に勝つための経営理論、ランチェスター戦略だ。強者(競合)がいる地域を避けて出店し、マーケットインの視点でその地域に足りてない業態を持ち込めば、おのずと負けないというスモールビジネスの基本である。例えば、2号店『炭火焼鳥ゆう 成城学園前店』の場合、富裕層が多いエリアにも関わらず若者向けの業態しかなかったため、大人向けの業態を立ち上げて必然的に売れた。
さらに、近年はAIを活用し物件選びの精度を高めている。「商圏調査の30~40項目と自社のナレッジをパソコンに打ち込めば、AIが解析し出店判断をサポートしてくれます。一番良いA判定(出店に最適な物件)が出れば、即契約を申し込む」と、酒巻氏はスピード感を重視する。実際に多いのは、検討の余地があるB、C判定が出るケース。その際2、3回の現地調査を経て納得した上で、物件取得を申請するという。
大人向け酒場で客単価5,000円台。AI判定で導く勝利のポジショニング
中野の場合は、物件取得までの順序が逆だった。「中野に空き物件が出た」と不動産情報を得て、現地視察を先に行った際「ここなら勝負できる」と酒巻氏は直感。「中野の地域自体がガヤガヤしていて、せんべろ系や昔ながらの大衆酒場が多いイメージがあった。渋谷にあるような“イケてる”居酒屋をつくったら集客できるんじゃないか」と、勝算が芽生えた。その裏付けとなるAIによる商圏分析でA判定が出たことで自信を深め、中野に乗り込んだ。
続いて、競合が多い中でも勝てる、地域ポジショニングの解像度を高めた。酒巻氏は中野では労働者人口が住民よりも多いため、ビジネスパーソンが通える「大人向けの居酒屋」を選択。その中で地域に少ない「ネオ酒場」に絞り込んだ。加えて、「地域の居酒屋の平均客単価に20%上乗せする」という自社のナレッジを掛け合わせ、中野では隙間となる客単価5,000円台(現在5,500円)の明確な立ち位置を見つけ出した。
また、中野には個人店の個室居酒屋がほぼないに等しいというデータから、契約した居抜き物件のレイアウトを変更。メインのコの字カウンターの端を削って壁を設置し、L字カウンターと個室を配す造りに改装した。オフィスが多い地域でもあるため宴会・商談の需要が見込め、実際にその団体客が多いとか。コンセプトは、カウンターのライブ感を活かす「炭焼き料理とお酒が楽しめる、中野の大人の溜まり場」とし、ターゲットは情報感度の高い「30代女性」に定めた。


