坪月商53万円の中野『炭火焼酒場ワラテル』。地域×業態を見極める“必勝のデータ分析”とは?
ペルソナを意識したプロダクトとトータル原価率23%を叩き出す商品設計
次に商品設計へ。「30代女性」のペルソナから、女性1人でも多くの種類の料理を食べられるよう小皿を多用。約40種のフードメニューのうち、串に刺さない焼鳥ミックス(盛り合わせ、1,078円~)など数品を除き、小皿に盛る。女性ウケのいいアイテムとしては、石巻漁港直送のエビやカキといった海鮮、アボカド、トマトチーズなど野菜の炭火焼き(308円~)を用意する。
カウンター越しに見える炭火焼きは無論、ライブ感創出の一手に。その上「炭火焼きおにぎり」(528円)と「出汁巻きたまご-炭火バター-」(748円)の仕上げは、客前で行う。炭を押し当てると一気に煙が立ち上り、驚いたお客との会話のきっかけにもなるアイテムだ。
約30種のドリンクメニューでは焼酎推し。ただし、「CHILL GREEN(麦)」(638円)など横文字のしゃれた銘柄が多く、約10種類をラインアップ。加えて、石川・能登半島産「のとジンソーダ」(1,078円)などのクラフトジン、6種のフルーツ漬け果実酒(各715円)といったネオ居酒屋を意識したアルコールを中心に置く。
トータル原価率は、会社の方針で全店25%以下に設定しているが、繁盛店『ワラテル』は現在23%と下振れ。アルコール類の売上比率は全体の40%に達し、しかも低原価率の焼酎が売れ筋なのが好材料に。フードは女性目線の小皿提供を逆手に、小ポーションの盛り付けが原価率を抑える。当然、原価の異なるメニューを組み合わせて、全体の原価率を調整するバリューミックスも抜かりない。さらにABC分析のA商品群(主力メニュー)やお通しに関しては、土日や繁忙期に値上げするダイナミックプライシングを敢行。こうした綿密な原価調整スキームの組み合わせで収益拡大を担う。
接客は心理学で顧客満足度向上、仕込みは「串打ち廃止&OEM」で月120時間を削減
酒巻氏は、「現場の努力による空間創造力みたいなものが付加価値となり、原価率を下げる要因になっている。『ワラテル』の名物をあえて言うならアトモスフィア(雰囲気)です」と補足する。その事例を次のように詳解した。
「従業員の作業連携からくる活気づくりを大事にしています。そのために従業員が守るべき営業理念的な項目がいくつかあります。例えば従業員同士が厨房での作業中、『何々を取って』『はいよ!』と声を掛け合うことで活気が生まれていく。活気をつくった後はお客さまへの気遣い。人との接触回数を増やすと親近感がわいてくる心理学のザイオンス効果で、良い印象を与える。配膳、空いたお皿を下げる、箸を補充するなどの接点を(2時間の滞在で)最低5回はつくると決めています。お客さまが直接感じ取れない価値を仕立てていくイメージですかね」
この話から、接客に重きを置く店であることが伝わる。その裏で取り組む仕込み・調理オペレーションについては、実にシンプルな考え方を酒巻氏はもつ。
「僕自身、調理技術がないので、属人化させる商品を設計する発想がありません。弊社の既存店の商品も、誰でも簡単に作れるものばかり。さらに今回、焼鳥の串打ちをやめたらものすごく楽になりました。気になって調べたら、仕込み時間が月120時間も削れることが分かり、その分人件費が浮きましたね(笑)」
さらに多店舗を運用するLTVは、自社で開発したレシピをOEM(他社ブランドを製造する業者)へ渡して発注。焼鳥のタレから湯煎するだけで完成する煮込みまで、自社製品を多種大量生産し、業務効率化を図っている。


