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ビール出荷量が過去最低。今、ビール業界に何が起きている? 飲食店としての対策は?

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Photo by iStock.com/kzenon

2016年のビール類の出荷量は4億1476万ケースにとどまり、前年度と比較して2.4%も減少、過去最低を記録した。飲食店の主力商品ともいえるビールに今、何が起きているのだろうか。ここでは、ビールの出荷量が減少した背景、そして飲食店においてドリンク類の売り上げを向上させる施策について考えていく。

ビール離れの拡大! なぜ出荷量が落ち込んでいるのか?

出荷量減少の原因のひとつだと言われているのが「若者のビール離れ」だ。株式会社Media Shakersが運営する「M1 F1」総研の調べによると、20~30代前半の「ビールが嫌い」な人に「嫌いな理由」を聞いたところ、トップになったのが「苦いから」という回答。54.4%もの人が、苦いことを理由にビールを敬遠していることがわかった。

日本のビールの特徴と言えば、独特の苦みやのど越しの良さ、キレなどが挙げられるが、このビール特有の“苦み”を受け入れられないという若い世代はじつは多い。また、楽天リサーチの調査によると、一杯目にビールを頼む50代男性が60%なのに対し、20代男性は49%とその数には10%もの開きがある。

一方で、いわゆる “宅飲み ”のビール消費量も減少傾向にある。若い世代を中心にチューハイなどのRTD飲料の人気が拡大。サントリーの調査によると20代が一人飲みをするときのお酒は、RTD飲料がビールを抜いて一位となった。さらに、2020年から始まるビール税の一本化により、発泡酒や第3のビールの価格が上昇。安さを求めていた消費者がビール類の購入を避けると予想され、今後ますますビール離れが進む模様だ。

Photo by iStock.com/LeszekCzerwonka

「とりあえずビールで!」の時代は終わり!?

ビールの出荷量減少とは逆に、飲食店で飲まれるようになってきたのが、ハイボールやレモンサワーなどのビール以外のお酒。また、数年前から続くワイン・日本酒のブームもビール離れに拍車をかける一因となっている。こういったお酒事情からわかるのは、消費者の嗜好が急速に多様化していることだ。

そして消費者の嗜好の多様化は、ビール自体も影響を受けている。ここ数年、クラフトビールが人気を席巻しているのは言うまでもないが、最近では世界各国の輸入ビールを扱う飲食店も増加。いわゆるピルスナータイプの王道ビールだけでは、業態によっては「少し物足りない」と感じさせてしまう、そんな時代に突入しつつあるようだ。

Photo by iStock.com/danielfela

消費者の多様性に合わせた取り組みが大切

アルコール類をはじめとするドリンク類は、原価率が低く、店の直接的な利益に繋がりやすい。ビール需要が減少しつつある今、ほかのアルコール類にも力を入れつつ、また様々な施策で消費者の需要に応えていくことが、売上向上の近道であると言える。では、具体的にどんな施策が有効なのか見ていこう。

■若い世代向けのお酒の導入
カクテルや梅酒といった苦みの少ないお酒を導入。ビールなどの苦みのあるお酒を避ける傾向にある若い世代の集客が期待できる。また、近年人気のレモンハイにあるように、「キンミヤ焼酎×無農薬レモン」といった具合に店独自の“売り”を作るのもいいだろう。珍しいものやプレミアム感を重視する消費者が食いつきやすい。

■クラフトビールや輸入ビールの拡充
人気が高まっているクラフトビールや輸入ビールの種類を充実させるのも売り上げアップのひとつの手だ。実際に、クラフトビールを導入したことで売り上げがアップしたという店舗もある。輸入ビールは、フルーティーな味わいのものもあり女性客の増加も望める。他店舗では取り扱っていないような種類なら尚いいだろう。

■お酒を主役とした特別メニューの開発
複数のお酒を試すことができる「利き酒コース」や特定のお酒と料理をセットにした「お酒と料理のペアリング」など、お酒を主役とした特別メニューの開発も有効的だ。お酒好きな消費者をターゲットとすることで、集客に繋げることができる。

また、SNSを活用すればより効果的に集客できるだろう。たとえば、客自身のInstagramに注文したアルコール類の写真をお店のハッシュタグを付けて投稿してもらう。店側は写真の確認次第、割引を実施する。客側から見ると写真を投稿するだけで割引されるというお得感があり、店側にとっては広告費を払わずとも店の宣伝ができる。両者にとってメリットの大きい施策と言えるだろう。

急速に多様化が進む日本のアルコール市場。飲食店が売上をアップするためには、元来のビールだけに頼るという施策を見直し、時代に即したアルコール類の拡充、それに伴う施策を効果的に行っていくことが大切だ。アルコールメニューを見直す際は、売れ筋・死に筋メニューがひと目でわかる「ABC分析」を行うのも効果的なので、ぜひ試してみてはいかがだろうか。

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サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。