赤字店舗を黒字化するには? PL(損益計算書)から判断する飲食店再生の基本

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赤字に陥ってしまった店舗を黒字化するためにはどうすればいいのか? 施策はいろいろあるが、今回はPL(損益計算書)から読み取ることができる施策について説明する。
赤字の原因と改善策
赤字の原因は、数字面から考えるのであれば、売上が足りないかコストが掛かりすぎているかである。売上が足りているかどうかの一つの目安は、売上が賃料の10倍以上となっていることである。売上が賃料の10倍とれているのであれば、十分な売上を取れていると判断してコストの見直しに注力していいだろう。逆に、売上が賃料の10倍以下であれば、売上を増やす施策も必要となってくる。
コストの見直しの際、真っ先に手をつけるのは原価と人件費、いわゆるFLコスト(Food=食材費、Labor=人件費)である。業態にもよるが、FLコストは売上の60%程度を占めるコストであり、しっかり管理することが黒字化への第一歩である。一方、売上が足りない場合の考えだが、売上とはシンプルに言えば、客数と客単価の掛け算で表すことができる。つまり、売上を増やすには客数を増やすか、客単価を増やすことを考える。

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FLを抑える
まず、原価率に関してはロスを抑えることが大事である。ロスとは、賞味期限切れやオーダーミスなどにより発生する廃棄ロス、レシピの規定量より多く盛り付けることで発生するロスがある。発注量は適正か、賞味期限が近い食材から使用するいわゆる先入れ先出しなどの食材管理は適切に行われているか、レシピ通りの食材使用量が守られているかを確認する。
原価に関しては、棚卸も重要である。毎月の原価は月初の在庫額と当月の仕入額から月末の在庫額を引いたものが原価となる。
当月原価=月初在庫額+当月仕入額-月末在庫額
在庫額を確定する作業が棚卸であるが、この金額がズレていると原価も狂ってしまい、間違った原価に対する施策を打つことになってしまう。在庫のカウントなどはスタッフに依頼する店舗も多いだろうが、非常に重要で正確さが問われる作業であることをしっかり伝えよう。
人件費をコントロールするには、アルバイトスタッフのシフト管理を徹底するのが有効である。まず、売上に応じた基本シフトを作成する。例えば、平日と土日祝で売上が大きく違うのであれば、それぞれの基本シフトを作成する。そして、その基本シフトに近い人員体制でシフトを作成する。売上が計画通りでない場合は、人員が余っていることになる。アルバイトスタッフに早上がりをしてもらいコストをカットする方法もあるが、チラシを配るとか呼び込みをするといった売上を上げるための施策にあてるのもいいだろう。
原価と人件費に共通して重要なことは、日次で管理することである。原価を日次で算出するのは手間がかかるので、日次で集計するのは仕入金額で構わない。売上と仕入と人件費を日々集計するとともに、当月の進捗状況を確認することで、仕入れや人件費が売上に対して多すぎるときは早めに手を打つことができる。

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売上を上げる
前述の通り、売上=客数×客単価であるが、もう少し細分化すると、以下の通りになる。
客数=新規客+既存客
客単価=商品単価×買い上げ点数
これらのどの要素を上げるかによって、打ち手も変わってくる。例えば、新規客数を増やしたいのであれば、初回限定のキャンペーンやこれまでと異なる顧客ターゲットに向けたプロモーションを打ち出すことが必要であろう。
商品単価を上げるのであれば、ただ値段を上げるのではなく、付加価値をプラスしながら値段も上げることで顧客の理解も得られやすくなるだろう。例えば、
・具材を追加して、1杯700円のラーメンを780円にする
・産地や製造方法にこだわった食材や調味料などに変更する
・4個で280円の商品を5個で350円にする
などで単価を上げれば顧客からの理解が得られやすい。
新しいメニューを増やすことも効果的な施策である。同じメニューばかりだとどうしても飽きてくるので、既存客への施策としては有効である。その際には、一度に新登場させるメニュー数と原価率に関して注意する。一度に多くの新メニューを登場させても、オペレーションの混乱につながり、顧客もどれを注文すればよいか混乱する。どうしてもたくさん出したいのであれば、一遍に投入するのでなく、月ごとにこまめに変えていくほうがいいだろう。
新メニューの原価率は、店全体の原価率と必ずしも同じである必要はない。目玉商品は少し高めに設定して、他の商品の原価を抑えることで、全体の原価率は計画通りにするというやり方もある。商品ごとではなく、店舗全体での原価率を意識するようにしよう。
今回は、PLから判断する再生案の基本ということで、いくつかの施策を説明した。数字から読み取るスキルを身に付けることで、効果的な対策を打つことができる。今回紹介した基本を踏まえながら、ぜひ自店の改善に取り組んでいただきたい。
