飲食店の全面禁煙化、経営者の4割が「賛成」。アンケート調査でメリット・デメリットが浮き彫りに
厚生労働省が検討している受動喫煙防止法案について、飲食業界で大きな議論が巻き起こっている。実際にはどのような声が上がっているのか? 弊社では飲食店経営者を対象に、現在の喫煙環境と、厚生労働省が提示している受動喫煙防止法案についての意見を聞いた。詳しく回答を見ていこう。
■調査概要
調査対象:飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:192名
調査期間:2017年9月5日~2017年9月10日
調査方法:インターネット調査
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まず、現在の喫煙環境について伺った。すると「全席禁煙」が40.1%、「全席喫煙可」が37.0%、「分煙(エリア)」が14.6%、「分煙(時間帯)」が8.3%という結果に。「全席喫煙可」と「分煙」の飲食店が約6割にのぼることから、今回の受動喫煙防止法案により、多くの飲食店が影響を受けることがわかる。
次に、厚生労働省が提示している受動喫煙防止法案について「賛成」か「反対」かの意見を聞いた。厚生労働省が提示している受動喫煙防止法案とは、「飲食店は原則禁煙。喫煙可とするには喫煙室の設置が必要。ただし、小規模なバーやスナックなどの店舗は例外として喫煙を認める」というものだ。結果は「賛成」が40.1%、「反対」が36.5%。どちらでもないが23.4%だった。
内訳を見てみると、現在「全席喫煙可」で厚生労働省案に「賛成」と回答している人は21%。やはり賛成派は少ない印象を受ける。逆に、現在「全席禁煙」で厚生労働省案に「賛成」と回答している人は56%と半数を超えるが、「反対」としている人も26%いる。強制的な法施行には反対し、店の「選ぶ権利」を尊重してほしいという意向が見て取れる。
ここからは、個々の回答を詳しく見ていこう。
食事の環境を優先したい賛成派、選ぶ権利を尊重したい反対派
飲食店経営者は厚生労働省案に対してどのような意見をもっているのか? 回答をみると賛成派と反対派の主張部分がまったく異なる結果となった。これには、この問題を議論することの難しさが感じらせる。
■賛成派
食事を提供する店において、たばこの煙は食事の魅力を損なうといった声が多数見られた。
「現在は店内でも喫煙可にしているが、時代の流れ的にも禁煙にしたい。食事をするところでの他人のたばこの煙は不愉快。法的に禁止してくれればすぐに禁煙にしたい」(全席喫煙可/イタリア料理/8坪)
「食事時にたばこを吸われると、お料理、ドリンクの味が損なわれる」(全席喫煙可/洋食/坪数不明)
「飲食店においては、提供する飲食物の見た目・味だけでなく香りも重要と考えるのでたばこの匂いはその妨げになる」(全席禁煙/カフェ/14坪)
■反対派
店の裁量に任せるべきという「店の選ぶ権利」、嗜好品を規制するのはおかしいという「吸う権利」、また、厚生労働省案に例外が設けられたことについての反対意見も見られた。
「嗜好品に対して国が規制するのはおかしいから」(全席喫煙可/カフェ/10坪)
「飲食する場所=息抜きの場だと思うので、たばこぐらい自由に吸わせてあげればいいと思う。吸いたくない人の権利ばかりが優先されるのは不公平な気がする。そもそも、そんなに体に悪いものなら販売しなければいい」(全席喫煙可/カラオケ・パブ・スナック/坪数不明)
「喫煙に関しては店舗が選択できるよう余地を残したい。全面禁煙とすることには、特に喫煙率の高い地方、店の業態に大きな影響を与える」(全席禁煙/フランス料理/20坪)
「例外を設けず、すべてのお店が全面禁煙になれば公平性が保たれる。喫煙場所は行政が共用喫煙所を新設すれば良い」(全席禁煙/居酒屋・ダイニングバー/14坪)
実際に「全面禁煙化」「分煙」するとどうなる?
今回のアンケート調査では、「全席喫煙可」から「全面禁煙」、もしくは「分煙」への移行を経験したことがある飲食店に、移行後の感想も聞いた。実際に「全面禁煙化」、または「分煙」をするとどのような影響を受けるのだろう。まずはポジティブな意見からピックアップしていこう。
「女性客が増えた、喫煙者も食事が終わってから近くの喫煙所に行くようになった。そのため客の回転率は前より上がった」(全席禁煙/ラーメン/10坪)
「店舗のテラスに灰皿と椅子を設置してそちらに案内しているが、一度入店後、禁煙表示を見て帰られたのは、2年半で1組だけ。禁煙だからありがたい、という声はよく聞くが、喫煙者は素直にテラスで吸われることが多く、普通にリピートして頂いている」(全席禁煙/居酒屋・ダイニングバー/坪数不明)
「客数は若干減ったが、回転率が上がった」(エリア分煙/和食/30坪)
「1店舗を全席禁煙に変更したが、この1店舗は終日食事客がほとんとで、飲酒するお客様が少ないこともあり、さほど客数に変化がなかった。小規模店舗の為、全席禁煙にすることで心地よくお食事していただけるようになった」(時間分煙/そば・うどん/坪数不明)
「一時的に客数は減ったが半年位で元に戻った。今は禁煙が当たり前になった」(全席禁煙/中華/坪数不明)
女性客が増えたり、回転率が上がったりと好影響が出ている店舗が見受けられた。一方で悪影響が出てしまった店舗もあるようだ。
「『タバコ吸えますか』と聞いて入ってくる方は、『No』と答えた時点で退店される」(全席禁煙/カフェ/100坪)
「7月に全面禁煙にして喫煙室を設けましたが、売り上げが1割減りました」(エリア分煙/居酒屋・ダイニングバー/坪数不明)
「客単価や客数は激減したが、客層は格段に良くなった。どっちを取るかは経営者次第」(全席禁煙/イタリア料理/14坪)
「特に高単価のお客様が減った」(エリア分煙/しゃぶしゃぶ/150坪)
東京都では飲食店を含め、多数の人が利用する施設を原則禁煙とする受動喫煙防止条例の制定を表明した。しかも違反者には罰則を課すことも検討しているという。東京で営業する飲食店は、厚生労働省の動きに加え、東京都の動きにも注視していく必要がありそうだ。
まだ猶予があるとはいえ、着々と足固めが行われている飲食店の全面禁煙化。法案の着地点を追いつつ、来るべき日に向けて準備を進めておきたいものだ。
「飲食店リサーチ」について
「飲食店リサーチ」では、飲食店を経営する皆さまに、店舗運営に関する様々なアンケートを行っています。 アンケート結果は、飲食店の皆さまに店舗経営のヒントとして活用していただけるよう、レポート記事として公開されたり、 皆さまが利用する業務用商品やサービスなどの開発に役立つデータとなります。