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福岡『とり田』のランチ戦略がスゴい理由。ランチをきっかけに、リピーター獲得から新業態開発まで

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限定ランチメニューとして提供した『とり田のチキンカツとじ丼』。割り下には水炊きスープを用い、九州産ハーブ鶏を鶏カツに

博多を代表する郷土料理の一つ「水炊き」の専門店として、地元客や国内外の観光客から人気を集める『とり田』。数年前まで、水炊き専門店といえば、創業数十年の老舗がほとんどだったが、若い人たちが気軽に行ける雰囲気ではなく、「このままだと水炊きという食文化が継承されなくなってしまう」と危機感を覚えた奥津啓克氏が、それまで営んでいた人気の創作和食レストラン『手島邸』を閉店させ、2012年7月にオープンさせた。そんな『とり田』で人気を博しているのが、2013年5月にスタートさせた「月替りランチ」(月〜土曜限定)だ。

studio092代表の奥津啓克氏

近所の人たちにとって意味のある店になりたい!

福岡における水炊きは家庭料理。水炊き専門店を訪れるのは、福岡に訪れた県外の客をもてなすとき、家族や友人のお祝いなどが中心だ。普段使いの店として水炊き専門店に訪れる客は少ない。「月替りランチを始めたきっかけは、近所の人たちにとっても意味のあるお店になりたいと思ったから。水炊き専門店が手がける鶏料理を提案できたらいいなと考えました」と、奥津さん。

記念すべき第一弾は「親子丼」。月替りランチがスタートして4年以上経過しており、のべ50品以上のメニューを提供してきたことになる。「2年目までは常に新しいメニューを提案していましたが、お客様から『昨年のあのメニューが食べたい』という声が増えてきたので、前年度で評判が良かったものは、その時々のトレンドを取り入れながらレシピを進化させて定番化させています」と奥津氏。これまで、春のチキン南蛮や夏のチキンカレー、正月のカレーうどんなどが再登場を果たしたとか。

記念すべき第一弾の「親子丼」(2013年5月)。鶏1羽から15gしかとれないフリソデ肉を使用。1日15食限定だった

当初は近所の人たちのためにと始まったこのメニューだが、SNSなどでその評判が拡散され、現在は県外から毎月通ってくるファンもいるのだそう。また、想定していなかったのが若い客が増えたこと。月に一度のご褒美感覚で訪れる若年層が増え、客層の幅が広がったという。

2016年7月に登場したのは「真夏のグリーンカレー」。トレンドを反映してパクチーが添えられている

圧倒的な人気を誇ったあのメニューの専門店オープン!

水炊き専門店=鶏のスペシャリストとして、月替りランチには必ず鶏肉が使われる。「その時々のタイミングがあるので、基本的には前の月、ギリギリに考えます。毎月25日には翌月のランチを発表しますが、25日に白紙に戻したこともありました。そのときは25日に発表できなかったけど、なんとか1日のスタートには間にあわせることができました」。厨房スタッフが提案し、他のスタッフも含めて試食をしながら、完成形を追求している。

なかでも、2013年8月に初登場を果たし、圧倒的な人気を誇ったのが、「担々麺」だ。スープも肉味噌も水炊きで使用する新鮮な鶏肉でつくられる。コクがありつつもさっぱりした味わいは、幅広い世代からの支持を集め、2年後の2015年8月、担々麺をメインに据えた新業態『博多担々麺・唐揚げ とり田』をオープン。現在は3店舗を展開している。

ランチで好評を得た「担々麺」を主役にした新店もオープン

「ランチは季節感を大切にしながら、その時々のトレンドに合わせて変化させていきたいと考えています。一方、水炊きに関しては、開業から5年が経ったので、そろそろ、とり田が提案する“博多水炊き2.0”といいますか、水炊きの大枠の部分の価値観をさらに進化させられるようなイノベーションを起こしていきたいですね」と、奥津氏。2017年2月には、クアラルンプールに海外初出店を果たし、国内外から注目を集める『とり田』に、今後も注目していきたい。

『とり田 薬院店』
住所/福岡市中央区薬院2-3-30 CASE BLDG1F
電話番号/092-716-2202
営業時間/11:30〜L.O.21:30(ランチは16:00まで)※売り切れ次第終了、日曜は提供なし
定休日/不定休
http://studio092.com

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寺脇あゆ子(cadette)

ライター: 寺脇あゆ子(cadette)

福岡・大阪の出版社勤務を経て、福岡を拠点に活動するフリーの編集者・ライター。グルメ情報誌『ソワニエ』やシティ情報ふくおか別冊『福岡肉本』などの地元情報誌のほか、ぐるなびが運営する『dressing』、スイーツ専門の『CAKE.TOKYO』、ウェブマガジン『greenz.jp』などのウェブメディアでも九州・福岡を中心とした情報を発信している。