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ラーメン『一蘭』の不法就労問題に飲食店の声「法律通りではやっていけない」「社会構造に問題」

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Photo by iStock.com/Sean_Kuma

不法就労助長罪で状況が一変、店側に求められる責任感

C氏は今の焼肉店の前の店の時代から、外国人労働者を多く雇っており、この問題についても多くの現場に立ち会っている。「20年ほど前に働いていた店では、外国人はオーバーステイが当たり前でした。よく警察や入管から電話がかかってきて『不法残留で逮捕したけど、そちらで働いていたというから、残っている給料とかあったら持ってきてください』と言われて持って行ったりしたものです。今は学生など、色々なビザで来ますし、難民申請をする人もいます。昔とは事情が変わっています」。

店側には、どこか牧歌的な状況も感じられた昔の外国人の不法滞在だが、それは「不法就労助長罪」が関係している。不法就労者を雇っていた者への罰則が規定されたのが1989年だが、当時は知らずに雇用した場合は処罰されなかった。しかし、2009年の入管法改正(2010年施行)で知らないことに過失がない場合を除き、処罰されることになったのである。雇う側を規制しない限り、不法就労は減らないということに立法も行政も気付いたのであろう。これによって取り締まり状況は一変したという。「それまでは不法就労があれば店側は警察に呼ばれて、油を絞られる程度で済んでいました。今はそうはいきません。自分たちも刑罰の対象になりますから」。

そのためC氏は「不注意で不法就労者を雇ったら刑罰がつくので、ウチでは外国人労働者は当然書類をチェックします。永住権はあるのか、学生か、定住者か。日本語学校に入学して、途中で行かなくなった外国人はいっぱいいます。学校に行っている外国人は、アルバイトは夜しか来ません。だから除籍になればすぐに分かります。『昼もできます』と言ってきますから」という。

Photo by iStock.com/BernardaSv

C氏「社会構造上の問題」、現代の飲食業界に一石投じた

C氏はこの問題は『一蘭』だけの問題に矮小化することなく、根本的に解決する必要があると考えている。「日本人の数、学生の数が少なくなっているのに、飲食店の数はあまり変わらない。でも外国人留学生を雇ったら、週に28時間しか働けない。外国人を呼ぼうと思っても、コックさんならまだしもホールサービスだとビザが下りません。どうやって人を確保すればいいのでしょうか」と疑問を投げかける。

経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れ(対象国:フィリピン、ベトナム、インドネシア)のように、飲食業界も外国から人材を受け入れるようなことをしないと抜本的な解決は難しいとする。「構造的に人手不足です。そして『一蘭』の問題は社会構造上の問題と言えると思います」と話していた。

3氏の話を聞く限り、今回の問題は氷山の一角であることは間違いないだろう。構造的に生じた人手不足が、業界内で様々な歪みとなって表面化している、その一端という位置付けができるかもしれない。そのような意味も含め、一蘭の問題は現代の飲食業界の現状に大きな一石を投じたと言える。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/