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飲食店を悩ます「ネット上の名誉毀損」に弁護士がアドバイス。まずは削除依頼、法的責任の追及も

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書き込みの内容によって法的責任は変わってくる

削除・書き込みのイタチごっこの場合は“将来”の表現行為に差し止め請求を

━━書き込み1について、民事・刑事の責任追及はできますか

佃弁護士 事実摘示(てきじ=指摘し、示すこと)による名誉毀損ですから、普通に民事・刑事責任が追及できると思います。管理人が削除要請に応じない場合、書き込んだ人と管理者を被告として、削除と損害賠償を求める訴訟を起こせるでしょう(民事責任)。

━━削除できたものの、その後も書き込みが続いて削除要請とのイタチごっこのようになった場合、書き込みを防ぐ方法はありますか

佃弁護士 裁判所が認めるかどうかですが、書き込んだ人が同じ書き込みを何度も繰り返しているような場合であれば、その人を被告として、「被告はVの店の売り上げの一部がカルト教団に入る仕組みになっているという書き込みをしてはならない」という差し止めの判決を求めるという方法があるでしょう。将来の表現行為の差し止めですが、認められる可能性はなくはないと思います。相当しつこくやっていて、かつ、書き込まれている内容が特定できる場合なら、裁判所も命令は出しやすくなります。

━━これがカルト教団ではなく、一般の宗教団体に入っているという虚偽の書き込みだったらどうでしょう

佃弁護士 微妙です。例えば慈善団体に入っているという書き込みの場合、それが虚偽であっても、社会的評価が低下されるかと言えば、そうではないですから。ただ、お金の一部が団体にまわっている分、価格が高くなっている、値段が上乗せされているという指摘であれば信用毀損の問題になる可能性は考えられます。

Photo by iStock.com/User9637786_380

「ゴキブリ入りラーメン」は信用毀損罪の可能性も

━━書き込み2についてはどうでしょうか

佃弁護士 民事は名誉毀損で書き込み1と同じ手続きでいいとして、刑事は信用毀損罪(刑法233条)にあたると考えていいかもしれません。「虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した」場合にあたるということで。法定刑は名誉毀損罪と同じです。

━━書き込み3についてはどうでしょうか

佃弁護士 刑事責任の追及は難しいと思います。刑事の名誉毀損は事実の摘示によるものでなければなりません。この書き込みは「ラーメンがまずい」という論評と考えていいですから。ただし、民事責任は追及できるのではないでしょうか。ある街の一介のラーメン屋さんの味がどうであるかは、公共の利害に関わるとはいえません。本当にまずかったとしても、まずいなんてネットで書かれる筋合いはないということです。

Photo by iStock.com/CCeliaPhoto

違法な書き込みは「責任を負う覚悟で」

佃弁護士はこうした名誉毀損の問題について接していると「匿名だから何をしても大丈夫」という風潮を感じることがあるという。しかし、匿名で表現をする自由も表現の自由の一態様として保障されるべきであり、例えば名前を出すとその人が勤務先の会社から差別を受けるなどの場合も考えられ、匿名で書き込むこと自体が悪いとは直ちにはいえない部分に問題の難しさがある。

最後にこうした被害に苦しむ人や、違法な書き込みを行う人へ、弁護士としてどのようなことを言いたいかを聞いた。

━━ネットの書き込みで悩んでいる飲食店経営者は、まず、どうすればいいでしょうか

佃弁護士 削除を管理者に求めるのが一番です。

━━なかなか削除してくれないし、抗議する文書も何を書いていいか分からない。でも、弁護士事務所は敷居が高くて、と感じるという人もいると思います

佃弁護士 気軽に弁護士に相談すべきでしょう。料金は各事務所や事案によって異なりますが、一般的に法律相談は30分で5000円からです。

━━無責任な書き込みをしようとしている人にどんなことを言いたいでしょう

佃弁護士 自分で書き込んだことについては自分が責任を負うという覚悟で書き込みをしてください、と言いたいですね。

佃克彦(つくだ・かつひこ)
東京弁護士会所属弁護士。1964年東京都生まれ。1987年に早稲田大学法学部を卒業、1993年4月に弁護士登録。

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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/