飲食店のスマートミール認証はじまる。外食業界に広まる「健康志向」

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日本栄養改善学会、日本糖尿病学会などの7学会が、健康的な食事「スマートミール」を提供する店や企業を認証する新制度を今年3月にスタートした。
スマートミールの基準は、国が示している生活習慣病予防や健康増進のための食事の目安、そして各学会の診療指針などを踏まえて作成されている。エネルギー量(カロリー)、タンパク質・脂質・炭水化物の比率、塩分などに基準が設けられているほか、そうした食事の継続的な提供、情報提供や説明ができる人の配置、店内禁煙を条件とする。現在、申請の受付が行われており、地域の飲食店を支援する自治体、ファストフードチェーンからの問い合わせもあるという。
制度新設の目的は、病気の予防や健康寿命を延ばすことだ。これまでは生活習慣病の対策などにおいて『外食は控えるべき』と指導されることがあったが、そうではなく、「認証されたメニューに触れたり食べたりする機会を増やすことで、普段の食事の栄養バランスのイメージをつかめるようにし、健康への道筋をつくりたい」と制度関係者は考える。つまりスマートミール認証を、外食や中食を利用する際、健康につながるかどうかの判断基準にすることを目指しているのだ。これから全国で認証店舗を広げていくという。

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アメリカでは一部飲食店でカロリー表示が義務化
近年、企業には、従業員の健康が会社の経営にも効果をもたらすとする「健康経営」の考え方が広がっている。従業員の健康増進のための取り組みのひとつが、社員食堂の見直しだ。3食のうち1食を社員食堂でとるとすると、これは年間の食事回数の約20%になる。従業員の健康増進に社員食堂が果たす役割は小さくないのだ。スマートミール認証は社員食堂も対象にしている。そのため、社員食堂の運営を専門知識を持つ飲食店に委託する動きが活発化しているという。
また、企業をあげて効果的な健康増進プロジェクトを実施するなどして従業員の健康増進に取り組む姿勢を示した企業では、従業員の運動や食事面への意識が良い方向に向かっていることが数値でも証明されはじめているようだ。こうした企業での流れは、社会全体での健康志向のさらなる高まりにつながると予想できる。今後、外食業界にも少なからず影響を与えていきそうだ。
一方、アメリカでは、一部の飲食店・食料品店でのカロリー表示が義務付けられた。これは、2010年のオバマ前政権時、医療保険制度改革法(オバマケア)で決められたもので、15年以上も前から検討されていた。実施の狙いは国民の肥満防止と医療コストの抑制だが、これは日本で行われているさまざまな取り組みの狙いと一致する。今後、日本でもカロリー表示の義務付けが起きるかもしれない。

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「健康」が飲食店の強みに
確実に健康志向へとシフトしている今、飲食店には、味覚や気持ちを満足させる食事を提供できることだけでなく、健康的な食事を提供できることも求められていくだろう。また、提供できれば、店の強み、ビジネスチャンスにもなる。
すでに健康をコンセプトにし、人気を博している店舗もある。高タンパク・低糖質・低カロリー食を提供する『筋肉食堂』(六本木)、化学調味料不使用を徹底する『東京MEAT酒場』(吉祥寺や高田馬場など)がその一例だ。
さらに、新たにキーワードやコンセプトを持つと、競合店との差別化ができたり、メニューや店舗づくりの落とし込みがブレにくくなったりというメリットもある。特にそれが「健康」の場合、消費者から背を向けられることはまずない。ブームに乗って短期的に売り切るといった方向になることもない。客の健康への思いに寄り添うことで、より長く受け入れられる店になれるのではないだろうか。
