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月8日以上休める飲食店はわずか28%。飲食業界の「働き方改革」、その実態

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54%が「給与・賞与の金額」に不満

次に、待遇面の満足度について調査した。「勤務時間」「休日数・休暇の取りやすさ」「給与・賞与・各種手当の金額」について、それぞれの満足度を聞いたところ、すべての項目で「低い」「非常に低い」という回答が過半数に達した。なかでも「勤務時間」は「非常に低い」の回答が28%と最も多く、長時間労働の実態が浮き彫りとなった。

「給与・賞与の金額」については54%が不満足と感じているようだ

人間関係には満足も、昇進・出世のチャンスの少なさに不満も

さらに、仕事内容や職場環境についての「満足度」を調査。質問したのは「仕事内容・やりがい」「スタッフの人間関係」「スキルアップ・学びの機会」「昇進・出世のチャンス」の4つの項目。

満足度が最も低かったのは、「昇進・出世のチャンス」で、33%が「非常に低い」と回答。一方、比較的満足度が高いのは「スタッフの人間関係」で、過半数が「普通」「高い」「非常に高い」と回答している。

スタッフの人間関係については満足度が高い傾向

課題解決に向けた飲食業界の取り組みは?

従業員が抱くこれらの不満に対し、多くの飲食企業が対策を講じ始めている。たとえば、『ロイヤルホスト』『てんや』などを運営するロイヤルホールディングスは、24時間営業を廃止。さらに、生産性向上の取り組みの一環として、完全キャッシュレスの店舗『GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町店』をオープンさせたことは記憶に新しい。

また、『串カツ田中』では2018年度から店舗社員の夏休み・冬休みを3日ずつ増やした。さらに通常のボーナスに加え、四半期ごとに3~6万円のボーナスを支給。今後も増加予定だという。

そして京都にある国産牛ステーキ丼店『佰食屋』は、100食売り切れば営業終了という斬新なスタイルで注目を浴びている。売り切れば仕事を切り上げられるスタイルは、スタッフのモチベーションにもつながり、「平成27年度 京都市『真のワーク・ライフ・バランス』推進企業賞」を受賞した。

※写真はイメージ。Photo by iStock.com/Yagi-Studio

中小規模店・個人経営店でもできる「働き方改革」の実例

最後に、「働きやすい環境づくりに向けて、勤務先の飲食店ではどのような取り組みが行われているか」という自由記述形式の質問をした。大手企業のように、急に休暇日数を増やしたり、給与のベースアップを図ったりするのは難しいという飲食店でも、取り掛かりやすい実例を紹介する。

■「コミュニケーション」に関する取り組み
回答の中で最も多かったのが「コミュニケーション」に関する取り組みだ。人間関係の悪化は退職理由にもつながりかねないし、店の雰囲気も悪くなってしまう。スタッフ同士が密にコミュニケーションを図り、スタッフ全員が意見を言える風通しが良い環境づくりを大切にしているという意見が多くみられた。また新人スタッフには、特に小まめなコミュニケーションを取るよう心がけているという声もあった。

■「勤務体制」に関する取り組み
アンケートでは不満を感じる人が多かった「勤務体制」の改善に取り組む店も多くあった。毎月の休暇を増やすことは難しいが、「休憩を必ず2時間取得するようにする」「暇な日は早上がりするようにする」など、細かな労働時間を調整し、改善につなげようという声も。さらには、既存スタッフの負担を減らすために、新たに人を雇う準備をしている店もあった。

■「作業の効率化」に関する取り組み
「作業の効率化」で、従業員の負担を減らすという方法もある。アンケートでは、「食材の発注をFAXなどのアナログな手段からWebに切り替えることで、作業効率をあげようとしている」という声が。これ以外にも、調理やサービスのやり方を一つずつ見直すのも、従業員がより良い環境で働くためには必要になってくるだろう。

これまでは、「少ない給料で長時間働く」という考え方が当たり前になっていた飲食業界。しかし、その風潮がゆえに、近年は飲食業界で働きたいという若者は減少し、業界全体が人手不足の問題を抱えている。社会全体が「働き方」を改めて考え始めた今、飲食業界も率先して働きやすい環境づくりに取り組んでいかなければならない。これをいい機会ととらえて、働き方改革に乗り出してみてはいかがだろうか。

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。