海外で盛り上がるフードテック市場。飲食店でも「大豆原料の肉」が食べられる時代に!?

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「フードテック(foodtech)」という言葉をご存知だろうか? これは、food(食)とTechnology(技術)を組み合わせた新しい言葉で、文字通り、食に関連するテクノロジーのことを指す。
似た造語ですでに浸透している言葉に「フィンテック」がある。フィンテック(Fintech)は、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた言葉で、代表的なものとしてはモバイル決済などがある。このフィンテックは発展が大いに期待され、膨大な投資が行われてきた。
そして、フィンテックの次に期待されているのがフードテックだと言われている。なかでも「テクノロジーを用いた代替食品の開発」に注目が集まっており、今後、人口増加によって起きるだろう食料問題の解決にも期待がされている。すでにアメリカでは、この分野に対してベンチャーキャピタルが積極的に投資。今後もますます発展していくことが予想されている。

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大豆やエンドウ豆を使って本物の肉を再現
そもそも、なぜ「代替食品の開発」が盛り上がっているのか。大きな理由には、地球規模の食糧難が避けられない状況なっていることがある。2050年には世界の人口は70億人から90億人に達すると予測されているが、現在の生産技術では、これだけの人間が生きていくために必要な食糧をまかないきれないことがわかっている。そこで、従来のように肉や魚を摂らなくても人間が地球で生存し続けられるために「代替食品の開発」が必要とされているのだ。
アメリカ・カリフォルニア州のビヨンド・ミート(Beyond Meat)社では、大豆やエンドウ豆などの植物だけを原料にして「本物の肉とまったく同じ味の食品」の開発を行っている。看板商品の植物性バーガーパティーは、「代替品だと言われなければ気付かないほどの味」「日本で手に入る大豆ミートとは次元が違う」と言われるほどのクオリティだ。
いわゆる“もどき食品”は、アメリカでもスーパーの陳列棚の片隅に置かれることが多い。しかし同社の植物性バーガーパティーを使ったビヨンドバーガーは、「肉ではない食べ物なのに、世界で初めて肉売り場に置かれた」という快挙を成し遂げた。日本からは三井物産が出資しており、今年は日本での発売も予定されているという。
そのほか、サンフランシスコのハンプトン・クリーク(hamptoncreek)社は、10あまりの植物を用いてマヨネーズ、卵、クッキーを再現。また、米スタンフォード大学生物学教授が設立したインポッシブル・フーズ(impossiblefoods)社は、植物で肉や卵、チーズなど動物性の食品を再現している。

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日本でも「フードテック」の関心が高まる!?
日本国内のフードテック事情はどうだろう? 代替食品という括りからは少し外れるかもしれないが、日本では2017年に完全食パスタ「ベースパスタ」の製造を開始したベースフード社が有名だ。「ベースパスタ」の麺には厚生労働省が定める人間に必要な栄養素31種が練りこんであり、eコマースを活用して販売されている。30~40代のビジネスパーソンから主に支持され、すでに10万個を販売。アメリカへの進出も予定されているようだ。
また、オイシックスは、2016年10月にフードテック分野に特化した運営を行う新たな投資部門「フードテックファンド」を設立。畑の状態を自動で最適化するアグリテックを浸透させることで、生産が難しい人気野菜の安定供給を目指している。
さらに最近は、食品加工分野でもテクノロジーが活用されるようになってきた。自動車や電化製品の工場で使われているような産業用ロボットが、食材の加工現場でも活躍するようになっているのだ。食品加工では必要な形や大きさがそれぞれ異なるため自動化が遅れてきたが、ホタテの殻開け、ジャガイモの芽除去などで用いられているようだ。
代替食品の分野では日本より海外の方が先に進んでいる印象だが、今後、それらが輸入される形で日本の飲食店でも味わえる日がくるかもしれない。もちろん“本物”の方が価値があると考える人も多いだろう。しかし、価格や物珍しさといった面で、店の魅力になり得る可能性はある。フードテックの発展が飲食業界にどのように影響を与えていくのか、今後も目が離せない。
