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閑静な住宅街で坪月商45万円を達成。渋谷『活惚れ』に学ぶ「地域に寄り添う」経営術

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>豪快に盛られた雲丹が食欲を誘う「和牛いちぼの炙り寿司」。この贅沢感が『活惚れ』らしさだ

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テーマは「高級食材を使いながらも安くて美味い」

「かつて『魚真』で働いていたときに、景気の悪化に伴って来店するお客様に変化を感じました。『2万円の毛ガニを食べに行こう』ではなく、『毛ガニが1万5千円なら食べに行こう』といった感じです。『高い物を食べに行く』という満足感ではなく、『本当に美味しい物を安く食べる』という満足感に、意識が切り替わったんだと思います。一時期よりは景気は回復しているものの、近年も決して好景気とはいえません。だからこそ『活惚れ』では、高級食材を使用しつつも安くて美味しい物にこだわったメニュー作りに励んでいます。魚介で言えばフグやクエ、アワビなどを使うので、利益が出るぎりぎりの設定といえども、一般の居酒屋に比べれば安くはありません。それでも、メインターゲットであるミドルアッパー層にとってはかなりリーズナブルに感じられると思います」

『魚真』で培った確かな腕前をもつ松永氏。フードメニューは基本的に日替わりで、旬な魚を用いた海鮮料理を中心に、肉や野菜料理も充実。なかでもキャビアとかにみそが盛られた「冷製 毛蟹玉(1杯3980円・1/2杯2000円)」や「フカヒレ茶碗蒸(1500円)」、いくらとウニが溢れんばかりに乗せられた「炭火おにぎり(1個900円)」など、高級食材を贅沢に使った創作料理が人気を集めている。価格設定が実に絶妙で、コンセプトである「居酒屋以上、割烹料理未満」に程よく収まるバランスだ。

また、ドリンクへのこだわりは「クラフト」がキーワード。ビールは、キリンビールのクラフト生ビール「タップ・マルシェ」をはじめ、国産の柑橘類を使ったサワーに国産ワイン、もちろん日本酒も数多く取り揃えている。

「料理に合わせて、さまざまなお酒を楽しんでもらいたく、品揃えには日頃から力を入れています。そのうえで、和食には日本のものを合わせていただきたいので、国産ものに徹底的にこだわっていますね。それに、ビールとノドグロのチップスからはじまり、次は日本酒と刺身盛り。続いてワインにメンチカツを合わせるなど、『活惚れ』だけで食事もお酒も満足していただきたい思いもあります。だからこそバラエティ感というのは常に大切にしています」

国産へのこだわりの裏には、日本のクラフトマンを応援したい気持ちも込められている

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これからの時代は対面式が人気店のカギとなる

「料理するのは料理人で、サービスは専任の人に任せるといった、昔ながらの営業形態だと、今の時代は厳しいと思います。オープンキッチンが主流となっている近年は、シェフが料理をしながらお客様にもサービスをする時代です。独立起業するのであれば尚更ですね」

繁盛店に必要なものを訪ねると、松永氏はそう答えた。昔と比べて、料理以外のものも求めて来店するお客様が増えた感が強く、シェフとのコミュニケーションもそのひとつ。そしてオーナーとして、シェフとして、会話の中からお客様が求めているものが何なのかを探し出す努力も必要だという。

「規模が小さなお店にとって、大事なのはお客様との信頼関係です。その信頼関係をどう気づいていくか。これから独立起業を考えている方々は、そこを蔑ろにしないように気をつけるべきですね。シェフが美味しい料理を作るのは、ある意味、お客様にとっては当たり前のことです。料理の味以上に楽しんで帰っていただくには何をすべきか。僕自身、それは日々模索し続けています。正直、美味しいだけのお店であれば、どこにでもあります。その中で突出したいのであれば、いかにニーズに沿った付加価値を提供できるかに尽きると思います」

『活惚れ』
住所/東京都渋谷区鴬谷町19-19 第3叶ビル1F
電話番号/03-6455-3170
営業時間/月曜~土曜17:00~ L.O.24:00、日曜・祝日16:00~L.O.23:00
定休日/不定休
店名の由来/松永氏の故郷・静岡市清水区で夏に行われる「清水みなと祭り」に因んで付けられた

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柿内直樹

ライター: 柿内直樹

東京都出身。編集プロダクションやゲーム開発会社を経てフリーライターに。ジャンルへのこだわりは自分の可能性を狭めることになるので、さまざまな分野への執筆にチャレンジ中。