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店内禁煙が進む外食業界。なぜワタミは400店舗で「喫煙専用ルーム」の設置を決めたのか

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取材した『和民』大鳥居店

東京都大田区にある大手居酒屋チェーン『和民』大鳥居店の看板には、「和民は全席禁煙です!」と大きく書かれた貼り紙が掲示してある。そして、下段には次のような文言が添えられている。

「喫煙ブース完備しています。お子様連れのお客様、たばこの煙が気になるお客様。安心してご利用ください 店長」

今年4月から全面施行される「改正健康増進法」と東京都の「受動喫煙防止条例」に基づき喫煙ルールが厳格化され、“屋内原則禁煙”が義務付けられる。それに伴い、これまで喫煙可能だった飲食店、とりわけバーやスナック、居酒屋など、お酒を飲みながらたばこを吸う客層も多い業態は難しい対応を迫られている。

もちろん、規制強化を機に思い切って「店内全面禁煙」に踏み切る飲食店も多いが、客離れの懸念は拭えない。そこで、飲食しながらの喫煙こそできないが、店内の一角に煙が漏れない「喫煙専用ルーム」を設置することで、喫煙者の顧客にも配慮する方針にしたチェーン店はある。前出の『和民』もそうだ。

エレベーター横の貼り紙

約400店で「喫煙専用ルーム」設置へ

そもそもワタミは居酒屋業態を持つ企業の中ではめずらしく、早くから「フロア内分煙」に取り組んできた1社だ。同社の広報担当者がいう。

「居酒屋のお客様は、お酒を飲みながらたばこを吸う愛煙家のお客様と、たばこの煙が苦手という方とが昔からいらっしゃいました。そのため、『和民』ではまだ受動喫煙問題が叫ばれていない頃から、店舗の立地に応じて喫煙席と禁煙席を分けてきました。また、2004年に『坐・和民』を出店し始めた時期からは、標準的にエアカーテンを設置して、同じフロア内でも喫煙席から禁煙席に煙が流れないよう工夫もしてきました」

現在はワタミグループが手掛ける居酒屋業態(ミライザカ、三代目鳥メロ、和民、坐・和民)はすべて分煙策を徹底させている。

だが、4月からは客席で紙巻きたばこを吸うことは許されない。そこで同社が昨年から検討してきたのが、前出の『ミライザカ』ほか居酒屋業態の既存店の大半(計約400店)に「喫煙専用ルーム」を設置するという“大英断”だ。

『和民 大鳥居店』の喫煙専用ルーム

ワタミ営業推進統括部・店舗サポート課の柳原拓海氏が話す。

「近年、居酒屋業態でも立地によってはファミリー層に多くご利用いただく店舗もあります。そうした店では禁煙席を希望するお客様の比率が高く、臭いに敏感な方からご意見をいただくケースも増えていたので、喫煙専用ルームを設ける検討を進めてきました。どうしてもエリア分煙では、たばこの煙を完全にシャットアウトできていない面もありました」

しかし、最小3人、最大でも6人という小さな喫煙専用ルームを設置するだけといっても、一朝一夕にできるものではない。

「喫煙専用ルームを設置するために客席を減らさなければなりませんし、テナントによって店の形態もまちまちなので、店長やエリア担当の営業担当者と『どの場所にどのくらいの広さの喫煙専用ルームにするか』と1店ずつ相談しながら決めていかなければなりませんでした。また、工事を行うのは、繁忙期の年末年始は避けたかったので、本格導入が進んできたのは、ようやく最近になってからです」(前出・柳原氏)

コンパクトな設計の喫煙専用ルーム

“さまざまな顧客のニーズに応えたい”という飲食店経営の原点を追求

しかし、喫煙専用ルームは単なる「密閉空間」を作ればOKという話ではない。たばこの煙が漏れ出さないよう、喫煙専用ルームの室外から室内に流入する空気の気流の速さが決められているほか、外部や屋外への排気設備も欠かせない。それだけ投資コストはかさむ。

ワタミは喫煙専用ルーム導入に伴う投資額を公表していないが、400店規模に設置するとなると、多額のコスト負担になることは容易に想像できる。国や都による補助金制度も用意されているが、資本金の少ない中小企業に限られていたり、申請から交付まで時間がかかる点などがネックとなり、なかなか喫煙専用ルームの設置が広がっていない現状もある。

では、ワタミはなぜ店舗改装の自前投資を惜しまず喫煙専用ルームの設置に踏み切ったのか。それは、“さまざまな顧客のニーズに応えたい”という飲食店経営の原点を追求した結果ともいえる。

「もう昔のような『居酒屋と喫茶店はたばこを吸える場所』というイメージは変わってきているので、むしろ非喫煙者のお客様にいかに心地よい空間やサービスを提供できるかを、今後も考えていかなければなりません。その一環として、4月からは従業員が健康でいきいきと働ける環境づくりを強化するため、勤務時間中は禁煙にすることを決定しました。しかし、お客様の中には、お酒を飲んでたばこを吸うことを楽しみに店に来られる方も一定数いらっしゃいます。そうした方々には「喫煙専用ルーム」で引き続きくつろいでいただきたいと思います」(前出・広報担当者)

店の外の路上看板にも「全席禁煙」「喫煙ブース」を案内する貼り紙が

冒頭で紹介した『和民』大鳥居店では、喫煙専用ルームの設置以降、たばこの煙や臭いに関するクレームは出ておらず、「たばこを吸わない人にも受け入れられている」と、店舗改装に尽力する前出・柳原氏は安堵の表情を浮かべる。

4月以降、飲食店の形態を問わず、店内で一切喫煙できない「全面禁煙」の店が増える中、ワタミの非喫煙者だけでなく喫煙者にも配慮した店舗改革がどんな結果を残すのか──。客数や売り上げの増減に影響するシビアな問題だけに、注目していきたい。

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