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2100円の定食一本で勝負! 福岡『清喜ひとしな』が提案する「本当の贅沢」とは?

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ニュージーランド牧草牛を使用した、赤身肉ヒレステーキ。仕上げに特製出汁をかけて頂く

仕込みを見直し食材ロスを減らすことで、店自体のレベルをさらに向上

メニューを一品に絞ったことは、スタッフの働き方をも変えた。独立前、フレンチレストランに勤めた経歴をもつ水田さんは、当時から無駄な仕込みの多さに疑問を感じていたという。

「例えば豆。本当はお客さんが来店されてから筋を取り、ゆがいたばかりのものを出すのが一番美味しいのですが、多くのメニューを提供する店舗ではそういうわけにもいかず……。事前に湯がいたものをまた温め直すなんていう作業もあり、要領の悪さやクオリティに対する一定の妥協を感じていました」

仕込みの量が多ければスタッフの労働時間は必然的に長くなり、さらに食材ロスが出た場合はそこにかけた作業時間さえ水の泡になってしまう。疲弊もするだろう。

「そこで、本当に必要な仕込みだけを厳選し、その作業を突き詰めていったんです。その作業に価値があると納得できればスタッフのモチベーションも向上しますし、そうなれば料理だけでなく、お店全体のクオリティもさらに優れたものになりますからね」

店内はオープンと同時に多くの客で賑わう

『清喜ひとしな』の朝は7時にスタートする。まず店内でその日に使用する分だけの米を精米(この時に出るヌカはヌカ床へ保存)。味噌汁のために一番出汁をとったあと、二番出汁をとってステーキソースに使う。肉はその日に消費できる分だけを開店前までに仕込み、売り切れ次第終了。店を閉めた後はスタッフがまかないを食べ、片付けなどを行って17時には業務を終了する。無駄のない仕入れと調理の工夫で、食材ロスも少なくなった。

「実験的な店だと思います。スタッフが集中できる環境は保ちつつ、いい意味で効率的な経営方法を模索しながら試していきたいですね」と、水田さん。現在はキッチン1名、ホール2名で15席ほどを担当するそうだが、将来的には30席ほどの店にしてスタッフも増やし、精米に関してもオーダーのタイミングに合わせて、その都度行うスタイルを目指していきたいと話す。

「米を精米したり、ヌカ床を作ったりしていると、今度は『これもお店でできるのでは?』という思いが出てくる。スタッフの気持ちが盛り上がっているのを感じますね。最近は『味噌も自家製にしたい』という声が上がって、味噌の作り方を調べているんです。今は、無農薬米からできた熟成味噌を作っていますが、いつかはうちで味噌工場を作るのもありじゃないかなって(笑)」

日常にあるものを、丁寧に楽しむ。慌ただしく過ぎる毎日の中で生まれた、新しい価値観を形にする『清喜ひとしな』。たった一品の定食から広がる未来は無限にある。

路地の一角に佇む『清喜ひとしな』。スタイリッシュモダンな店構えが印象的

『清喜ひとしな』
住所/福岡県福岡市中央区六本松4-5-39 ピア21
電話番号/092-406-5663
営業時間/11:00~15:00、土日祝日10:45~15:30
定休日/不定
席数/15

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戸田千文

ライター: 戸田千文

広島・東京を中心に活動するフリーランスの編集・ライター。これまでにグルメ冊子や観光ガイドブック、町おこし情報誌などの編集・執筆を担当。地方の魅力を首都圏に発信する仕事をするのが夢。おいしい地酒を求め、常にアンテナを張り巡らせ中。