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飲食店が「ネット販売」を始めるときの注意点。営業許可は必要? 販売サイトは?

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画像素材:PIXTA

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、飲食店にとって厳しい状況が続く中、この苦境を乗り越えようとネット通販を始める店舗が増えつつある。新たな販路として期待している飲食店も多いと思うが、ネット通販を始めるには別途許可が必要となる場合もある。そこで今回は、飲食店がネット通販を始める際に気を付けておきたい点を詳しく解説していく。

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ネット通販を始めるには、新たな営業許可が必要?

現在、飲食店営業許可の範囲で、テイクアウトやデリバリーを行っている飲食店も多いだろう。しかし、店で調理した料理をインターネットで販売する場合には、その食品に合わせた許可が必要だ。

例えば、煮物や揚物といった惣菜類は「惣菜製造業」、ケーキなどの菓子類は「菓子製造業」、ハムやベーコンなどの食肉製品は「食肉製品製造業」の許可がそれぞれ必要になる。調理した食品を冷凍して販売する場合には、製造業の許可に加えて「食品の冷凍業」の許可も必要だ。

こうした製造業の許可を得るには、管轄の保健所に申請を出し、施設基準をクリアしなければならない。設備基準は、業種ごとに定められているほか、地方自治体によっても基準が異なる。

また、飲食店では食品衛生に関する責任者として「食品衛生責任者」がいるが、「食肉製品製造業」など一部の製造業では、「食品衛生管理者」の設置が必要な点にも注意が必要だ。いずれのケースも、まずは管轄の保健所に相談することから始めて欲しい。

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賞味期限やアレルゲンの表示が必要

調理した食品をインターネットで販売する場合は、店内でお客さんに食べてもらうときとは異なり、食品表示法に基づいた食品表示が必要だ。食品表示法により、保存方法、消費期限または賞味期限、原材料名、添加物、栄養成分などの表示が定められており、これらの情報をシール等に印刷し、商品パッケージに貼付しなくてはならない。

ネット販売では、アレルゲンの表示についても注意が必要だ。調理した料理をその場で食べてもらう店内飲食の場合、飲食店にはアレルゲンの表示義務はないが、ネット通販を行う場合は事情が異なる。容器包装された加工食品については、食品表示法でアレルゲンの表示が義務付けられている。

アレルゲンの表示が必要になるのは、原材料に特定原材料である、えび・かに・小麦・そば・卵・乳・落花生の7品目が含まれているときだ。また、特定原材料に準ずるものとしてアーモンドや大豆、くるみなどが指定されているが、こちらの21品目については表示義務はなく、表示の推奨としている。

どこで販売を始めればいい?

飲食店がネット通販を始める場合、主に自社サイトを利用する方法とモール型ECサイトを利用する方法がある。それぞれにメリット・デメリットがあるため、一概にどちらが良いということは言えない。以下にそれぞれの特徴を挙げていくので、自分の店舗に合った販売方法を選択して欲しい。

■自社サイトで販売
自社サイトで販売する場合は、イチからシステムを構築できるため、オリジナリティを出しやすい点が魅力だ。しかし、モール型ECサイトと比べると集客が難しく、売上を確保するには、SEO対策やSNSを使ったプロモーションなど積極的に集客を行っていかなければならない。

■モール型ECサイトを利用
モール型ECサイトとは、「amazon」や「楽天市場」、「Yahoo!ショッピング」などに代表される、複数の通販ショップが集まったサイトのこと。自社サイトとは異なり、すでに利用している人がいるため、集客にかかる手間が少ない。一方で、初期費用や販売手数料などがかかるなど、費用面での負担がある点は注意が必要だ。費用については、モール型ECサイトごとに異なるため、事前の比較・検討が欠かせない。

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中小企業が新たにネット販売を始める際に活用できる補助金

以下は、事業者が新たにネット販売を始める際に、使える可能性がある支援制度。応募要項の条件などを確認たうえで、あてはまる場合は大いに活用してほしい。

事業再構築補助金
ウィズコロナ・ポストコロナの時代に思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金。新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編などの取り組みが対象。

補率額:最大1億円
補助率:最大3/4
※第5回公募は、令和4年1月中に開始される予定

ものづくり補助金
中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、ビジネスモデルへの転換を行う事業者を優先的に支援する「新特別枠(低感染リスク型ビジネス枠)」は9次締切が最終。

〈9次締切〉
補助上限:最大3,000万円
補助率:最大2/3
応募締切:令和4年2月8日17時

自治体の支援も上手く活用し、ネット通販を始めよう

自治体の中には、新型コロナウイルスの影響でインターネット通販を始める飲食店が利用できる助成金制度を設けているところもあるのでチェックして欲しい。例えば、東京都の「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)事業」は、その一つだ。新型コロナウイルスの感染拡大により、テイクアウトや宅配を始める飲食店への支援策だが、自店舗で製造した料理を自社サイトで販売する場合も助成対象となる(なお、同事業の申請受付期間は、令和3年12月31日から令和4年3月31日へ延長されている)。

また、大阪府茨木市の「ECサイト活用等支援補助金」は、インターネットを通じて国内及び海外へ販路を拡大する市内の中小企業者・個人事業主を支援するため、ECモールへの出店費用やECサイトの導入費用、海外貿易に係るコンサルタント費用の一部を補助する制度。詳細は以下の通りだ。

補助上限:1企業につき20万円
補助率:対象経費の2/3
申請期限 令和4年3月30日(消印有効)

インターネットでの販売が成功すれば、新たな顧客を獲得することになる。コロナ禍だけでなく、収束後のお店の売上にも大きく貢献してくれるはずだ。自治体の支援策なども上手く利用しながら、インターネット販売を始めてみてはいかがだろうか。

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サトウカオル

ライター: サトウカオル

グルメ、ライフスタイル、ITとさまざまなジャンルの執筆を経験。現在は、ポップカルチャー系のウェブサイトでグルメ関連の記事を執筆中。趣味は、料理とネットサーフィン。ネットで気になった料理を自分流にアレンジして食べるのが最近のマイブーム。