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うどんの新境地に挑み人気店へ。大阪『青空blue』の業態づくりに迫る

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自家製粉石臼挽きうどん専門店『青空blue』の代表・松井宏文さん。2号店の大丸心斎橋店にて

大阪・淀屋橋に本店を構えるうどん専門店『青空blue』は、2014年のオープン以来、新進気鋭のうどん店として注目を集めてきた。

従来のうどんは麺の食感やのど越し、だしの風味などで語られてきたが、同店が提供しているのは、自家製粉の粗挽き小麦を使った、豊かな香りと甘味・旨味を感じられるうどんだ。これまでなかった“小麦の風味を楽しむうどん”を求めて多くのお客が訪れ、2019年には2号店として大丸心斎橋店がオープンした。

代表の松井宏文さんは、蕎麦の道に進みながら、自家製粉のうどんに可能性を感じて同店を構えた異色の経歴の持ち主だ。なぜ松井さんは新しいスタイルのうどんを提案するのか、その店づくりに迫る。

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『青空blue 大丸心斎橋店』

蕎麦の経験を積みながら、自家製粉のうどんに可能性を見出す

松井さんは蕎麦の道を志し、25歳のときに兵庫・芦屋の石臼挽き手打ち蕎麦専門店『土山人』で働き始めた。『土山人』は関西を中心に店舗展開するほか独立店も多く、関西の蕎麦文化を牽引してきた名店として知られている。

そこで自家製粉の技術を学び始めた松井さんは、使う蕎麦の実と製粉方法によって、出来上がる蕎麦の味が異なることに奥深さを感じていったという。そんなある日、蕎麦の実を買い付けに行った農家から小麦の実をもらったのが、松井さんが自家製粉のうどんを作るきっかけとなった。

小麦の実を手にしたのは初めてだったが、試しに石臼で挽き、ふるいにかけてキメを整え製麺してみると、蕎麦のような赤茶けたうどんが出来上がった。食べてみると、今までのうどんにはない味わいだったと松井さんは話す。

「小麦は無味無臭だと思っていましたが、自家製粉したうどんには小麦の香りを感じ、甘味や旨味があったんです。その味わい深さに驚き、自家製粉のうどん店をすればきっと伸びていくだろうと可能性を感じましたね。でも、当時の僕は手打ち蕎麦店として独立することを考えていたので、自家製粉のうどんは、そのうちどこかのうどん店がするだろうと思っていました」

その頃、関西では都心部に手打ち蕎麦を食べられる店がほとんどなかった。開拓していける魅力があったため、松井さんは技術を身に付けて独立し、都心部に手打ち蕎麦店を構えるというビジョンを描いていたのだ。

取材した大丸心斎橋店で、小麦の実を製粉する様子

一品料理とお酒も楽しめる、新しいスタイルのうどん店をオープン

その後、松井さんは『土山人』で約15年勤め、製粉や蕎麦打ちといった技術を身に付けるのはもちろん、新店舗のオープンやグループ全体の店舗統括に携わるなど、経営面での経験も積んだ。ところが独立を考えるようになったとき、時代は大きく変化していた。街に手打ち蕎麦店が数多く立ち並ぶようになっていたのだ。そこで、頭に浮かんだのが自家製粉のうどんだった。

「自家製粉のうどんは、幸いまだ誰も手を付けていませんでした。だからこそ僕が始めることで、例えば20年後に手打ち蕎麦と同じくらい知られる存在になるかもしれない。自分が美味しいと思ったものを広めていけるところに魅力を感じて、蕎麦ではなく自家製粉のうどんで独立することにしました」

関西のうどんはダシ、讃岐うどんはモチモチの麺が主役。そんな中で、小麦の豊かな風味が感じられるうどんを提案すると、新たな市場を開拓していくことができる。また、松井さんは独立オープンするにあたって、メニュー構成や内装も、ほかのうどん店とは一線を画すスタイルを築いた。

「手打ち蕎麦店みたいに、食事しながらお酒も楽しめる粋なうどん店を作りたくて。昼はセットメニューや単品ですが、夜は一品料理とお酒を楽しんだ〆にうどんを食べるというスタイルを提案しています。自家製粉の粗挽き小麦を使ったうどんは、日本酒とよく合うんですよね」

さらに、器や店内の設えにもこだわりが光る。淀屋橋本店・大丸心斎橋店ともに、内装は和のテイストを基調としているが、そこにモルタルなどで都会的な要素を取り入れ、モダンな雰囲気にしている。そうすることで、若者から年配の世代まで幅広く集客することができているという。

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松尾友喜

ライター: 松尾友喜

和歌山の地元情報誌の編集部でパンの特集や連載、商品開発を手掛けるなど、“パン好き編集者”として活動。2018年に独立し、フリーランスのライター・編集者として、パンをはじめ食関連、旅と街歩き、インタビューなど幅広い分野で取材・執筆している。