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飲食店のDX・デジタルツール事情を取材。活用状況や導入のメリット、効果的な導入事例

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効果的なツール導入は経営課題の見直しから

デジタルツールの活用にはメリットがたくさんある。とはいえ、結局どんなシステムを導入すれば良いかわからないという店舗も多いだろう。

実際、「コロナ禍(2020年4月以降)の経営課題とデジタルツールで解決したい課題」を聞いたアンケートでは、コロナ禍の経営課題として「売上UP」(63.3%)、「利益(率)UP」(39.9%)、「顧客満足度向上」(25%)が挙げられているが、「デジタルツールで解決したいと考えている経営課題」を聞くと「解決したい経営課題がない」が57.9%と過半数に。多くの飲食店経営者は、経営課題をデジタルツールで解決できるとは考えていないようだ。

コロナ禍以降の経営課題(左)と「デジタルツールで解決したいと考えている経営課題」(右)

では「コロナ禍の経営課題」を解決したいと考える場合、どんなツールが有効なのだろうか。アンケートでトップ3になった課題の解決策を聞いた。

「まず『売上UP』の手段の一つとしては、セルフオーダーシステムの導入が有効です。ある店舗ではシステムを導入、活用した結果、客単価が平均で200円ほど上がったという事例もあります。飲食店でなかなか店員が来ないと注文をあきらめる方も多いほか、店舗側もすぐ注文を取りに行けない場合もあり、結果注文機会のロスが起きてしまう。セルフオーダーはそのロスを無くす役割を果たしてくれ、自然と一品、二品と追加注文を増やすことができているようです」

ちなみに、セルフオーダーは注文を受けるスタッフを減らせるので、人件費の削減につながり、2番目に多い経営課題とされる「利益(率)UP」も期待できるという。一方、3番目に多い課題「顧客満足度向上」を解決する手段としては「そもそもデジタルツールを使うこと自体が、顧客満足度アップに繋がるものもあると考えています」と久保田さんは話す。

「コロナ禍においてキャッシュレス決済などの非接触サービスの導入はお客様に安心していただけますし、デジタルツールで業務を削減し、空いた時間でお客様とコミュニケーションを取る、テイクアウト・デリバリーにお礼の一言メッセージを添えるといったこともできるかと思います」

画像素材:PIXTA

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さらに、効果的にデジタルツールを導入している店舗の事例もうかがった。

2020年10月にオープンした『モンスタービーフ 豊洲店』はお店の決済サービス「Airペイ」、オーダーエントリーシステム「Airレジ ハンディ セルフオーダー」、シフト管理サービス「Airシフト」など複数のデジタルツールを導入。非接触サービスによる感染症防止対策、経営コスト削減が目的だったという。

特に同店が重要性を感じたのは、セルフオーダーシステム。導入前は5人のスタッフで営業を回していたが、導入後は3人で済むようになった。また、常にホールにいる必要がなくなったので、その時間をテイクアウトやデリバリーの対応に充てられているそうだ。

あるいはシフト管理サービス導入により、一連のシフト作成の手間がカットされ、もともとかけていた時間の1/3程度に抑えられるようになった。現在は削減した時間を活用してお客へのサプライズを仕掛けるなど、顧客満足度獲得のために時間をかけている。

丁寧に描かれたバースデープレートはお客に喜んでもらえるサービスの一つ。時間の余裕がサービス向上に繋がっている

さらに、経営改善としてスタッフのオペレーションも改善。以前はキッチン・ホールで業務を分けていたが、セルフオーダーシステムの導入でホールの作業が減ったことを踏まえ、持ち場を分けずに臨機応変に働けるように指導や調整を行ったという。業務別にシフトを組む必要がなくなったのでシフト調整がスムーズになったほか、スタッフもできることが増えて視野が広がり、従業員満足度アップへと繋がった。単なる効率化だけではなく、気持ち良く働くためのヒントもまた、デジタルツール導入にはある。

まずは調べるところから。導入ハードルを下げるには

飲食店は仕込みから営業まで忙しく、特に少人数やワンオペで営業している場合は導入の手間に尻込みしている店舗も多いだろう。しかし、自店の経営課題に合わせたデジタルツールの導入は、効率化はもちろん、経営者や従業員、そしてお客にも良い影響を与えられる可能性がある。「まずは調べるだけでもチャレンジしてみていただきたい」と久保田さん。

「ネットで調べるのでも、私たちのようにサービスを提供している企業にお問い合わせていただくのでもいいと思います。今は導入に不安を感じる方も多いかもしれませんが、将来的にはデジタルツールの活用が“当たり前”になっていくのではないかと考えています。例えば飲食店のネット予約も、開始当初は『ネット予約の管理なんてできない』という声が多かったものの、今では当たり前のツールとなりました。時間がかかるとは思いますが、サービスを提供している我々としても、過去の経験も活かしてサービスを改善し、飲食店の皆様の不安を取り除けるようサポートしながら、飲食業界の活性化をしていければと思います」

昨年から長引くコロナ禍の影響に、まだまだ飲食店は苦しめられ続けている。困難な状況を打開する一手として、デジタルツールの導入は有効といえるだろう。「自分には向いていない」「デジタルツールで解決できることはない」と感じる人も、まずは自店の経営課題を見つめ直し、それらを解決できるデジタルツールを探ってみてはいかがだろうか。これまで気づかなかった、思わぬ発見があるかもしれない。

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。