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10月1日から「最低賃金」の引き上げが開始。飲食店に重くのしかかる人件費増

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10月1日より順次、全国の都道府県で最低賃金の引き上げが行われている。今年度の引き上げ額は全国平均で31円と、2年連続で過去最大の上げ幅となった。原材料高騰による食品の値上げラッシュに続き「人件費」も上がるとあって、飲食店経営者にとっては頭の痛い問題となっている。

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10月1日より各都道府県で最低賃金が改定。「目安額」以上の引き上げも

最低賃金(地域別最低賃金)は、厚生労働省の審議会での議論を経て決められる。都道府県を経済状況ごとにランク分けし、最低賃金の引き上げ額の目安をそれぞれ提示。実際の引き上げ額は、その目安をもとに各都道府県ごとの最低賃金審議会で審議し改定される。

各都道府県が決定した引き上げ額は、厚生労働省が提示した目安額である30~31円と同じか、都道府県によっては1~3円上乗せされる結果となった。これにより全国の加重平均(全国の最低賃金を都道府県ごとの労働者数で重み付けして平均した額)は961円となる。すでに全国で改定が始まっており、10月20日にはすべての都道府県で改定される見通しだ。

▼【参考】厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

30円の上げ幅は、年収にして1名あたり約6万円の差に

では、時給にして30円という引き上げ額は、実際の給与にどれくらい影響を及ぼすのだろうか。東京を例にとって考えてみよう。

フルタイムで働いたと想定し、時給×8時間×20営業日で試算すると、昨年の最低賃金である時給1,041円での月給は166,560円。最低賃金改定後の時給1,072円での月給は171,520円となり、その差は約5,000円。年収ベースでは約6万円ほど増える計算になる。

時給30円の差は小さいように感じるが、年間で考えると決して少なくない額だ。この負担が従業員の数だけ増えると考えれば、飲食店経営への影響はかなり大きいと言えるだろう。

従業員の賃金見直しに活用できる助成金

最低賃金の引き上げに伴い、従業員の給与見直しを迫られる飲食店も少なくないだろう。その際に活用したいのが、厚生労働省による「業務改善助成金」だ。

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを図るための制度。一定額以上、事業場内最低賃金の引き上げをし、生産性向上のために機械設備やコンサルティング導入、人材育成などを行った際の費用の一部を助成する。

従業員の最低賃金を引き上げた分、業務効率化を図り、全体の人件費を圧縮しようと考える経営者は多いだろう。たとえばこの助成金を活用して洗い場に食洗機を導入すれば、従業員の作業時間は減り、最低賃金を上げたとはいえ結果的に人件費の削減につながることもあり得る。

ほかにもスタッフの教育、レイアウトの改修など、業務効率化を目的とした幅広い投資が対象になるので、賃金の引き上げを予定している店舗は同助成金の活用を検討してみるといいだろう。当サイトの下記記事でも詳しく解説しているので併せてご一読いただきたい。

▼飲食店の賃金引き上げを支援。時給アップとともに活用すべき「業務改善助成金」

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【注目記事】コロナ禍における飲食店の雇用状況は? 正社員では過剰感も、アルバイトは不足の声

昨今の原材料の高騰に加え、今回の最低賃金の引き上げは、飲食店にとって頭を悩ませる大きな問題だと言えるだろう。政府は経済対策を反映した2022年度第2次補正予算案を編成し、10月下旬には秋の臨時国会に提出するとしている。飲食店にとって大きな負担となっている物価や人件費に対してのさらなる打ち手を期待したいところだ。

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ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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