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経済アナリスト森永康平氏が語る「2022年の飲食業界」。来年の物価や外食需要の見通しも

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経済アナリストの森永康平さん

政府は年末年始の行動制限を要請しない方針を発表したが、依然続く新型コロナの感染拡大、そして燃料費や物価の上昇と、今年も飲食店はさまざまな問題に悩まされた。今回はそうした2022年の日本の経済状況と、それらが飲食店に与えた影響について解説してもらうべく、経済アナリストの森永康平さんをオンラインで取材。2023年の見通しについても語っていただいた。

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森永 康平(もりなが・こうへい)
株式会社マネネCEO/経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。その後、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。現在は複数のベンチャー企業の経営にも参画。

2022年はオイルショック以来の物価上昇

■ウクライナ侵攻、新型コロナ、円安などの影響に悩まされた一年
――まずはおさらいも兼ねて、2022年の日本の経済状況についてお聞かせください。

「経済的な部分では物の値段が上がったということが一番大きかったのかなと思います。燃料や穀物の価格が高騰しているのは、ロシアのウクライナへの侵攻の影響がやはり大きく、ロシアやウクライナから輸入できなくなった国が日本の販路にまで手を伸ばしてきて、取り合いのような形が起こってしまったことがひとつの原因です。

ほかには、輸入価格が上がった影響もあります。2020年に新型コロナウイルスによるロックダウンを行った欧米諸国では、動かせない工場に勤める人たちを解雇しました。アメリカを例に出すと、その時手厚い失業給付金が出たことで働かなくなる人が出てきたり、株や仮想通貨で一山当てる人などが増えてしまった。そのため、いざロックダウンが明けて再稼働をする際には、従来より時給を上げないと人が集まらない状況になりました。それが物の売値の上昇につながり、欧米から輸入する日本は割を食っています。

また、中国のゼロコロナ政策で半導体や機械の細かい部品が出荷されず品薄になったことも値上げの追い風になっています。日本は海外から輸入する場合、円安になればなるほど払う金額は多くなるので円安の影響も大きいですね。

このようにウクライナ侵攻、新型コロナ、円安などの要素が複合的に絡み合って物価が上がってしまった一年となりました。今年はオイルショック以来、40~50年ぶりの物価上昇が起きたいうことはデータから見ても間違いない表現だと思います」

画像素材:PIXTA

■ライフスタイルの変容に加え、実質賃金のマイナスも外食需要の低下に
――読者の皆さんも実感していると思いますが、こうした経済状況が飲食店に与えた影響にはどのようなものがありますか?

「今年に限った話ではなく少し前からになりますが、コロナ禍でほぼすべての飲食店が業績を落としました。例外的にテイクアウトやデリバリーと相性がいいファストフードはすぐに盛り返しましたが、基本的には現在もコロナ前の水準に戻っている店舗は少ないです。私が取材したある居酒屋さんは、時期によっては売上が従来の10分の1くらいの日もあるようで、この先どうしようか悩んでいるという話も聞きました」

――そんななかで今年のような経済危機が起きてしまったと。

「10月時点のデータを見てみると、実質賃金は7か月連続で前年同月比の伸び率がマイナスになっています。ただでさえコロナ禍で生活習慣が変わって飲食店に行く機会が減っているところに、実質賃金のマイナスでさらに外食する余裕もなくなっている方が多いと思います。店側の仕入れやランニングコストはもちろん、人手不足によって人件費も上がっているのに、お客さんは減っているという最悪なパターンですね」

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36