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東京で、地方で、ベトナムで快進撃。コジマ笑店が実証する「繁盛店を生む奥義」

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高円寺『米のこじま』の立ち呑みスペースで、「米屋のハイボール」(550円)を傾ける小嶋崇嗣さん

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吉祥寺『呑・喰・燃じぃま』、高円寺『CRAZY×COENZYまんまじぃま』など、この10年あまりで都心に数々の人気店を生んだ株式会社コジマ笑店。近年は青森や高知、沖縄などにも展開して、幅広い出店攻勢をかける。

ここ1年では、新たな業態に挑んだ高円寺『米のこじま』のオープン、人気店の渋谷『酒呑気まるこ』移転、ベトナム・ホーチミンでジンギスカン店の共同出店などがあり、話題に事欠かない。独立13年目を迎えて波に乗る小嶋崇嗣代表に、あらためて「繁盛店を出すコツ、続けるための仕組み」を聞いた。

【注目記事】居酒屋ヒットメーカー・小嶋崇嗣氏の新店『座魚場 まるこ』の全貌

働き方のトライアル、地方の拠点づくり

数々の繁盛店経営者を輩出している楽コーポレーションで、バイト時代を含め14年近く修業した小嶋さんは、2011年に独立。吉祥寺に『呑・喰・燃じぃま』を出店した。気づけば、修業時代に迫る年数を経営者として過ごしている。

JR中央線「高円寺」駅改札から1分。ジェイアール東日本開発が手がけた「高円寺マシタ」は、高架下に9店が連なる飲食街区。角地にある『米のこじま』は2023年3月オープン

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現在は国内に9店舗、ベトナムに共同経営の1店舗を展開、着実に拠点を増やした。目を見張るのは、いまだ1店舗も閉店していないことだろう。

社員は28名、スタッフ55名ほどの企業となった現在(2024年5月)。社員の産休制度なども整え、年間約100日の休日がある働きやすい職場を誇りつつ、その影響を「昔のFL比率は人件費が25%ほどだが、今は30%以上になった」と小嶋さんは表現する。

従業員の定着率が高いため、平均年齢も徐々に上がった。アルバイトから登用した社員も多い。「高齢化したスタッフが新しい働き方をしようと、昼と夜、どちらもメインにする『米のこじま』をオープンさせたのです」(小嶋さん)

2方向に入口があり、通りに面したサイドはスタンディングスペースになる(張り出した面積にも賃料を支払っている)

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『米のこじま』のコンセプトは「精米店が営む、呑める食堂」だ。夜の営業でもしっかりした定食、ご飯ものを提供する。

「同じ空間に、米を食う人いれば、酒を呑む人もいるのが理想です。歳を取ってからも回せる、こうした業態を広げたいと考えています。例えばホテルの1階、駅ビルなどにいい物件があれば、朝からやってもいいですよね。夜の居酒屋に限定しなければ、新しい雇用も生み出せるでしょう」

『米のこじま』のランチメニューは1,200円から2,000円。同時間帯の周囲店舗より高価格帯だが、価格競争に乗ってクオリティを下げることはしない。札を取ってオーダー、好きな小皿を1品選べる

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もうひとつ力を入れるのが、地方都市での出店だ。現在、八戸に2店舗、高知と那覇に1店舗ずつ、計4店を運営しており、小嶋さんは最初に八戸へ出店することになった経緯をこう説明する。

「八戸『炉端酒場 だぃつ』の初代店長は、東京で働いていたスタッフです。そもそもの始まりは、彼から『母が倒れたので、看病と介護のために八戸の実家へ帰らざるをえなくなりました。働く場所も少ない街なので、飲食を離れることになると思います』と言われたことでした。彼は飲食業の才能もあったので、もったいない。それなら新しい店を出して店長として任せ、会社を続けてもらうことにしました」

コジマ笑店が進出した八戸、高知、那覇の3都市とも実はスタッフの故郷。このように、小嶋さんの新店計画は「人ありき」で進むことが多い。

「出店セオリーや経営ノウハウより、力を付けて店長を任せられるスタッフが育ったら、その子に合わせた最適な方法を一緒に考えるのが大事です。これまでに何をやってきたか、これから何をしたいのか。そこから客単価や接客、名物料理のコンセプトを導きます。つまり、食材を活かすのと同じ考え方です」

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神吉弘邦

ライター: 神吉弘邦

経済誌『Forbes JAPAN』、デザイン誌『AXIS』、建築誌『商店建築』、カルチャー誌『BRUTUS』などに寄稿するフリーランス編集者。コロナ禍で飲食店のありがたさに気づき、料理の奥深さにも開眼。メディア取材や企業コンサルティングのかたわら、現在「あて巻き」発祥の寿司居酒屋でも修行中。実家は仕出し屋。