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明大前『ハイチャイナセカンド』永澤氏と振り返る、居酒屋ビジネス10年の変遷

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代表の永澤淳氏。『ハイチャイナセカンド』は、同じく明大前の『魚酎(うおんちゅう)』に続く2店舗目

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2014年から西永福で愛されてきた鉄板中華『ハイ‼チャイナ』。2023年、建物の老朽化の影響で明大前に移転し、『ハイチャイナセカンド』としてリニューアルした。

楽コーポレーション出身の店主・永澤淳氏が、「鉄鍋を振らない、新しい中華料理」というコンセプトで始めた同店。今ではすっかり人気ジャンルとなった“中華×ワイン”という組み合わせを、10年前にいち早く始めた先駆者でもある。

オープンからちょうど10年、今回のリニューアルを機にどのような工夫を行ったのか? ここ10年の居酒屋業界の移り変わりを振り返りながら、永澤氏の狙いを聞いた。

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ナチュラルワイン、スパイス、低アルコール。時代は健康を求めている

「この10年で最も変化を感じるのは、お客様の健康意識の高まりです。口にする食べ物や飲み物は自然由来で体に良いものが好まれますし、大皿を囲むときには取り箸を使うなど、感染症対策を意識した食事マナーが慣例化したと思います。リニューアル出店するにあたり、店舗デザインから、メニュー内容、盛り付け、オペレーションなど、さまざまな角度から時代に合わせた変更を行いました」(永澤氏、以下同)

10年前では珍しかった“中華×ワイン”の組み合わせ。当時はスパークリングワインを売りにしていたが、リニューアルを機にナチュラルワインに変更した。ナチュラルワインは価格帯が高く居酒屋業態には不向きに思えるが、リーズナブルでおいしい銘柄を見つけ、それを日本酒の盛りこぼしのように、小皿に乗せたグラスに溢れるほど注いで提供している。

「“掟破りのこぼしワインやります!”と、謳って始めました。すいすいと飲みやすいということをわかりやすく、そして提供のパフォーマンスも楽しんでもらいたい、という狙いです」

王道中華とは一線を画し、つまみメニューが豊富。移転後は『魚酎』と仕入れを共有できるメリットを活かし、魚を使った料理を増やした

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同じく健康志向を背景に、新メニューの開発にはスパイスを取り入れた。名物料理は「スパイス香る〜牛すじ煮込み麻婆豆腐」。スパイスが持つ発汗作用とその後に訪れる副交感神経が優位になる感覚は、同じくこの10年で愛好家が急増したサウナの“整う”感覚に似ているのだと言う。料理にはなるべく化学調味料を使わず、白砂糖からきび砂糖に変更するなど、食材への配慮も忘れていない。

「スパイスは料理だけでなくドリンクでも大変好評です。梅酒作りの要領で漬け込んだオリジナルサワーやクラフトコーラなどを充実させました」

店独自のレシピでここでしか飲めない特別感を出すことも、この10年のトレンドだ。また多様性を受け入れる社会意識の変化から、低アルコールやソフトドリンクに力を入れる店も増えている。経営の面から見れば、仕入れた飲料をそのまま提供するよりも利益を出しやすく、追加オーダーにつながりやすいというメリットもあり、トレンド意識の高い店ほど取り入れている施策だ。

看板メニューの「スパイス香る〜牛すじ煮込み麻婆豆腐」(680円)と「花椒バタートースト」(1枚80円)。7種のスパイスで香り豊か、味わいは濃厚。パンとの相性も◎

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松本ゆりか

ライター: 松本ゆりか

東京でWebマーケターを経験した後、シンガポールへ渡りライフスタイル誌やWebメディア制作に携わる。帰国後、出版社勤務を経てフリーライターに。主に中小規模ビジネスや働き方に関する取材・執筆を担当。私生活ではひとり旅とはしご酒が好きなごきげんな人。