最低賃金「想定より上がった」約4割。飲食店経営者の意識調査で明らかに
10月1日から全国で最低賃金の引き上げが始まった。全国平均の引き上げ額は過去最大の50円で、時給の平均は1,055円となる。これを受け、「飲食店ドットコム」を運営する株式会社シンクロ・フードが飲食店経営者・運営者を対象に最低賃金に関する意識調査を実施。飲食店経営者の賃上げの受け止め方や、今後の賃金上昇に備えた対策が明らかになった。
■調査概要
調査対象:飲食店ドットコム会員(飲食店経営者・運営者)
回答数:368
調査期間:2024年9月12日~2024年9月18日
調査方法:インターネット調査
※詳しい調査結果はこちら
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最低賃金の上がり幅、約4割が高いと感じる
はじめに、全国平均の引き上げ額が過去最大の50円になったことについて質問。「想定より高かった」「想定通りの上げ幅だった」がともに38.0%で、「想定より低かった」は4.6%という結果だった。
画像を見る50円の引き上げは労働者の生活基盤を強くできる可能性があるため、評価できるものだが、想定より高い引き上げ額に飲食業界では戸惑いもうかがえる。
67.7%の飲食店は今後も最低賃金は同程度以上引き上がると予想
続いて、6年後の2030年に最低賃金がどの程度上がっているか尋ねた。一番多かったのは、「現行額+300円より高い額となる(年あたりアップ額は50円より大きい)」の34.8%だった。
画像を見る続いて「現行額+300円程度となる(年あたり平均50円アップ)」が32.9%、「現行額+300円より低い額となる(年あたりアップ額は50円より小さい)」は18.8%となった。現在の上がり幅が今後しばらく続くと見ている経営者が多いようだ。
最低賃金アップに理解を示すも、弊害を懸念
2030年の最低賃金を予想した理由には次のような意見があった。
<「現行額+300円より高い」と回答した理由>
・政府は「2030年代半ばまでに、全国加重平均1500円を目指す」という方針を掲げており、最低賃金引き上げに向けた動きが加速している。労働市場の変化や人手不足、インフレ率の上昇などの要因も加わり、今後の賃金アップはさらに大きなものとなる可能性が高い(東京都/焼肉/3~5店舗)
・少子高齢化は止まらず、働き手不足が加速されるから(東京都/居酒屋・ダイニングバー/1店舗)
・先進国の中では時給が低い為(大阪府/居酒屋・ダイニングバー/2店舗)
<「現行額+300円程度」と回答した理由>
・景気の鈍化、中小企業の反対など政治的な理由により、極端な値上げは実現できないと思うから(東京都/フランス料理/1店舗)
・日本はそこまで急に大きく上げると、政府が叩かれるのでちょっとずつ少額上げ続けると思う(東京都/フランス料理/3~5店舗)
・年間50円でも正直高いと思うが、現状の政府の方針だとこのようになるのかな、と思った(福岡県/ラーメン/1店舗)
<「現行額+300円より低い」と回答した理由>
・今回の上げ幅が大きいため、連続で行うと色々弊害が出ると思う(埼玉県/イタリア料理/6~10店舗)
・失われた30年を取り戻そうとしているのは分かるが急過ぎる。従業員の賃金を上げたいとは思っているが、希望を込めて(愛知県/カフェ/1店舗)
・個人店ではこれ以上に上がれば雇用が出来なくなるから(大阪府/鉄板焼き・お好み焼/1店舗)
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約60%が「商品の価格変更」、「仕入先の見直し」などで今後の賃金上昇に備える
今後の賃金上昇に備えた対策を実施しているかどうか尋ねたところ、「既に実施している」が14.1%、「実施していないが、考えている」は46.2%であった。約60%が対策に積極的であることがわかる。
画像を見る「既に実施している」、「実施していないが、考えている」と回答した方に具体策を聞いたところ、「商品の価格変更」(84.7%)、「仕入先の見直し」(33.3%)、「水道光熱費の節約」(27.5%)となった。1位と2位以下に大きく差が生じたことからは、経営者の多くが価格変更の必要性を強く感じていることがうかがえる。
飲食店経営者が見る、今後成功する飲食店
最後に、賃金上昇が続く中、どんな飲食店が成功するか意見を求めた。「高単価、高品質」「高付加価値」といった対顧客の取り組み以外に、「従業員の待遇を手厚くする」「スタッフ教育を大切にする」、そして「DX活用」「人件費のかからない運営」という声もあった。
業態にしっかりとマッチする店舗経営の軸を据え、ブレずに経営を進めていくことが、今後ますます飲食店には求められそうだ。