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三軒茶屋『大衆酒場ひので』も月商450万円。人たらし店主が目論む「10店舗10業態」の真意

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定番の「銀皿焼き鳥(タレ)ねぎま」(580円)。ハンバーグのソースと同じ継ぎ足しのタレを使用(写真提供:たいようグループ)

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人たらし店主ならではの人材獲得への熱烈ラブコール

もちろん、吉村氏は勢いだけで多店舗展開をしているのではない。一店舗を「自由」に任せるほど全幅の信頼を置く社員と、Win-Winの関係を築けるからこそ、次の一手を打てるのだ。「お金はどうにかなることは、これまでの経験から分かりました。一番大事なのは『人』です」と吉村氏は語気を強めて言う。

吉村氏が独立を志したのは、「好きな人と一緒に働いて儲けたい」という純粋な思いがあったから。そのため人柄も含め一度気に入った料理人には、「お前のことが好きだから一緒に働こう」とストレートな物言いで、とことんアプローチをかける。

「幸いなことに、それで高卒から居酒屋で働いていた優秀な人とか、割烹出身の職人などが自分の目標に乗っかってくれました。この業界にはオーナーが決めたオペレーションにがんじがらめになって、くすぶっている料理人が多いと思います。そういう人を探して好きになったら、すぐ声をかけます」

『大衆酒場ひので』の店長・高井純太氏もその一人。和食と中華の居酒屋で働いた後、銀座のスペインバルに勤務していた高井氏は、吉村氏の後輩の友達という関係だった。それで『酒場たいよう』のオープンの際に後輩が店に連れて行ったところ、「愛されキャラ」な性格にもほれ込んで勧誘。「バルの営業後、帰宅してから、毎日2時間以上の電話で口説かれましたよ」と、取材時に隣で仕込み作業をしていた高井氏は苦笑いを浮かべる。

深夜5時まで営業。「これから出店する街にも必ず一つは深夜営業の店を出したい」(吉村氏)

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15歳で門を叩いた福岡の割烹料理店での下積み時代からイタリアンを経て、21歳で上京しステーキ&バー、ワイン酒場などを渡り歩いてきた吉村氏は、若くして目が肥えた人材の目利き。プラス、「昔から物事をはっきり言えるのが、おまえのいいところと先輩から言われる」という、表裏のない天性の人たらしである。さらに人生の教訓とする「律儀」を忘れない。若き経営者の周りに有能な「人」が集まるのも納得だ。

さらに、その輪は業者にも波及する。たいようグループでは、“幻の牛”と呼ばれる壱岐牛を吉村氏の知り合いの生産者から、高級魚を高井店長の地元・新丸子の鮮魚店から、それぞれ驚きの安さで仕入れできる。

「類は友を呼ぶじゃないですけど、高井も僕に似て人たらし(笑)。業者の皆さんから、自然とかわいがられて応援してもらえるんです。これも『人』とのつながりを大切にしているからできる、うちだけの武器です」

たいようグループの成功要因の一つは、他店がマネしようにもマネできない人間力なのである。

『大衆酒場ひので』
住所/東京都世田谷区太子堂2-29-5 平和ビル1~3F
電話番号/03-6450-9394
営業時間/18:00~翌5:00(フードL.O.4:00、ドリンクL.O.4:30)
定休日/なし(月1回程度の不定休あり)
坪・席数/15坪・約40席(立ち飲み10~15席、テーブル12席、座敷15~18席)

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小林智明

ライター: 小林智明

埼玉県出身。情報誌の編集プロダクションを経て、2006年にライターとして独立。食、旅、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり取材・執筆活動を展開中。グルメ取材はラーメン店を中心に計500軒を突破。好きなお酒は辛口純米酒。