高円寺で月商750万円を売るスパイス居酒屋『この一杯のために。』が考える「10年続く店」
スパイス×居酒屋に勝算を見いだす
そんな“居酒屋”『この一』ならではの仕掛けはドリンクのラインナップにも表れている。「ホッピーカクテル」は、その象徴といえそうだ。自身のホッピー好きが高じ、「若い人にも飲んでほしい」と自家製のコーヒー焼酎や桃のリキュールとホッピーを合わせた一杯をビルドスタイルで提供するなど、ドリンクにも大きく力を入れる。
背景にあったのは、今あるほとんどのスパイス系の専門店が料理特化型であり「アルコールメニューが手薄だと感じることが多かったから」と柴崎氏。中華、タイ、ベトナム、インド⋯⋯、それら多くの料理店がドリンクをウリにしていないことに目をつけたというのだ。ユニークなドリンクを打ち出し、「スパイス料理と、オリジナルのうまい酒」の独自路線を構築できれば勝算はあると睨んだ。
「料理、お酒、接客、それぞれの面で、お客さまが電車を一本乗り継いででも来たいと思ってもらえるものをつくっていきたい」(柴崎氏)
「好き」がないと続かない。全ては持続可能な事業のために
開業から一年半、まだまだこれからだと語る柴崎氏は最後に、飲食業は初期投資の回収に時間がかかるからこそ、常に中長期的な視点を大事にしていると語った。飲食が好きでこの世界に入り、現在40代後半。「今世は飲食の世界に骨を埋めると決めている(笑)」と笑ってみせるが、自分の好きなことを誰かが共感・評価してくれて、それが生活源になるなら幸せだと話す。
「スパイスもホッピーも、自分が好きという初期衝動が根幹にあります。もちろんビジネスライクにトレンドを追いかける手もあるけど、それだとメンタル的に続かない。飲食業は体力も気力も必要でコスパもタイパも良いとはいえません。でも、料理やサービスを通して、お客さまの評価や反応を直接肌で感じられるのは、この上ない魅力だと思うんです」
リスクの回避、単価アップ、流動性と振れ幅のある店づくり、そして好きなことを表現する——、全ては「持続可能な飲食事業」を実現するための柴崎氏なりのスキームといえそうだ。今後は海外進出も検討中。国内外で互いに刺激し合いながら、人として成長できる会社になることで、優れた人材の確保、会社の成長、そしてスタッフやお客への還元につなげたいと語った。
2033年に『この一』やREQDグループ各店がどんな道を歩んでいるのか、引き続きウォッチしたい。
『スパイスと創作料理 この一杯のために。』
住所/東京都杉並区高円寺南3-70-2
電話番号/ 070-3131-6773
営業時間/ 12:00〜23:00(金・土は24:00まで)
定休日/不定休・年末年始
坪数・席数/22坪・約50席
