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「飲食店の人件費率30%」は妥当? 人時売上高から少数精鋭の人員配置を目指そう

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飲食店では慢性的な人手不足が課題となっている。人材を確保するためにやるべきことはいくつかあるが、雇用条件の見直しも重要なポイントのひとつだ。一方で、飲食店における人件費率の目安は売上の30%といわれているが、この数字は妥当なのだろうか。そこで今回は、飲食店経営者に向けた人件費率に対する考え方と、適切な人員配置を行うための方法について解説する。

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「人件費率30%」はあくまでも目安として考える

飲食店を経営して利益を出していくには、コストの管理が重要になる。いくら売上が高くても、コスト管理がしっかりできていなければ、利益幅は少なくなってしまうだろう。そのコストのうち、大きな割合を占めるのが人件費と食材費だ。一般的に、人件費は売上の30%以内に抑えた方が良いとされているが、この30%というのは目安であって絶対的な指標ではない。

そもそも、飲食店には「FLコスト」という指標があり、これを60%以内に抑えていこうとする考え方がある。FLコストは食材費(Food)と人件費(Labor)が売上に占める割合のことで、この目標(60%)を単純に半分にした数字が「人件費30%」の根拠となっている。つまり店舗のコストを調整するなら、「人件費を30%以内に抑える」ということだけに固執するのではなく、食材費も踏まえたFLコストの観点から人件費率を検討するべきなのだ。

なお、食材費と人件費は店の業態やコンセプトによっても異なる。高い原価の食材を扱うのであれば食材費が高くなるため、人件費をどうにかして抑えなければならない。逆に、人件費が高くなってしまいそうであれば、安価な食材を扱ってFLコストを抑えるという考え方もあるだろう。

しかし、人件費を売上の30%に収めることにこだわりすぎて、社員を昇給させなかったり、アルバイトのシフトを一方的に減らすなどすれば、従業員との信頼関係が崩れるだけでなく、現場の仕事の質を下げることにもつながる。では、どうすればバランス良く人件費を抑えられるのだろうか。

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人時売上高を指標に人員配置を検討する

はじめに、人時売上高を算出して人員配置を適正化する必要がある。人時売上高とは、従業員ひとりが1時間で生み出した売上を測る指標のことで、「売上高÷従業員の総労働時間」で計算できる。例えば、全てのスタッフの1か月の総労働時間が500時間で売上が200万円だった場合、人時売上高は4,000円となる。総労働時間が400時間で同じく売上が200万円だった場合では人時売上高は5,000円となり、時間あたりの生産性が上げられていることが分かる。

つまり、少ない労働時間で同じ売上だった場合は人時売上高は上がり、同じ労働時間で売上が下がった場合は人時売上高も下がることになる。まずは、アイドルタイムの人員が過剰になっていないか、ピーク時の人員は足りているかといったことを人時売上高の指標から見直してみよう。その上で、料理のクオリティーを下げずに調理工程を簡略化できないか、店舗のコンセプトから外れることなく一部をセルフサービスにできないか、といったことも検討してみるといいだろう。

ちなみに、人事売上高は高ければ高い方が一般的に良いとされているが、高すぎる場合は、人手不足に陥っている可能性があり、中長期的には従業員が疲弊して辞めてしまう、仕事の質が落ちて来客数が減る…といった事態につながることも考えられる。そのため、単に数値だけで判断するのではなく、現状をよく観察しながら継続的に人員配置を調整していくことが大切だ。

積極的なツールの活用で、少人数でも生産性を向上させる

人員配置を調整して人時売上高を向上させ、人件費を削減していくのは大切だが、ある程度の「時間」が必要になる。また、人員配置の調整だけでは人件費削減の限界もあるだろう。そこで、デジタルツールを活用した生産性の向上も検討していきたい。

例えば、モバイルオーダーの導入が考えられる。モバイルオーダーとは、スマートフォンやタブレットから注文できるシステムで、導入すればスタッフが注文を取る手間がなくなり、業務の効率化につながる。さらに、予約の受付や管理などを行える予約管理システムを導入すれば、自動で予約を受けられるだけでなく、予約情報の管理や事前決済も可能になる。予約の電話対応が不要になるのもメリットだ。

ただし、これらのツールを活用する場合は初期費用やランニングコストがかかることもあるため、削減できる人件費と導入費用のバランスを考えて検討する必要がある。

好きこそ物の上手なれ。長く活躍できる「飲食好き」のスタッフを獲得しよう

さらに、長期的に人件費の適正化を図るには、職場環境や雇用条件を見直し、長く活躍できるマルチプレイヤーを育てることが大切だ。マルチプレイヤーのスタッフはさまざまな業務に対応できるため、少数精鋭のチームで生産性の向上が期待できる。

スタッフの定着率を上げ、多角的に活躍できる戦力を育成するためには、何より「飲食業界が好き」、「飲食業界でスキルを身につけたい」と考えている人材を獲得することが重要だ。店舗と応募者の間で思い描く働き方のイメージにミスマッチがあると、いくら優秀なスキルを持った人材でも定着は難しい。飲食店専門の求人サイト「求人飲食店ドットコム」なら、飲食業界で働きたいという求職者が多く集まっている上、その90%以上は飲食店の勤務経験がある。さらに、店舗から求職者へ個別にスカウトメールを送ることも可能だ。月19,800円で1店舗の求人を何職種でも掲載できるので、求人活動の効率化にもつながる。採用に課題を感じている飲食店はぜひ利用を検討してみてほしい。

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富江弘幸

ライター: 富江弘幸

ビールライター、編集者。出版社などでライター・編集者として活動し、中国留学、英字新聞社勤務などを経てビールライターに。ビアジャーナリストアカデミー講師も務める。著書に『教養としてのビール』(SBクリエイティブ)。https://localandbeer.com