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『鶏soba座銀 神楽坂東京本店』が人手不足を解消した特効薬とは? ES向上が繁盛店の土台をつくる!

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『鶏soba座銀 神楽坂東京本店』の運営元、株式会社フルスイングCOOの加藤友樹さん

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人手不足や賃金上昇の問題に拍車がかかり、それを理由に廃業する店舗まで増えてきた飲食業界。アルバイトスタッフの確保に多くの経営者が頭を悩ませる状況下でも、順調に拡大を続ける店舗は一体どのような取り組みを行っているのだろう?

訪れたのは急成長を続ける大阪発のラーメンブランド『鶏soba座銀』の関東初進出店。関西だけで11店舗、海外で3店舗を展開し、2023年8月7日に進出したばかりの東京でも連日行列ができるほど多くのファンを集めている。高い評価の理由はラーメンの味わいだけではなく、高級レストランにも引けを取らない上質な接客という。その背景にはアルバイトを「集め、育て、個性を伸ばす」独自の仕組みがあった。

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壁を突破しなければ働き方は変えられない

「コンセプトに掲げているのは『大切な人を連れて行きたいラーメン店』です。そのために必要なのは、お客さまにラーメンを気持ちよく食べていただく、上質な時間を提供すること。それは味だけでなく、空間や接客も全てセットで含まれると考えています」と関西特有のイントネーションで話す加藤友樹さん。大前提として、東京で顧客を満足させる上質なサービスを提供するのであれば「1,000円の壁」を突破する必然性があると力説する。

「鶏soba」(並1,120円)など定番メニューでも「1,000円の壁」を突破する

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物価が上昇し続けている現在も「1,000円を超えるラーメンは高い」と感じる顧客心理、いわゆる「1,000円の壁」は根強く残る。しかし、それは『鶏soba座銀 神楽坂東京本店』には全くと言っていいほど当てはまらない。星3.61(2024年12月時点)と高評価を集める食べログの口コミ内容を見ても明らかである。

「器だけでなくレンゲまで温かい。こんなサービス初めて」
「味もおいしく接客も素晴らしいので、この価格でも納得」
「退店時に店員さんが挨拶に外まで出てくる。居心地の良いおもてなし」
「店員の笑顔の接客はもうホテルのレベル。高級レストラン並の満足度」

スープや麺が絶賛されているのは当然として、ここまで接客について語られるラーメン店は珍しいだろう。評価にともない客足も伸び続けており、1日100杯売れば繁盛店と言われるラーメン業態の中、平日で1日平均170杯、週末では230杯という高水準を保ち、客単価の高さから月商が1,000万円を超える月もある。

鶏豚鴨のチャーシューと燻製玉子が乗る人気メニュー「特製鶏soba」(並1,590円)

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こうして「1,000円の壁」を突破したことで確保した売上は、利益に回すことなくスタッフに還元していると加藤さんは明かす。

「いかにして従業員に還元するかが経営理念です。ES(従業員満足度)なしにはCS(顧客満足度)も上がりません。具体的には、きちんとした休憩時間があり、有給も消化でき、納得のいく給料が支払われる環境づくり。その中で仕事とプライベートの境目をしっかり分け、最大限のパフォーマンスを発揮してほしいと考えています。整えられた環境でお客さまにご満足いただけるサービスを提供すれば、仕事にやりがいも生まれるでしょう。そもそもラーメン店での仕事と言えば、あまり良い印象がないのが現状です。『少ないスタッフで回転数を上げる』という仕組みを変えるためには人件費を上げる必要があり、そのためには客単価を上げなければいけません」

現在は有給の完全消化を推進しながら、固定残業時間を下回るよう「残業させない環境づくり」にも注力する加藤さん。30時間の固定残業代をそのまま支給しつつ、残業を20時間程度に縮めるため「どうすれば業務効率を改善できるか」といったテーマで定期的なミーティングを実施しているという。

このように客単価を上げることで得た利益をスタッフに還元しつつ、上質なサービスを実現させ、顧客満足度の向上にもつなげるのが理想的な好循環。卵が先か鶏が先か、決して簡単な取り組みではないが、達成した先にこそ企業の成長があることを考えれば合理的な経営理念とも言える。

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佐藤 潮.

ライター: 佐藤 潮.

ミシュラン三つ星店から河原で捕まえた虫の素揚げまで、15年以上いろいろなグルメ記事を制作。酒場系の本を手掛けることも多く、頑固一徹の大将に怒られた経験も豊富だ。現在、Webのディレクターや広告写真の撮影など仕事の幅が広がっているが、やはりグルメ取材が一番楽しいと感じている。