坪月商40万円の水道橋『陽食』。ワインが売れる令和時代の新たな「洋食店」とは
シェフの実家は老舗洋食店。それが『陽食』の業態コンセプトにつながった
客単価は7,500円。アルコール売上比率は40%を確保するなど、さまざまな点で従来の洋食店とは異なる営業スタイルを打ち出しているわけだが、そうした業態コンセプトが編み出されたのは、守屋氏が『陽食』のシェフを務める田上陽平氏と出会ったことがきっかけになったという。
守屋氏はアパレル業界出身。2017年11月に岡山県岡山市内に餃子専門店『餃子世界』をオープンして独立し、2020年には東京に進出した。『餃子世界』はファッション性とカルチャー性の高い独特な世界観の餃子専門店で、岡山、東京に展開している2店はいずれも情報感度の高い層の支持を集めて大ヒットしている。
『餃子世界東京』が入居するビルに空きテナントがでたため、業態開発に乗り出したが、そのタイミングで出会ったのが田上氏だった。
田上氏は学芸大学のオステリアバル『リ・カーリカ』や代々木上原の『メゾン サンカントサンク』などの繁盛店で修業した腕利きのシェフだが、『陽食』の業態発想のきっかけになったのがその出自である。
田上氏の実家は熊本県熊本市内にあった老舗洋食店『洋食屋 てつ』。2019年に残念ながら26年の歴史に幕を下ろしたが、「シェフ自身が実家の味を何らかの形で残すことを望んでおり、なおかつ新たな商品の開発にも前向き。令和時代の洋食店にぴったりのシェフだったため、店名も田上陽平の名前からとって『陽食』としました」と守屋氏は業態開発の経緯を説明する。
コニュニケーションの場としての機能を重視した業態開発
守屋氏の業態づくりに共通するポイントは飲食店の持つコミュニケーションの場としての機能を重視する点にある。創業業態の『餃子世界』は餃子という身近な料理を柱にして音楽やファッション好きが交流できる酒場。『陽食』も洋食メニューをメインにして晩酌やちょい飲み、フルコースまでさまざまな利用動機を吸収できるようにすることにより、人の集う洋食店を目指した。
「そのためには料理が洋食に縛られすぎるのはよくない。シェフには『洋食という軸はぶらさず、そのうえで自由な発想で料理を考案してほしい』と伝えています」(守屋氏)
守屋氏の言う「洋食の軸」になるのが名物メニューの「厚切りポークジンジャーステーキ」と「とろとろオムレツのデミグラスオムライス」。デミグラスソースは『洋食屋 てつ』のレシピを下地にしているが、「『陽食』のオムライスは締めにもぴったりな軽やかさが特徴。じっくり煮込んだデミグラスソースにほどよい酸味があり、重たくなり過ぎずに最後のひと口まで楽しめる仕上がりです」と田上氏は言う。
単品12品のうちメインディッシュは4品を揃えるが、名物2品以外の商品はハンバーグ、ロールキャベツ、ミートソースなど洋食メニューをブラッシュアップした商品を季節替わりで投入している。
