大切なのは「人間としての繋がり」。渋谷『ペタロ』手掛けるダルマプロダクションの“人材哲学”
渋谷『Osteria Urara(オステリア ウララ)』や『Petalo(ペタロ)』、虎ノ門『Lampada(ランパダ)』など、全国に10店舗を展開する株式会社ダルマプロダクション。「同じ店は2度作らない」という難しい店舗展開を選択しながらも、どのお店もクオリティーが高く、繁盛している点が同社のすごさだ。
こうした店舗を次々と生み出すためには「優秀な人材の採用」や「店のクオリティーを担保できる人材に育成する」組織体制が不可欠だろう。今回、代表の古賀慎一氏に、同社が実践する採用戦略、人材育成について話を伺った。
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イタリアンを軸に、街と人に合わせたオンリーワンの店作り。その個性を支える人材戦略
2012年2月、メニューのないイタリアンレストラン『オステリア ウララ』を渋谷区猿楽町にオープンさせた、ダルマプロダクション。続く原宿の『ALA(アラ)』ではイタリア料理をベースに串焼き(スピエディーノ)にフォーカスした。さらに2014年オープンの『アカベコ』(中目黒)では、イタリア料理のボリートミスト(肉おでん)を日本酒と合わせる創作和食店という新たなコンセプトを打ち出す。その後も東京や横浜、福岡と出店を重ね、2025年5月30日には、浜松町の新複合施設『BLUE FRONT SHIBAURA』内にアンティパスト(前菜)に焦点を当てた新業態『Ortu antipasteria』をオープンさせるなど勢いが止まらない。
根底にあるのは、「イタリアンを軸としながらも、異なるコンセプトで多店舗展開を行う」という、まさに「個店主義」の精神だ。このような多種多様な店舗を成功に導き、それぞれの店が個性を放ち続けるためには、「画一的なマニュアルではなく、各店舗の特性を理解し、創造性を発揮できる人材が不可欠」と古賀氏。だからこそ、ダルマプロダクションの採用と育成には、独自の哲学が貫かれている。
チェーン店ではなく、マニュアルのない「個店主義」を徹底。スタッフに大幅な裁量権を付与
優秀な人材を惹きつけ、長く活躍してもらうためには、彼らが安心して働ける魅力的な環境が不可欠だ。ダルマプロダクションでは、業界水準以上の待遇や育成体制の充実に力を入れるのは当然のこと、「個店主義」の徹底が、他社にはない際立った特徴となっている。
「いわゆるチェーン店には見えないような店づくりを、何よりも大切にしています。例えば、メニュー開発。これは基本的に各店舗の店長や料理長に大幅な裁量権を与えています。私が試食をして、細かく指示を出すようなことはありません。自分たちが本当に良いと信じる食材を仕入れ、お客さまに喜んでもらうためのメニューを考え抜く。それこそが、一人のオーナーとして店を切り盛りする能力を養う上で、不可欠だと考えています」
この明確な方針が、スタッフの自主性と創造性を最大限に引き出す土壌となっている。「会社として将来どうなるか、といった大きな話に過度にこだわるよりも、『3年後には自分の店を持ちたい』とか、『この会社で自分の力を試してみたい』といった、個々の具体的な目標や熱い思いを持った人材が、うちでは生き生きと活躍できますね」と古賀氏は続ける。
また、古賀氏自身がメディアの取材に積極的に応じるなど、会社の顔として表に出ることもいとわない。それは、会社の透明性を高め、働く側、そしてお客、将来の仲間となる求職者に対して安心感を醸成するためだ。
「優秀な人材を獲得するには何よりも、個々の店舗が良い状態であること、これに尽きます」。その信念のもと、会社としての確固たる姿勢を内外に示し続けている。
