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三軒茶屋の居酒屋『酒羅場』が20代女性に愛されるワケ。女性客比率80%で坪月商47万円!

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「『満席で入店を断られた』というストレスを軽減する」(小林氏)ために「満席」「空席」を知らせる電光掲示板を店頭に設置

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サービス施策のキーワードは「ストレスフリー」

一方、サービス面における施策に共通するキーワードが「ストレスフリー」だ。『酒羅場』はお客と距離をおいた接客スタイルを採っているが、小林氏はその理由を次のように説明する。

「経験則として、20代のお客さまは『居酒屋で接客されたくない』という傾向が強いように思われます。『構われたくない』といった方が適切かも知れませんが、スタッフの声掛けは必要最低限で十分。僕自身は長く居酒屋を経営してきましたから、お声掛けをしたくなるシーンも多いのですが、自分のペースで楽しみたいお客さまにとっては過度な声掛けもストレスになるみたいです」

ただし、「サービスレス」というわけでは決してない。

『酒羅場』はモバイルオーダーを導入しているが、それを前提として小林氏は「座席案内時」「おしぼりの提供時」「商品提供」「退店時」という4つの接点における「合格点のサービス」を実践できるようにスタッフを教育しているという。

座席案内であれば、お客が入店したら元気に挨拶をし、予約を確認して座席のすぐ脇までスタッフが案内する。退店時であれば、会計時にお客が支払いの準備ができたらすぐに席にうかがい、席を立ったら大きな声で挨拶する。基本的なことだが、「お客さま、スタッフの双方にとってストレスにならない凡事徹底こそが重要」(小林氏)なのだという。

安心を生み出す「声かけ・ナンパの通報」ボタン

また、『酒羅場』のモバイルオーダーには「声かけ・ナンパの通報」ボタンというユニークなメニューが用意されており、その導入もストレスフリーが狙いだった。

モバイルオーダーの目立つ位置に表示された「声かけ・ナンパの通報」ボタン

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このボタンが導入されたのは3年ほど前だが、「男性グループに声をかけられた女性グループが退店された後、女性の恋人から苦情の電話がきた」(小林氏)のがきっかけだったという。

若い女性がメイン客層の居酒屋だと、男性グループが隣席の女性グループに話しかけるというケースも発生しやすい。状況に応じてスタッフが対処していたため、店内でトラブルに発展することはなかったが、苦情の電話をきっかけに「楽しく話しているように見えても、実は困っているケースもあることに気づきました」と小林氏は振り返る。

実際に通報ボタンが押されたことはこれまでに一度もない。しかし、このボタンが「ナンパ禁止」のメッセージになってナンパの抑止になり、それが女性客の安心感にもつながっている。

あえて客数を抑える新予約システムを導入

『酒羅場』の客単価は3,100円。17坪35席の規模で月商800万円を弾き出しているが、「これはあえてセーブした売上」(小林氏)だというだから驚きだ。

「月商が1,000万円を超えたこともありますが、その時の1日平均客数はおよそ130人。客席が1日3.5回転するわけですが、そこまで混雑すると、お客さまにも、スタッフにもストレスになるトラブルが発生しやすくなります。そこで客数をコントロールするために予約システムを見直しました」

写真はInstagramの予約案内のリード画面。予約は電話のみに限定している

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1年ほど前に導入された新しい予約システムでは、1回転目を17時、17時30分、18時、18時30分、2回転目を19時10分、19時40分、20時10分、20時40分とそれぞれ30分おきの4段階に分けて予約を取る仕組みを採用している。

予約を分散することで、ファーストオーダーが短時間に集中しないようにし、商品提供の遅延を避けることが第一の目的。また、2回転目の予約時間を10分と40分にしていることも、お客、スタッフ双方のストレスを軽減する上で大きな意味があるという。

「『酒羅場』では2時間制を採っていますが、2時間おきの予約だと、2時間ギリギリまで利用されている1回転目のお客さまに退店をうながし、2回転目のお客さまに待っていただくという事態がたびたび発生していました。スタッフも急いでテーブルセッティングを済ませなければなりませんが、1回転目と2回転目の間に10分の空き時間をつくっておくことで、それらをまとめて解決できるわけです」(小林氏)

さまざまな外食店が軒を連ねる商店街沿いの雑居ビル地階に入居

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作業負荷を軽減し、離職率も抑制

『酒羅場』は来店客の8割を予約客で占めている。予約時間をずらせばその分だけ客席の回転率は下がるが、小林氏は「目の前の売上ではなく、長く支持される店を目指すことを選びました」と話し、こう続ける。

「SNSマーケティングでは話題を集めるだけでなく、マイナス評価を極力減らすことも重要です。『待たされた』『急かされた』という印象がマイナス評価につながり、それによってじわじわと客離れを引き起こしかねないのがSNSの怖いところ。新しい予約システムはそれを避けることに加え、スタッフの作業負荷を軽減して離職率を下げるという効果もあります」

『酒羅場』のアルバイトスタッフもメイン客層と同じように20代前半が中心。お客のストレスを軽減するだけでなく、労働環境の改善につながる施策を採り入れていることも繁盛し続けるための鍵になっているといえる。

『酒羅場』
住所/東京都世田谷区三軒茶屋1-36-6 ラビ三軒茶屋B1F
電話番号/070-4067-1143
営業時間/17:00〜24:00(土曜17:00〜5:00)
定休日/なし
坪数・席数/17坪・35席
https://www.instagram.com/shu_ra_ba

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。