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初月赤字も1年で月商1,000万円突破。渋谷『雲隠レ』に学ぶメニュー改善のデータ分析法

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2025年6月13日時点のフードメニュー。「刺盛り」(三種1,563円、五種2,200円)、「真珠蒸し」(1個264円)と「雲焼売」(1個264円)の2品を揃える焼売が名物商品だ

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オープン時のメニューの4分の3を入れ替える

『雲隠レ』で特筆されるのが、目玉商品の新投入などといったド派手なメニュー改善ではなく、価格改定を含めた細かなメニュー改廃を積み重ねて成果を上げていることだ。

価格についてはすべてのドリンクやフードの単品原価を正確に算出し、それをもとに適正な値付けを設定。また、原材料費が高騰する中、原価割れしそうなメニューは価格転嫁をしており、例えば、売れ筋トップの「刺盛り」の価格はオープン時だと三種1,180円、五種1,630円だったが、現在は三種1,719円、五種2,200円に変更している。

オープン日のフードメニュー表。主力の品揃えとカテゴリ分けはおおむね共通するが、サイドメニューはがらりと入れ替わった(画像提供:CLOUDS)

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『雲隠レ』は日替りでメニュー数品を入れ替える商品構成を採っているが、2024年5月3日、同年10月15日、2025年6月13日におけるフードメニューの商品数と平均皿単価の推移をまとめると、商品数は52品→70品→62品、平均皿単価は627.3円→685.1円→779.5円。2024年5月3日と2025年6月13日で共通する商品は17品のみで、4分の3近くが入れ替わっている。

売れ筋トップの「刺盛り」(三種1,719円、五種2,200円)は段階的に値上げしてきたが、出数への影響はほぼなかった

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顧客データを用いた「クロスABC分析」に基づくメニュー改善

客単価増と客数増を両立させていることが大幅な売上増、利益増につながるわけだが、そのために鶴岡氏が駆使したのがデータ分析だ。メニューのデータ分析手法として真っ先に挙げられるのがABC分析(商品を出数によってグループ分けして分析する手法)だが、『雲隠レ』ではそこに顧客データを組み合わせたクロスABC分析をメニュー改善に活かしている。

写真右から、「真珠蒸し」(1個290円)と「雲焼売」(1個290円)

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顧客データの収集にはモバイルオーダーシステム「dinii(ダイニー)」を活用しているが、鶴岡氏はdiniiに搭載された分析機能ではなく、ローデータをダウンロードし、自ら考案した手法でデータを分析している。分析結果も速報値をまとめたWeekly ReportとクロスABC分析などデータを深掘りしたMonthly Reportの2通りを用意し、大河内氏、有賀氏、店舗従業員と共有。銀行出身のオーナーならではの数字による経営分析と、顧客ニーズに対する感度が高い現場スタッフの技量がシナジーを生む仕組みを構築しているのである。

diniiの注文データや顧客アンケートで得られた回答などをまとめたWeekly Report

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「Weekly Reportは、お客さまの新メニューに対する反応などをチェックします。既存メニューと新メニューの注文割合については適正値が導き出されており、それに届いていなければ新メニューの評価が低いということ。改善は早いに越したことはありませんから、お客さまアンケートの感想も参考にしながら、メニューを修正しています」(鶴岡氏)

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。