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月商500万円を売る代々木上原『でばやし』。高知出身の幼馴染が歩むサクセスストーリー

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前職で教員として勤め、オーストラリア留学も経験した田邊氏。現在は単身赴任、月1で家族がいる高知県へ帰る

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「先手の接客」がカギ。きめ細かさと予約のシステム化で回転数アップへ

店を成長させた接客に特別な技法があるわけでない。注力するのは細かい気遣い。

「小さいことの積み重ねです。料理の提供が遅れていたら、聞かれる前に『あと何分で出せます』と伝えます。追加オーダーを頼んでくれそうと思ったら、先回りして全部聞きに行くのも同じ。そうやって店側のペースにしていかないと後手後手になる。後手だとお客さんの回転スピードが遅れるので、そこは徹底しています。もちろん、話に夢中になっているカップルがいたら、無理に注文を取りに行くことはないですよ(笑)」(田邊氏)

高知県の日本酒1~3種を常時用意。高知県産の柚子・山椒リキュールを割る「ゆず&山椒サワー」(680円)なども

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平均客単価は4,000~5,000円と、代々木上原という富裕層も住む街では比較的リーズナブル。それが愛される理由の一つにもなっている。だからこそ売上を伸ばすには、満足度とオペレーションの両輪を高める「先手を打つ接客」で、店を円滑に回せるかが肝要だ。

その点でもう一つカギを握るものが。予約管理のシステム化だ。『でばやし』の予約率は平均7割、週末の1回転目は9割がリザーブで埋まる。以前は都度、手帳にメモを書き入れていたが、現在はオンライン予約管理システムを導入。スタッフの誰が見ても予約表が一目瞭然となり、予約重複などのミスが解消された。加えて、電話予約の際にキャンセルを含めた空白の時間帯を提示しやすくなり、無駄なく席を埋められるように。それが一因で、週末は2回転する日も頻繁にあるという。

幼馴染でもプライオリティがブレると経営は続かない

昨年秋、幼馴染コンビは新たなフェーズに突入した。カウンター主体&深夜営業(翌2時まで)の、一歩踏み込んだ接客を楽しめる2号店『でばちか』を、代々木上原にドミナント出店。その狙いは、ライト層・コア層それぞれのゲストに、2店を使い分けてもらうため。「一見さんは『でばやし』に来て、常連さんは2号店に流れるようになりました。今、1号店の地元客の来店率は3割程度だと思います」と言う中島氏は、ここ半年は新店の厨房に立ち、『でばやし』の調理は、2名の社員に託している。

「任せる段階になった感じですね。僕らがもうちょっと身軽になって、高知でどうやったらお客さんを集められるかというマーケットを認識できるようになったら、地元で出店したい。それは二人で一緒に始めてから変わらない目標です」(中島氏)

元美容室の居抜き。大きな窓枠と木目調のスタイリッシュな空間

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最後に、幼馴染で経営を行うコツを聞いてみた。すると、中島氏は「他の人には勧めないですね」と、思わず本音がポロリ……。だが続けて、「友達と一緒にやって失敗したみたいな話も結構聞きます。たぶん、根本的に最初から話し合いができていないんじゃないと思うんです。大事にする部分が意外と違っていたとか、途中で変わることも。例えば家族ができたら、優先順位の一番がお金に変わる人もいますよね。僕らは先々こうなったら、こうしようと決めていたり、お互いに途中で辞めていいと言ったりしている。だから、『楽しそうだからやろうぜ』というノリではなく、ちゃんと話し合った上で始めました」と、語ってくれた。

互いの実家は高知市の近所同士、小中学校からの幼馴染で、上京後に同居していた時代もあったという、まさに親友の二人。「だから仕事を一緒にしても、急にビジネスみたいな線を引く関係になることもないし、今でも仕事終わりに一緒に飯を食べに行きます。高知を盛り上げたいという根っこが一緒なので、言い争うこともないですね」と、田邊氏は笑う。

20代半ばまで、料理の下積みをしながら芸人も目指していた中島氏は、こんな例えで締めくくった。

「お笑いコンビみたいなものです。幼馴染でやっているコンビって、あまりビジネス臭がしないじゃないですか。博多華丸・大吉さんとか。僕らはああいう感じです」

言い得て妙である。『でばやし』の幼馴染も、末永く二人で歩むに違いない。

『上原の酒場 でばやし』
住所/東京都渋谷区上原1-32-18 小林ビル2F
電話番号/03-6407-9782
営業時間/18:00~L.O.23:00
定休日╱なし
坪数・席数/15坪・28席(テーブル22席、カウンター6席)
https://www.instagram.com/sakaba_debayashi/

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小林智明

ライター: 小林智明

埼玉県出身。情報誌の編集プロダクションを経て、2006年にライターとして独立。食、旅、スポーツ、エンタメなど多岐にわたり取材・執筆活動を展開中。グルメ取材はラーメン店を中心に計500軒を突破。好きなお酒は辛口純米酒。