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飲食店の赤字経営を立て直す。不振原因を探る「自己分析術」とタイプ別「対処法」

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Photo by iStock.com/BernardaSv

赤字経営を脱するためには「原因」の把握が重要

「思うように利益が出ていない」「なぜかお金が手元にない」など、店舗運営が思うようにいかない場合、その原因がわからないというケースも多い。経営を立て直すには、まずは原因をしっかりと把握することが大切だ。そこで今回は、不振店の自己分析ポイントとその改善策を紹介する。

【Q1】売上は足りているか?

A.賃料の10倍以上の売上があるか?(YES→「Q2」へ、NO→「B」以降へ)
不振店の原因は売上が足りていない、以前に比べて落ちている、といった売上に関する問題が圧倒的に多い。一般的に飲食業の場合、賃料の10倍以上の売上を獲得できていれば、売上を十分稼げていると言える。そうでないなら、まだ売上を上げる余地があるといえるので下記をチェックしよう。

B.以前に比べて売上が落ちている?(NO→「C」へ)
以前に比べて売上が落ちているようであれば様々な原因が考えられる。前年同月に比べて5%以上売上が落ちているのであれば、下記のポイントを再確認しよう。

・料理や接客サービスのレベルが下がっている
料理の質や接客レベル、お店の清潔感などのいわゆるQSCレベルが下がっていて、顧客満足が落ちている可能性が考えられる。顧客目線で今のレベルが満足できるものか再確認しよう。顧客アンケートやネットの口コミなどで、例えば接客が悪いなどの意見が複数出ていたら、店舗全体の重点項目として改善していこう。

・顧客や外部環境の変化
店舗のQSCは下がっていないが、顧客が飽きているといった顧客の変化や、競合店が近隣にできた、ブームが去ったなどの外部環境の変化が原因で売上が落ちている可能性もある。共通した対応策として、新しいメニューやキャンペーンなどで話題性を作ること。やはり賑わっている店舗に人は集まるので、お店のコンセプトから外れないような新メニューやキャンペーンを企画・実施して集客を図ろう。

C.立地やコンセプトが悪い
最初から売上が低い場合は、立地やコンセプトが悪い可能性が高い。立地は簡単に変えられないが、店頭やメイン通りへの告知物設置、ビラ配り、広告などで少しでも消費者の認知度を高めよう。コンセプトが顧客のニーズに合わなかった場合は、リニューアルしてより顧客ニーズの高いメニュー・サービス・内装などに変えることを検討するほうがいいだろう。

Photo by iStock.com/GeorgeRudy

【Q2】利益は出ているか?

A.売上の10%以上の営業利益が出ているか?(YES→「Q3」へ、NO→「B」以降へ)
飲食店の場合、売上の10%以上の営業利益が出ているかが1つの目安となる。売上がある程度稼げているのに、利益が出ていないのであれば、原価や販管費の見直しが必要である。

B.「FLコスト」は60%以下か?(YES→「C」へ)
業態にもよるが、原価と人件費を合わせたFLコストは60%以下が望ましいとされている。逆に65%以上の場合は、赤字の可能性が高くなる。原価が高い場合は、決められた分量で調理されているか、発注量は適正で廃棄ロスは多くないかを確認する。人件費は、必要以上に多くのアルバイトスタッフをシフトに入れていないか確認する。店長やオーナーも可能な限りシフトインして、アルバイトスタッフのシフトを減らすことも重要である。

C.広告費、販売促進費の費用対効果の確認
広告や販促施策の費用対効果は確認しているだろうか? 特に広告費はターゲット顧客に訴求できず売上につながらないケースも散見される。費用対効果が測定できるよう施策を工夫するとともに、効果が出てない施策はすぐにストップする、または他の施策に切り替えることを検討しよう。

Photo by iStock.com/takasuu

【Q3】資金繰りはできているか?

売上と利益がある程度出ているのにお金が手元にないのであれば、資金繰りが回っていない可能性が高い。下記のポイントを理解しているか、もし理解できていないようであれば専門家に確認してもらうとよい。

A.利益と資金繰りの違いを理解しているか?
利益と資金繰りの違いをどれだけ理解しているかで、資金繰りは大きく変わってくる。例えば、
・顧客が現金で払う場合と、クレジットカードで払う場合の資金繰りへの影響
・売上原価と仕入の違い
・借入金の返済と利息の支払いが利益と資金繰りに与える影響
これらをしっかり説明できない場合、どんぶり勘定になり手元に資金がないという可能性が高い。もし不明な項目があれば、書籍やインターネットで調べたり、専門家に聞いてしっかりと理解しておく必要がある。

B.資金繰り計画を作成しているか?
PL(損益計算書)とは別に、資金繰り計画を作成しよう。これにより、いつまでにいくら資金があり、足りないのであればどれくらい必要か把握することができる。これも最初は難しいかもしれないので、専門家に聞きながら作成するといいだろう。

C.金融機関との交渉はしたか?
資金繰りが上手くいかない場合は、月々の返済額の減額(返済期間の長期化)や新たな借入の申し込みなどの交渉を行う。この時に必要となってくるのが上であげた「資金繰り計画」である。資金繰り計画表を元に事業の見通しと返済計画を説明できれば、金融機関との交渉もスムーズに行うことができる。また、金融機関も資金繰り計画ができている企業や店舗に貸付を行いたいと思っているので、金融機関に好印象を与えることができるだろう。

以上、不振店のチェックポイントと対応策を紹介した。これ以外にもチェックポイントや対応策はあるが、今回あげたのは基本事項である。まずはこれらの項目を確認して実施してみるといいだろう。

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若林和哉

ライター: 若林和哉

株式会社パートナー経営企画・代表取締役。飲食店の勤務経験や中小企業診断士の資格を生かして、事業計画作成や資金調達の支援、フランチャイズ関連のWebページの執筆やセミナー講師などを務める。好きなお店は、ラーメン・カフェ・日本酒のおいしい居酒屋など。https://パートナー経営企画.com/